~扇動の章~

新たな旅への準備 ※








火竜の事件が解決して2週間ほどが経ち、ライアは今現在ヤヤ村を出発し、リールトンの街まで、歩いていた。



というのも、リールトンの街の領主【アイゼル・ロー・リールトン】に直々に呼び出され、これから王都まで行かなければならないからだ。



(すごいめんどくさい…)



ライアの心は凄まじくご遠慮したい気持ちでいっぱいであったが、貴族の招集を断る勇気はあらず、渋々リールトンの街に向かっているという訳だ。




「…着いたぁ…」



ライアはリールトンの街に着くと、門のすぐ前の広場で背伸びをする。



実は今回、ラルフの馬車の都合が合わず、ライアと分身体だけで出発していた。



なので、道中は歩きで向っていたので、4日もかかってしまっていた。



(分身体と違って、俺自身の体力には限界があるからな…途中で限界が来て、分身体に負ぶってもらうのを思いついた時は死ぬほど楽だったなぁ…)



ライア本体の体力は有限で、元々本体は殆ど運動をしていないような物なので、最初の2日間は地獄であり、到着時間ももっと、遅れると思っていた。



その時に思い付いたのが、分身体に運んでもらう作戦だった。



「人に見られたら恥ずかしいけど…まぁなんにせよ着いたからいいか!」




輸送隊の出発日はライアが到着してすぐという話だったが、さすがに今日ではないので、まずは用事を済ませようと、リネットの居る工房に向かうライア。





―――ガチャ…


「失礼しまーす」



「いらっしゃいませ、ライア様…お嬢様は実験室でお待ちです」



工房に着き、扉を開けるとユイさんが出迎えてくれ、意味はないとわかっていながらも、様式美として、リネットの場所を伝えてくれる。



「はい、ありがとうございます」







――――ガチャ


「来ましたよー」



「来たのですね!例の物はどこなのです?」



ライアはそのまま実験室まで進んでいき、中に入ると、分身体3人と何やら物を出して、実験の準備をしているリネットがおり、ライアを見るとすぐにそう言ってくる。




「はいはい…これがそうですよ」



「おぉぉ!!これがワイバーンの魔石…出来れば火竜の魔石も取って来てほしかったのですが…」



「さすがにそれはしちゃダメでしょう…すでに領主様のとこに運ばれていますしね」




ライアが分身体の一人からもらった包みをリネットに渡すと、中からワイバーンの魔石が12個が出て来る。



リネットはそれを見て興奮しつつ、火竜の魔石も欲しかったと冗談を言う。




「まぁそれは冗談なのです…それじゃこれがワイバーンの魔石の代金の金貨6枚なのですよ」




「…一応確認なんですけど、金貨6枚も払ってもらっていいんですか?高くありません?」



金貨は日本円換算で1枚1000万円の大金で、金貨1枚あれば、仕事をしないで生活しても50年は生きられる大金だ。



それを6枚も貰えるほどワイバーンの魔石に価値を感じないのだ。



「大丈夫ですよ?これを魔道具にして大きい商会でもどこかの貴族にでも売れば、魔石1個で元が取れるくらい安いんですよ?むしろこんな値段で貰っていいのか疑問なのですよ」




どうやら、自分の考えよりワイバーンというのは希少で、価値がある物の様だった。



(1個で金貨6枚以上……こわ…)







――――――

―――――

――――







それからライアは、大金を持ったままで居たくなかったので、さすらいの宿に向かい、自分の借りている部屋に向かう事にする。



「サラサさん、ただいまです」



「ん?あら、今日は早いじゃないの?何か体調でも悪いのかい?」




受付にいるサラサに声をかけると、いつもであればギルドか工房に出かけている時間帯なので、体調不良を心配されてしまう。



「あ、すいません、大丈夫です…実は私本体は故郷に戻ってて、今帰ってきたんですよ」



サラサとは部屋を借りるうえで、部屋から色々な姿の分身体が出入りするので≪分体≫の事は伝えていたが、故郷の村に帰村することは言ってなかったことを思い出し、説明した。



「そうなのね?良かったじゃない!新しい姉弟が出来て!」



「はい!すっごく可愛いので、自慢の兄弟です!」




そんな世間話をしてから、自分の部屋に向かい、金庫にお金をしまう。




「…さて、ギルドで領主様に到着の連絡はするようにアハトから手配したし…あとする事って言えば…そうだ≪経験回収≫しなきゃ!」




ライアはヤヤ村に帰ってから、2か月ほどはリールトンの街の分身体の経験を回収していないし、火竜討伐後はどの分身体もリールトンの街にいたので、回収できていない。



なので明日に備えて、分身体達を集め≪経験回収≫をしてしまおうと考えるが、まだギルドも終わっておらず、アインス達も近場に魔物が出てきていないか見回りの依頼を受けている為、すぐには回収できない。




「…はぁ…しょうがない、夜まで待つかぁ…」




今すぐできることはないと諦め、ヤヤ村からの旅の疲れを取ろうとベットに横になるのであった。










―――――???Side





「明日…なのですわね?」



「はい、先ほど連絡があり、明日出発だそうですよ」




時は夜中、小さき影達が密談を交わし、翌日の予定を話し合っていた。




「ふふふ……ついに…ついに明日で私の野望が叶うのだわね!!」



「それは…どうなのでしょう?私はよくわかりません」



「私が叶うって言ったら叶うのだわ!!絶対なのよ!!…って、怒鳴らせないで欲しいのだわ…!」




その影達は、先ほどまでの密談とは打って変わりいきなり大声を出すが、幸い他の人たちにバレなかったのか、特に騒ぎにもならなかった。




「ともかく…明日は手初通りにお願いするわね!」



「あぁ…はい…多分…」



「くぅぅぅ!」



そんな会話を交わし、何かを企む影達は明日を思いながら姿を消していく。









―――――ライアSide




「…さてと…リールトンの街にいる分身体は帰って来たし…早速回収しちゃおうか!」



「…この部屋に、俺も居て良かったのか…?」



部屋には分身体21人とライア本体、それにパテルがアインス達と付いてきて、この部屋はギュウギュウの23人もの人が密集していた。


ちなみに部屋の隅やトイレに分身体を押し込んで、ギリギリ動けるので自分でも思うが、何人か先に≪経験回収≫すればよかったと反省する。



パテルに関してだが、ここ何日かはアインスの冒険者パーティに同行させ≪索敵≫のレベルを上げてもらっていた為、アインス達と一緒にいたという訳だ。



「大丈夫だよ?回収したら、何人かは消して広くなると思うし」



「……そういう事では……まぁいいか…」




パテルは何か言いたげだったが、「気にしすぎなのも変だよな?」と小さく独り言をつぶやいてから、特に何も言わなくなった。



「それじゃ早速…≪経験回収≫!!…からのぉ…ステータスカード!!」





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^




現在の主人公のステータス


 名前:ライア


 年齢:15

レベル:50

 種族:人間

クラス:錬金術師


 体力:16000/16000

 魔力:35000/35000


攻撃力:87

防御力:57

素早さ:105

知識力:119

器用さ:291


スキル


≪分体≫25

≪経験回収≫25

≪家事≫17

≪格闘技≫25

≪潜伏≫21

≪分割思考≫10

≪剣術≫13

≪ステップ≫20

≪農業≫18

≪解体≫10

≪細工≫6

≪変装≫21

≪裁縫≫10

≪自己回復≫10

≪索敵≫18

≪魔力操作≫22

≪変声≫18

≪槍術≫13

≪投擲≫10

≪状態異常耐性≫7

≪礼儀作法≫6

≪錬金術≫7




称号






討伐歴【▽全表記】


ゴブリン    【48443】

オーク     【5125】

ツインハンドベア【344】 

オーガ     【91】

ワイバーン   【12】

モーム     【521】

ビックバット  【356】

バイパー    【302】

ゴーレム    【413】

ブラックウルフ 【569】

レッドドラゴン 【1】



登録者【▽全表記】


シュリア・アンデルセン

セルス

ミリー

カズオ

ネリヤ

ゼル

ミリアナ

タリス

リネット・リールトン





^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^





「おおぉぉ…スキルが殆どレベル上がってるし、ステータスもこの2か月にしては一気に伸びたかな?」



ステータスの【器用さ】の伸びはいつも通り以上として、他も伸びているし。

スキルに関しては≪分割思考≫≪裁縫≫≪解体≫≪細工≫≪農業≫≪投擲≫の6個以外はすべて軒並み上がっている。



「≪分体≫もついこの間上がったばっかなのに、もう増えちゃったね…よほど火竜討伐が良い経験値だったのかな?」




ライアはスキルのレベルにも関係するのかは知らないが、あれほど濃い経験を積んだので、関係があると仮定して、そう独り言を漏らす。




「……良かったか…?」




「あ、うん!結構上がってたし、今日のうちに回収できてよかったよ!」




パテルの質問に晴れやかな笑顔を見せながらそう答える。



「……なら、もういいのか?俺はアインス達と宿に戻るぞ?…」



「え?うん…別にここに泊って行ってもいいけど?明日は一緒に王都に行くんでしょ?」




「…………遠慮する……俺は明日の朝に、宿から合流する…」



「…そう?」



パテルはライアの誘いを苦々しい顔をしながら断り、アインス達を連れて、部屋を出ていった。



(どうしたんだろ?…別に男同士だし、遠慮しなきゃいいのに…なんかエルフ的な問題かな?)




ライアの疑問は解消されることは無いまま、その日は眠ることになった。







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