第10話 2章・七歳編_010_コーラ!
■■■■■■■■■■
2章・七歳編_010_コーラ!
■■■■■■■■■■
森の中に入って行くと、いくつかの薬草を採取することができた。これらの薬草はオーソドックスなもので、解熱剤や傷軟膏の材料になる。ただ僕たちが探しているものではない。
きっかり三十分すると、オリビアちゃんは立ち止まって方角の確認をする。しかしなかなかリバニア草は見つからない。
本当に僕はリバニア草に向かっているのだろうか?
そんなことを思いながらちょっとした崖を上ったら、あら素敵。
「これは凄いね」
一面のお花畑だ。赤、黄、白、ピンクなどの花々が咲き乱れている。
「私でも綺麗だと思うわ」
そのコメントはどうなの? オリビアちゃんは今も前世も女性だよね? 僕よりも花が身近にあるんじゃないの?
あー、こういうのが偏見に繋がるんだっけ。考えを改めないといけないね。
「ちょっと休憩しようか」
さすがに歩き詰めで崖も上ったから疲れてしまったよ。
「そうね。ここなら見晴らしもいいから魔獣の接近に気づけるからいい場所ね」
オリビアちゃんは休憩よりも魔獣への警戒が優先なんだ。本当に頼れるよね。
「創造―――木のコップ」
木のコップを二つ創造する。
「水よ」
チョロチョロと水を出して、コップを満たす。これは物質創造ではなく、魔法で出している。
創造神の加護が使えるようになってから、魔法や魔術のような加護も使えるようになったのは大きなことだね。もちろん努力しないと、上達しないけどね。
一つをオリビアちゃんに渡し、僕もコップを両手で持って水を飲む。
喉が渇いていると、ただの水でも凄く美味しく感じる。
「美味しいわ」
「うん。美味しいね」
彼女の呟きに答えて、頷く。
「これがコーラだったら最高なんだけどね」
「………」
僕だってそう思うけど、この場で言ってはいけない言葉だよ!
しかし久しぶりにキューッと炭酸を喉に流し込みたいね。ちょっとチャレンジしてみるか……
「創造―――コーラ!」
ジュワッ、シュワッシュワッシュワッ……。
「おおお、それはまさかっ!?」
ふふふ。どうやら成功したようだね。
あれ? 僕のコップはどこ? コーラはどこ?
「あーーーっ! なんでオリビアちゃんが僕のコーラを飲んでいるの!?」
「ブーーーッ。うげー、まっず!」
あれ? 思いっきり噴き出しているんだけど? どうやら不味かったようだね。罰が当たったんだよ。ははは。
「何これ、炭? ねえ、炭なの? すっごく苦くて酸っぱいんですけど!」
「ははは。失敗は成功の母というからね。コーラのような至高の飲み物の創造がすぐに成功するとは限らないよね」
「それならそうと最初に言ってくれるかな!」
「勝手に飲んでおいて、何言ってるのさ」
「そ、それは……そうだ! 毒見よ、毒見!」
「その理由、今考えたのバレバレだからね。口笛吹いて誤魔化そうとしないの! 口笛鳴ってませんから!」
まったくもう、オリビアちゃんは。
さて、気を取り直して……
さっきよりも深堀したイメージ。
甘いけどレモンの酸味があり、香辛料の香りもある。そして何よりも炭酸にがシュワシュワ。
「創造―――コーラ!」
黒い液体に茶色の泡はまさにコーラ!
さて今度はどうかな……。お、これはいける! ぬるいけど……。
「氷よ」
カランコロンッ。
魔法で作った氷を転がし、コーラの温度を下げて……。
「美味いっ!」
「どれどれ……おおーっ、コーラだ! 冷えたコーラだわ! 美味しいよー」
どうでもいいけど、それ僕が飲んでいたコーラなんですけど。
しかも涙を流さすほどなの?
まったくオリビアちゃんは……。
というか今度はちゃんと僕が飲むまで待っていたね。さっきので懲りて、オリビアちゃんが成長したようだ(笑)
ところで普通に間接キスしているけど……まあいいか。今の僕たちは子供だもんね! 子供の内は一緒にお風呂に入ってもノーカンだよね。
オリビアちゃんのおかげで懐かしい味を思い出すことができたね。この世界の食事は前世に比べるとかなり味が劣るんだ。僕たちのような農民だけじゃなく、貴族でも料理の質はかなり落ちるとオリビアちゃんが言っていた。
僕は食事にそこまで拘りがないから食べられればいいと思っているけど、それでもお菓子などは食べたいとたまに思うんだよね~。
この調子で懐かしの味を再現していくのもいいね!
あっ!? もしかしてトイレも創れちゃうんじゃないかな? よし! トイレを創造!
「………」
うんともすんとも言いませんねぇ。トイレの創造は金や銀並みの禁忌なのかな? まあいい。それなら職人にトイレを作ってもらえばいいんだからね。そのためにはお金を貯めないといけないね。
おっといけない。トイレのことも大事だけど、今はリバニア草を探すのが最優先だ。
探索を再開した僕たちは、再び木々が生い茂る森へと入った。
先程のお花畑? は森の中の一服の清涼剤だった。少し心に余裕が出た気がする。
「ランドー、動かないで」
オリビアちゃんの厳しい声。手の平を僕に向けて、止まれの意思表示。
耳を澄ますと何かが近づいてくる音がする。明らかに人間のものではないことが分かる重量感がある足音だ。
「木の後ろに隠れているんだよ」
「いや、僕も戦うし」
「ランドーは私が守ると誓ったの。私を嘘つきにしないでほしいわね」
「……分かったよ」
律儀なのはいいことだけど、事と場合によると思うんだ。オリビアちゃんが危険なら僕も戦おう。
足音が大きくなってくる。足音の主は間違いなく僕たちを目指してやって来る。臭いか気配かそれ以外の何かが、それを僕たちの場所に導いているようだ。
「っ!?」
「でっか!」
赤茶色の毛の小山だ。
体高は軽く二階建ての家くらいあって、鼻息が荒く血走った赤い瞳のイノシシだ。
どうやら僕たちの臭いを嗅ぎつけてやって来たようだね。
「これが魔獣……」
いくらなんでもデカすぎるよ。どんなにオリビアちゃんが強くても、こんなのを倒せるのだろうか……?
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
応援お願いしますね
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます