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 まさか、あの人嫌いの希輝が自分から協力を申し出るなんて!

 衝撃が大きすぎて、希輝の強い視線におされるがまま「うん」と頷くことしか出来なかった。

 ふらつく足取りのまま教室に戻り、自分の席へと腰かければ、気づいた友樹が慌ただしく駆けつけてくる。


「昨日に引き続き、なんの用だった?」

「……俺にもよく分からない」


 魂がぬけたような表情を友樹に向けて、小さく溜息を吐く。

 希輝は噂なんか気にしないと言っていたけど、俺はともかく、相手は歩くだけで噂されるような人物だ。

 本人が気にしていなくても、俺は気になって仕方がないんだけど。


「まあ、本人がいいって言ってんだから良いのか……?」


 正直、小指に絡まった赤い糸の解き方を、俺一人では見つける自信がなかったから、一緒に探すという言葉にホッとしたのは事実だ。

 色々と気がかりなこともあるけど、赤い糸が解けるまでは希輝の言葉に甘えても良いのかもしれない。


「――と言うことで、作戦会議!」


 人気がなくなる放課後を狙って集まった空き教室で、右手で天を指せば、希輝の呆れたような視線が返って来た。


「なんでそんなに張り切ってるんだ?」

「だって人嫌いな希輝君が、自ら俺に関わろうとしてくれてるんだぞ? 張り切らない筈がないだろ!」


 ニコニコと笑みを向ければ、希輝の視線が横にスッと逸らされた。

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