Extra ケモる陰キャ(ケモナーではない)

「第にゃーにゃー警隊所属隊員。レーダードームで遊びたくて当分屯基地に所属。

 身長は176cm、あるいは40m。運動が得意だが水は苦手

 オスである」


 いつものように葵さんは突拍子もないことを口にする。


 こういうときは構わないと駄々をこねるので仕方なく話しかけることにしている。


「……何いってんの葵さん」


「いや、最近噂のケモノのプロフィールを読み上げたんだが……こいつオスなのか。色々と大丈夫なのか?」


「うわ、改めて見ると法律的にも道徳的にも何も問題ないけどなんかアウトな感じが出てる……」


 例えば巨乳とかロリータというキャラだったら人であるということやそういうのが好きな人は少なくないということで広く受け入れられて、アウト感が少いが……。


 こういうのが好きな人は「ケモナー」という部類の人間だろう。その呼ばれ方は世間にも伝わってはいるが実際にケモナーだという人は少ない。いたと思っても実際はケモミミや尻尾が好きなだけの偽物が多いだろう。


 そんなふうに存在の認知度は高くても存在する数が少ないのでアウトな感じを醸し出しているのではないだろうか、と思った。


 そしてそこに男の娘の要素と巨人を加えているのだ、余計にアウトな感じが出ている。特殊にも程があるぞ。


 ちなみに僕はケモナーでもないし男の娘には興味もない。高身長の落ち着いたクールなお姉さんが好きだ。


 落ち着いてて……クールで……高身長……。


「……いや、葵さんは無いな」


「?」


 首を傾げてこっちを見てきたので何食わぬ顔で目をそらす。これが一番正しい判断。


 しかし、特殊な性癖……か。特殊とは言うがこれはつまり当てはまる人が一定数よりも少ないだけだ。さっき言ったように存在自体は知られているし、なんなら少ないとは言えないだろう。


 普通と特殊や特別といったものへの考えを展開しようとしたがこれは流石に時間がかかる。今は一応会話しないと機嫌が悪くなってしまうので思考回路を戻そう。


「葵さんはケモナーなの?」


「ふっ、わたしはケモナーであり、巨人好きであり、男の娘好きでもある」


「じゃあ魅力的なキャラクターだったんだね」


「あぁ。ちなみに私のストライクゾーンは生き物だ」


 ……この人の場合はケモナーというより『ケモナーでもある』が正しい気もする。関われば関わるほどに意味の分からない人だ。


「ソウスケくんは……違いそうだな。見ただけでなんとなくわかる。


 性格的にクールで賢い年上の女性とかが好きそうだが……どうやら私は例外っぽいな」


 何故ここまで人のことを理解することが上手いのだろうか、やはり性格なのか……?


 会話が好きだからいつの間にか理解しているのか、それとも理解することが得意だから会話を好んでするのか……。


 考えててもキリが無いのでまた今度聞こう。こうやって考えているうちに晩ごはんの時間だ。


「もし、もう少し会話を控えてくれたら葵さんのこと好きになるかもしれませんね」


「はは、私ももう少し会話してくれるのならソウスケくんをこの場で襲っていただろうな」


「「……」」


 思考回路と考え方は似てるのに結果と方向性がつくづく違う二人なのであった。

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