残念!!全部俺でした!

大樹

~プロローグ~

はじまりはじまり

 












 ―――“疲れた…”







 現在の時刻は深夜の3時、暗い街中を一人、疲れた顔を地面に向けて歩く男がそこにいた。




「あ”ぁ”ぁぁぁ…疲れたぁー…」



夜道を歩く男はスーツ姿をしており、今は仕事帰りなのかネクタイを解き腕に持ちながら、会社で溜まった疲れを吐き出す様に声を出す。 



(こんな時間まで残業とか、うちの会社もブラックになりかけてるなぁ…

…いや、まぁ残業代は出るし、納品が間に合わない今月だけ残業してくれって言ってるから、別にブラックとは言わんが…1週間毎日残業はさすがに死ぬってホント…)




男の働いている会社はゲーム会社のプログラミングやAI開発を行う会社で、今は新しく開発されているフルダイブ型ゲーム開発の仕事が沢山入っており、タイムスケジュールなどがかなりきつい為、その穴埋めでこの1週間ほどは毎日残業をする日々であった。




そんな会社の愚痴を頭の中でボヤキながら地面に顔を向けつつ、男はフラフラと足元が危ない歩き方をしながら夜道を歩いて行く。








「っとと…赤信号か…」




疲れでフラフラの状態になっていても一大人だ、赤信号機の前で気付き、足を止めて顔を上げる。





(こういう時に酔ってたりすると、信号とかがわからなくなったおっさんやらが、そのまま車道を渡っちゃう奴とか、居るんよなぁ…迷惑な飲酒程、死に急いでると思うわ。うん…酒は家飲みに限るなぁ)




男は会社の愚痴のみならず、酒癖の悪い酒飲みの愚痴まで考えだし、世の店や外で酒を飲む酒飲み達を否定するような思考をしだす。



そんな風に色々とものを考えながら信号が青になるのを待っていると、一台の車がこんな深夜にもかかわらず、道路をこちらに向かった進んでくる。




(…もしかしたら、あの車に乗ってるのも残業終わりの人だったりするのかな…それともこんな時間にコンビニでも行くのかな?)



道路を走る車を見て、そんな考えを凝らしていると、その車の異様なスピードに目が向く。




―――ぶぅぅぅぅぅん!!



「…はやくね?」



男はスピードの出ているワゴン車を見てそう呟くと、そのワゴン車が急にハンドルを切ったのか、こちらにワゴン車が方向転換してくる。




「ちょ!!!???」




――――キキィィィィーー!!



―――ドン!!






男は普通の状態であれば咄嗟に避けるなり、電信柱を盾にする事も出来ただろうが、男は一週間の疲れと目の前の衝撃的な事に驚いて、瞬時に動けずワゴン車に吹き飛ばされる。





(…くっ…そ……なんでいきなり…)




男は意識が薄れゆく中ワゴン車の方に目を向けると男を引いた衝撃で起きたのか、ハンドルに押し付けていた赤い顔を起き上がらせ、こちらを見ていた。




「…飲酒…して……居眠り運転…かよ………」









――――――――――

――――――――

――――――












 ぐにっ

(いて…)



 ぐにっ

(いてぇなぁ)




 ぐにぐにぐにぐにぽんっ‼

(いだだだだだだだだだだだだ‼)

「おぎゃあああああおぎゃあああああああ」





「〇R×T△■×●ND▼A△!!」



「A▼A△WK△■▼ABB△!!」





(…え?)



あまりの痛みに、大声を上げたつもりでいたが。口から発せられるのは特に意味もない赤子のような泣き声だけが発声される。



(なんだ?…俺はどうなったんだよ…それに目がよく…)




それに、どうやら周りには複数の人が居るようだが、なぜだか視界がぼやけていて、人相にんそうなどは一切わからない。




「A▼A△WK△■▼ABB△!!A▼A△WK△■▼ABB△!!」



「■×●ND△WK△▼A△■×●△WK△!!」



「■ND△WK△K△K△■▼A■▼A▼A▼AB!!」





(…えーっと…ん?)



目も見えず、周りから聞こえるのは話し声だとは思うが、それすら確証がないほどよく聞こえない。






(イマイチ状況がわからんが俺は生きてるのか?車に押しつぶされた痛みも朧気ながら記憶にあるんだが夢だったのか??

というよりさっきの体中をツボ押しのように痛くされた後、何かから出た感覚もあったが…)



ひとまず気を失う前の事を確認して、状況を予想しようとするが。



(あ…なんか…すごいねっむい…)




色々と考えようとするが、その意志とは関係なく、抗えないほどの眠気が襲ってくる。



「■×△W…」



(なんか…周りの人の……言語…おかしく…なか…)


……Zzz









 ――――――――――――――

 ――――――――――

 ――――――










 ―――1週間後





「だぁぁうだぁヴァいい!」

(うん‼生まれ変わってるね俺!)




「●ND△WK△▼A△■×●△WK△~?」



自分の状態を、声高々に宣言をしている(つもり)と、その声に気づいて、この世界に生まれてからずっと、おむつやその他、お世話をしてくれている女性が近づいてくる。



(あ、おそらく俺を生んでくれたおかぁたま!あ、いや違うんです!別におっぱい欲しい訳じゃないんです!恥ずかしいんで最低限で!何だったら哺乳瓶でいいんでぇぇぇぇ!!!)




「●△▼A△■×△♪」




 (ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ………)












「…げっぷぃ(泣)」










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