20  続ミフユ発言まとめ〈過去〉

【妹の友人には塩対応】


 学生のときだ。コハルの友人が家に遊びに来た。

 ミフユが友人の前方1メートルぐらいの距離にいた。

「こんにちは」

 友人の言葉に、ミフユは「……」、視線を合わすことなく、すううとフェイドアウトしていった。


 あまりに気まずい。コハルは、姉が自分に幼稚ないやがらせをしていることは、誰にも言っていなかった。だが、これは言わないわけにいかなかった。

「ごめんね。姉は私にやさしくないんだ」


 このことを母にこぼすと、「(友人の)声が聞こえなかったんじゃないの?」と。


 前方1メートルの距離で?



【自分の知り合いの前では豹変】


 ミフユとコハルの趣味趣向は似通っていて、その趣味趣向のメンバーの集まりが夏にあった。

 コハルは自分の用事で、集まりには遅れて参加した。

 汗をかいて到着すると、「あ! コハル」とミフユが駆け寄ってきて、「こんなに汗をかいて」と自分のハンカチで、コハルの顔をぬぐいはじめた。

 予測しえなかったミフユの動きに、コハルはかたまってしまった。人間、びっくりすると固まる。


 これは知人への〈私はやさしい妹思いの姉〉アピールだろう。

 しかし、子供じゃないんだから。コハル、あらさーだから。



【妹の私物を知り合いにあげてしまったとき】


「……貸したコハルが悪いのよ」


 コハルは街の文具屋で薄青の小さな石の標本を、2個買った。

 よりきれいな方は自分のにして、もうひとつはミフユにあげた。


 「もうひとつのも貸して。1階に飾りたい」と、ミフユが言い出した。

 飾るだけなら、家のどこに飾ってもいいだろう。貸した。


 すると、しばらくして、「知り合いが持って行ってしまった」と、ミフユが言う。


 話を聞くと。

 「きれいな石でしょう」とミフユが、コハルの石のほうを知り合いの手に乗せたそうだ。

 「ありがとう」、その知り合いは、石をもらったとカンちがいしたと。

 なんで、コハルの石のほうなんだよ。

「なんで取り戻さないの」

 あげるとしても、ミフユにあげたほうの石にすれば。コハルは怒った。


 で、上記のことをミフユは言ってのけた。


 貸さないって最初は断ったよ。1個、あげたんだから、それでいいじゃんと。

 でも、しつこくしつこく、貸すっていうまで、まといついてくる。

 根負けして貸したんだ。



 コハルにだけ、こういう態度。他の人とは、うまくやってる、なわけはなくて、時々、一端は、はみ出てしまうのではないか。「ひどいことされた、言われた」みたいな被害者目線は多かった。

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