マイホーム・マイライフ【転生編】

大野半兵衛(旧:なんじゃもんじゃ)

第1話 1章・転生編_001_雑な転生!?

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 1章・転生編_001_雑な転生!?

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 僕は蘭堂公親らんどうきみちか。十七歳の高校二年生をしている。

 高校生活は可もなく不可もない。至って普通の男子高生かな。しらんけど。

 好きな科目は理科だけど、好きと成績がいいはイコールじゃないとだけ言っておくね。


 最近のマイブームはスマホのゲームアプリかな。今もやっていて、超激熱で派手なエフェクトが絶賛発動中。

 もう胸がドキドキで過呼吸になりそう―――修学旅行で乗った飛行機が今まさに墜落していて激しく揺れているからなんだけどね。


 機内は酸素吸入器が飛び出し、警告音が響いて、怒号が飛び交い、CA―――キャビンアテンダントさんがこうしてほしいとアナウンスしている。


 キャビンアテンダントさんて凄いよね。もうすぐ死ぬかもしれないのに、客である僕たちに落ちついてと言っているんだよ。僕なら動揺して何もできないと思う。


 そんな僕が手に持ったスマホの画面では、ガチャで初めての超レアを引き当てた。

 なんということでしょう! 百億分の一という確率の超レアガチャを引き当ててしまったよ。

「超絶スキル『頓知頓才』キターーーッ!」


 これから死ぬというのに、ゲームのことで叫んだ僕に周囲の目が集まった。キャッ、見ないで! 恥ずかしい。


 この『頓知頓才』は、機に応じて即座に機転を利かせることができる知恵や才能のことだったかな。昔たまたま辞書を開けた際に目に入った言葉だよ。

 僕とはまったく違った機転が利く人のことだから、僕もこうなれたらいいなーと思ったのをなんとなく覚えている。


 人生最大の幸運を味わう僕は強運の持ち主なのだろうか? それとも疫病神? 僕の幸運のせいで、皆を墜落事故に巻き込んでしまったのかな? いやいや違うよね。僕にこの事故の責任なんてあるわけないよね!

 そこで僕の意識はなくなった。




「………」

 知らない天井だ。

 僕は飛行機事故で死んで……はいないようだ。

 両手両足の感覚が鈍い。


 知らない天井と言ったけど、目はほとんど見えないから天井も見えない。なんとなくぼやーっと明るい感じだ。多分病院のベッドの上かな。集中治療室とか? 僕、よく生きていたね。自分で自分を褒めてあげたいよ。


『さあ、神々よ。加護を与える者を選ぶがいい』

 精神に直接話しかけられているような重苦しさがある声が聞こえた。

 神々とか聞こえたけど、僕は夢でもみているのかな? 頬をつねろうと思っても、体がいうことをきいてくれない。

 顔を左右に動かそうとしても動かない。そもそも僕はどこを向いているのだろうか? 平衡感覚がまったく掴めない。

 誰が喋っていて、誰がここにいるのか、僕にはさっぱり分からない。


『お前には剣神の加護を与える!』

『君の加護は冒険神の加護だ』

『お前は火神の加護だ。ありがたく思え!』

『貴方は私、豊穣神の加護を与えるわ』

『うへへ。おまはんは商業神の加護やさかい。きばって~や~』


 色々な声が聞こえる。下手な関西弁も聞こえたけど、いったいどうなっているのだろうか?

 もしかしてこれは転生なのかな? 僕は神様に加護を持って異世界で生まれ変わるのかな?

 他にも加護をもらっている人がいるみたい。数が多くて数えてないけど、多分飛行機の墜落事故で死んだ人たちの数だけいるんじゃないかな。つまり僕の同級生たちだと思う。


『全部終わったか……ん、まだ残っているではないか』

 えーっと、それ僕のような気がします。

 色々な神様と思われる声が聞こえたけど、僕の状態に変わりはない。


『おい、こいつの担当は誰だ?』

『え、知らないわよ。軍神じゃないの?』

『俺はすでに加護を与えたぞ。魔法神じゃないのか?』

『わたくしだって加護を与えたわ』

『じゃあ誰だよ?』

『『『俺じゃないぞ』』』

『『『私じゃないわよ』』』

『……これは想定外だな。誰でもいい。加護を与えろ』

『すでに加護を与えたから、無理よ』

『むぅ……じゃあ、こうしよう! お前ら全員で少しずつ加護を出しあえ、それで帳尻を合わせるぞ!』

『『『それだっ!』』』

『『『それねっ!』』』

『そんなわけで、お前は……たくさんの加護を持って転生だ!』

 ええええええええっ! 僕の扱い雑っ!




「………」

 知らない天井だ。

 今度はしっかり天井が見える。

 ここはどこだろう? 病院? には見えない。


 僕はどうなったのだろうか? 

 あの声はいったいなんだったのか?

 僕は本当に転生したの?

 てか、転生したとしても扱いが雑だったよね……。なんだか泣けてきたよ。


「うぎゃーんっぎゃー」

「あらあら。私の坊やはお腹が空いたのでしゅか~」

 あ、違うんです。僕、ちょっと神様からの扱いが雑で泣いていただけで……って、これは赤ん坊なの!?


 恰幅の良いおばちゃんが、豊満な胸をぽろり。

 おおぅ……。これはまさかの授乳ですか? 赤ちゃんプレイからスタートなんですか?


 おばちゃんに抱き上げられ、乳を飲まされる僕は悟ってしまったのだ。これが転生だと。


 あのぼんやりとした空間で聞いた声は、神様たちの声で間違いないだろう。

 それじゃあ、僕は加護はたくさんあるけど、どの加護も弱いものなんですね……。

 これ、大丈夫なんですかね……?


 

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