はじまりがはじまったぁ












どういう訳か、俺は転生という物を経験したらしい……それも前世の記憶を保持したままでだ。



俺もラノベなんかは読んでたし、こういう状況になったら色々やったり、落ち着いて状況把握なども出来ると思っていたんだが…。




(ずっとただの赤ちゃんプレイしか…出来なかった…)





そう、この赤ちゃんに転生してから、前世で色々考えていた事を調べたりしてみようとはしたのだ。



(やろうとしたんだけど……何より赤ちゃんって目が見えないのよ‼‼)



どうやら生後1週間ほどの赤子は、目がほとんど見えていないらしく、生まれて3,4か月ほどではっきりと目が見えるようになると言われている。



(いやぁホント赤ちゃんって最初、目がぼやけるんだねぇ!周り観察しようにも見えないのさ!……まぁそれでもなぜか1週間くらいで見えるようになったから、転生してるってはっきりわかったんだけど…)



すぐに目が見えるようになったのは世界が違うからなのか、前世の人間の魂が宿って子供の体のスペックが変わった為なのかも知れない。



それにもしかすると、実際には地球での情報が誤りで、ただ赤ちゃんに転生した成人の人間が居ないから、わからなかったとかなのかもしれない。(まず居ないので調べようも無いが)





(…で、目が見えるようになったその後も実は問題があった……それは言語問題だ!)



目が見えないように耳もしばらく聞こえないだけで、そのうち鼓膜がはっきりして聞こえるようになるのかなぁってわずかに期待していたけど……聞こえている限り、やっぱり周りの人達が話している言語が違うのだ。




(その事実がわかって、いるかもわからない神様に“神様ぁそこは言語取得させといてくださいよぉ”って、まぁ何度かなげいたね……。

考えても見てくれ、いい歳行った大人が、全く新しい言語をノーヒントで習得しなきゃならないって思った時の絶望感を…)




 そんな感じでリスニング??の勉強をしながら、渋々赤ちゃんプレイを行いながら、何とか言葉がわかるようになってきたのは、離乳食っぽいおかゆモドキから、少し噛み応えのある物を食べるようになってきたタイミングだったから、おそらく1年とかそんくらいかな?前世では独身で子供の世話とかはした事が無かったのでそこら辺の知識はあまりない為、ただの予想にはなるが。



(…我ながら1年で新しい言語を習得できたのは、体が赤ちゃんだったから物覚えが良かったからかもしれない。)





「ほんとにライアは静かな子ねぇ」



「まぁ俺たちの息子だからな!賢い上に上品ときたもんだ!かぁさんの血が濃いんだろうな」



「隣のリーリンさんとこの子は夜泣きがこっちまで聞こえるくらいだったから、子育てってもっと大変だと思ってたもの」



(そりゃ中身は大人だからなぁ…構ってほしくて泣いたりできる訳が無いしなぁ…)



言葉がわかるようになって、わかったのは母親がマリーで父親がゴートンという名前(あだ名で呼び合っている可能性もあるが)である。



それから俺がいるここはヤヤ村という村らしい。



お母上に抱かれながら家の外に出たりした時に、井戸があったり洗濯は手洗いだったりと色々見てあまり文明は発達してないのだと感じた。



基本的にはそれくらいしかこの1年ではわからなかったのだが、一つだけ発見がある。




それは科学ではないがある事だ。



…まぁこれは確定ではないのだが、俺の住んでる家のキッチンでそれを発見した。



この家…いや村全体でも電線はおろか、地面に工事した跡などもないのになぜかキッチンで、お母上は軽くコンロ的な所に手をかざすだけで火が付いたのだ。



それを見てしまえばもうテンションは上がりに上がった。



(え…あれって…魔法!?)



そう魔法、初めて見た時は“魔法だ魔法だ”と年がらもなくはしゃいでしまったが、まだ魔法と決まったわけじゃないと冷静になり、色々探ってはいたがそれからは進展はしていない。



「かぁーしゃ‼かーしゃ‼」



「あらあらライア?どうしたの?」



ほえそれほーえそーれあいなに!?あおお魔法!?」

コンロの所の魔法のなにかかも知れない物体指さしながら、お母上に教えてもらえるように必死に聞くが。




「んー?あぁ今日のご飯かしら?今日はとぉさんが森で取ってきた山菜…お野菜とお肉のスープよぉ?」



産まれて1年の子供の言葉は正確には伝わらず、今日の夕ご飯の献立を気にしているととらえられてしまう。




(…くそぉぉぉっ!!!…舌ったらずのこの口が恨めしいい!!!)



俺は子供の体である己の無力さを痛感しながら「いつか魔法(仮)の正体を暴いて見せる!」と意気込むのであった。





…ちなみに夕食に出されたスープはとてもおいしかった。









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