第14話 2章・七歳編_014_皇龍火炎剣

 ■■■■■■■■■■

 2章・七歳編_014_皇龍火炎剣

 ■■■■■■■■■■


 刃の部分の長さは一メートルで肉厚。要はごつい刀。

 無骨なまでに丈夫で、それでいて剃刀のように斬れる。

「創造―――ごつい刀!」

 集中を切らさないように、最後までイメージする。


 イメージ通りの無骨な刀がテーブルの上に現れる。

「おお、なんか凄いわね。それ、私にちょうだい」

「領主様の剣だから無理」

 これを創造するのはかなり疲れるんだからね。


「じゃあ、それ以上の刀を私に創ってね」

「もっと大きくなったらね」

「ランドーよりは大きいわよ(笑)」

「子供の頃は女の子のほうが成長が早いの!」

 たしかにオリビアちゃんの方が背が高い。出会った頃でも結構な差があったけど、最近さらに差が開いてしまった。僕の成長期はこれからなんだから、いつか抜かしてやるからね!


 さて話を戻すけど、この剣はこれで完成ではない。

 先の尖った金属棒と小型のハンマーを手に取り、剣に刻印を施す。

 カンッカンカンッと小気味良い音を鳴らして、剣を掘っていく。これはこの剣を魔剣にするために必要な行程なんだ。

 東洋龍の体の中に魔術紋を刻み込む。


 どんな魔剣がいいのか考えたけんだ。

 この剣で切られたら呪われてステータスが下がるとか、見えない斬撃を射出するとかね。

 家宝にすると領主様が言っていたから、できるだけ派手なエフェクトがいいと思ったんだ。貴族は見栄えに拘るものだからね。

 そこでオーソドックスな火を噴く効果を出そうと思って、この刻印を施している。


 刻印神様、魔術神様、火神様、そして龍神様に祈りを捧げながら、東洋龍と魔術紋を刻むこと三日。やっと出来上がったのがこの皇龍火炎剣だ!

 煌めく剣身に施された刻印が豪華さを演出しているから、貴族が持っていても見劣りはしないと思う。


「わー、かっこいいわね、これー!」

 オリビアちゃんが剣を持ち上げてマジマジと見分する。剣のことは僕よりオリビアちゃんのほうが専門だから、彼女がいいものだと判断するかどうかで献上するか決まる。


「彫は甘いけど、剣の質は素晴らしいわ。で、魔剣にしたんでしょ? どんな効果があるの?」

 彫が甘いのはしょうがないじゃないか。彫金とか刻印は練習したけど、独学なんだからさ。


「貴族用の剣だから派手に火のエフェクトが出るようにしておいたよ」

「発動させていいかな?」

「さすがにここでは勘弁してほしいかな。僕の家が燃えちゃうよ」

「それなら草原に行きましょうか」

 剣を異空間に収納し、二人で村を出て草原に向かう。


 この草原は一年を通して青々とした草が生い茂る場所なんだ。

 僕たちの膝上まで草で埋まる場所もあって、結構歩きにくい。

 その草原に一本の道ができている。この道は僕たちの村と近くの村を結ぶ主要街道になる。草が生えようとしても毎日多くの人や馬車が通ってそれを阻害して、意図せずにできた道だね。


 道からも村からも離れ、そこで剣を取り出す。

「何度見ても綺麗な剣ね」

 オリビアちゃんが剣を構える。七歳の少女には大きすぎる剣は、大人でも両手で扱うくらい重いものだ。


「皇龍火炎剣を上にかかげて『来たれ皇龍』と唱えるのが、発動キーだよ」

 オリビアちゃんが大きく頷き、皇龍火炎剣を天に向ける。

「来たれ皇龍!」

 轟っ! 皇龍火炎剣に炎の龍が巻きつく。火の子を飛ばす炎の龍が、さあ皇龍火炎剣を振るがいいと言っているように見えた。


「はぁぁぁっ! 唸れ皇龍火炎剣!」

 オリビアちゃんが皇龍火炎剣を振り下ろすと、炎の龍が解き放たれるように飛んでいく。大口を開けた炎の龍は地面に生えていた草を一瞬で乾燥させ、炭化させ、消滅させた。

 数十メートル先で炎の龍は姿を消し、マグマのように怪しく蠢く地面だけを残した。


 皇龍火炎剣のエネルギー源は空気中にある魔力だから、魔力が多い場所だと何度も使える。

 この草原は魔獣が住む森の近くにあるだけあって、そこそこ魔力が多い。この濃さなら同じ場所で三回くらいは皇龍火炎剣を使えるだろう。


 空気中の魔力が多い場所は、魔獣が住むような場所とあとは人間が多く住む場所かな。魔獣は魔力が多い場所に現れるけど、人間が多い場所は人間から漏れ出す魔力によって空気中の魔力が多くなるんだ。

 でも空気中の魔力が多い大都会で魔獣が生まれたという話は聞かない。魔力にも自然のものと人から漏れたものでは質が違うのかな? そういう研究をしてみるのも楽しそうだね。


「キャーッ! 何これっ! すっごーい! 鬼に金棒、私に皇龍火炎剣! アハハハハハハ!」

 すっごく浮かれているけど、それは領主様用だからね。オリビアちゃんが大きくなったら、パパから譲ってもらいなよ。


 僕が冷めた目で見ていたら、それに気づいたオリビアちゃんが咳払いして表情を引き締めた。

「凄い威力だったわ」

 今さら取り繕っても遅いからね。


「僕もここまでとは思っていなかったよ」

 僕が持つ加護はどれもレベル一だから、もっと規模の小さなものだと考えていた。

 これも刻印神様、魔術神様、火神様、龍神様へ祈りを捧げながら刻印したおかげかな。加護の重複による相乗効果だと思っておこう。


 皇龍火炎剣には熱による歪や染みなどは見られない。自分で自分を焼くことにはならないようだ。

「これならパパも文句なしだわ。これで文句言ったら私がぶっ飛ばしてあげるから」

「いや、ぶっ飛ばすのは止めようか」

 オリビアちゃんだと本気でやりかねない。


 炎の龍の通った場所は超高熱のマグマ状態になっていたから、僕が魔法で水を大量に放出してから村に帰った。火事にならないとおもうけど、念のためにね。

 まだ装飾された鞘や柄が用意できてないから、まだ献上しない。


 その夜。僕はステータスボードを久しぶりに確認した。


 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+


 ランドー

 人族

 七歳


 筋力 : 5 + 1065

 器用 : 50 + 1050

 俊敏 : 6 + 1050

 知力 : 50 + 1050

 魔力 : 50 + 1055


 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+


 なんという歪な成長だろうか。

 オリビアちゃんのように鍛えれば、筋力と俊敏も上がるかな。


 翌日、オリビアちゃんのステータスボードも見せてもらった。


 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+


 オリビア=リーバンス

 人族

 七歳


 筋力 : 80 + 60

 器用 : 30 + 10

 俊敏 : 60 + 30

 知力 : 5

 魔力 : 2 


 +・+・+・+・+・+・+・+・+・+


 オリビアちゃんも歪な成長を見せているね。

 筋力と知力のギャップが凄いけど、僕もこの反対のギャップなんだよね。ただ、僕の場合は加護による補正値が凄いことになっていて、素のステータスは誤差範囲って感じかな。


「オリビアちゃんは脳筋だね」

「うるさいわね。気にしているんだから、言わないでくれる?」

「気にしてたんだ(笑)」

 パシンッと叩かれてしまった。口は禍の元。そういうことだね。お口にチャック。



+・+・+・+・+・+・+・+・+・+

応援お願いしますね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る