帝都戦【3】
『3…2…1……作戦開始ッ!!』
―――ダァンッ!!
「なっ!?何者だ貴様!?ここをどこだと…ぐあぁぁ!」
ライアの号令と共に一斉に動き出す潜入隊。
帝国の重鎮達が集まる会議室、帝国の悪事の証拠集めに資料室、戦争に赴かなかった残りの騎士達を抑える為に騎士達の宿舎や訓練場を一気に制圧していく。
たったの5人(コルドーは捕縛要因として)で帝都にいる人間全員を押さえ込むのはほぼ不可能だろうが、この王宮の中を制圧するくらいは何とかなるだろうし、何よりこの作戦の第一目標は主に敵のトップである皇帝を押さえる事。
ドルトン達が騒ぎを起こし、そちらに注目を集める事によって、宰相と皇帝の身柄をライアが押さえる。
本来であれば、皇帝を押さえる役目はドルトン達が担うはずだったのだが、宰相のケドローモンドが≪催眠≫スキル持ちという事で、ライアが皇帝を押さえる担当になったのだ。
もちろん、皇帝と宰相が同じ場所にいるという確証はなかったが、ヘベルベールと一緒に情報を集めている間は、皇帝の横に常に宰相の姿があったので、まず同じ場所にいるだろう。
「ぐぅ……貴様ら…どこから……がふっ…」
――――ザシュッ!!
「お前らには色々と聞きたい事があるのでな……詳しい話は後で聞かせてもらうぞ」
「…いや、思いっきり致命傷ですってッ!寧ろ止めを刺してたじゃないですか!?」
作戦指揮をしているドルトンの傍についていた分身体は、すぐさま死に掛けになっている貴族の男の治療を施す。
「おっとすまない……少し張り切り過ぎたか」
ドルトンが制圧した場所は、戦争に関する会議でもしていたのか、上位貴族達が集まる部屋で、50人程の貴族達が地面に倒れ伏している。
もちろん、部屋の中には護衛の騎士達もいたようだが、流石に王国騎士団の騎士団長よりは格下だったらしく、ものの数分で部屋の中を制圧しきってしまう。
「インクリース殿、他の場所の状況は?」
「≪錬金術≫……えっと、騎士達の宿舎は制圧しきれてませんが、武器庫と資料室は押さえれたみたいです」
「上々……武器庫は破壊、もしくは敵が使用できない様に封鎖後、宿舎の制圧に手助けするように伝えてくれ。資料室は重要書類などを確保したら放棄して私の元に来るように伝えてくれ」
「了解しました」
ドルトンはそう指示を出し終えると、地面に倒れ伏している貴族達が逃げ出さぬようにする為に、ロープで縛りあげていく。
「コルドーさんを待たなくていいんですか?」
「あいつは宿舎の制圧組と一緒だろう?まだ時間がかかるだろうし、出来る事はしておいて損はない……それより、インクリース殿の方はどうなった?」
「ドルトンさん達のおかげで、護衛達の注目がそっちに行ってくれたおかげで、難なく皇帝のいる玉座まで行けてますよ」
いくらライアの【幻魔法】で姿が見えなくなったとしても、扉を開ければ誰かが居るのはバレてしまうし、ある程度周りが騒がしくなれば、少しくらい音を出してもバレにくくなる。
おかげでライア達分身体は難なく見張りや護衛にバレることなく王宮の中を進む事が出来た。
「それはよかった……で、宰相とやらは?」
「それが……」
――――――――――――
――――――――――
―――――――
ドルトン達が騒ぎを起こしてくれているおかげで、物音を気にせずにササっと移動する事の出来たライアは現在、この帝国のトップである皇帝……【ヴァハーリヒ13世】が居るであろう玉座の間の扉の前に来ている。
(この中に皇帝と……宰相ケドローモンドが居るはず……)
どちらも直にこの目で見た事はないが、玉座の間でふんぞり返っている人間が皇帝だろうし、その近くで偉ぶっている人間が居ればそいつが宰相のはず。
分身体は全部で3人……。
戦力的に人数は少ないかもしれないが、分身体一人一人の戦力を考えれば十分何とか出来るはずだ。
万が一≪催眠≫にかかろうと、ライア本人が居ない上にスキルの中に≪状態異常耐性≫もある。
それに、あるかどうかはわからないが、レベルも50オーバー。これで負けるのならお手上げである。
――――ダァァンッ!!
「ヴァハーリヒ13世ッ!ケドローモンドッ!!神妙にお縄に……ん?」
「な、なに奴じゃ!?いきなり入ってきて何なのじゃ!?」
ライアはよしっ!と気合を入れて仰々しい玉座の間の扉を勢いよく押し開けると、そこには玉座らしき大きな椅子にもたれかかる様に座る……寝転んでいる?
「……男の子…?あれ…ここって玉座の間じゃ……えっと、君?お名前聞いてもいいかな?」
「な、なんと無礼な振舞いなのじゃ!ワシを誰だと思うておるッ!」
「いや、それを聞いてるんだけど…」
妙に偉ぶった態度と恐らく玉座の間?に居る事を加味すれば、もしかすると皇帝の子供……差し詰めヴァハーリヒ14世とかなのかな?とライアは邪推する。
「ワシはこの帝国の長である“ヴァハーリヒ13世”その人であるぞ!!控えおろう!」
「そっか、皇帝の子供kってまさかのご本人!?」
ライアの驚いた顔に気を良くしたのか、玉座に座った小さな皇帝は満面の笑みを浮かべるのであった。
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