第29話 ロードの愛読書
皆の家・前。
ルロウは今までの旅で見た物や聞いたことを話してくれる。
「へー、ペンギンたちの暮らす雪の街かぁ。見てみたいな」
「寒そうチュウ」「チーは嫌チー」「でも、どんな街だろチャア」
「他には? どんなところに行ったんだ?」
「そうだなぁ……ずっと遠くにある街でサーカスとかいうのが流行ってたなぁ」
「さーかす?」
「人と動物の曲芸なんだってよ。トラが火の輪を潜ったり、カバが大きな玉に乗ったり、ヘビが火ぃー吹いたりな。まるで絵本でも見てるみたいだった」
「はぁー、何だそれは……?」
「バカバカしい話に聞こえるだろ? けど、オレは見てきて――」
「あぁー、そんなの凄そうなものがあるのかー、オレも見たい」
「ルロウ、変な冗談やめるチュウ」「ロードはそういう夢に弱いチー」「絵本好きだからチャア~~」
「嘘じゃないけどな……絵本が好きなのか?」
「昔の話さ……もう3年ぐらいは読んでない」
「なるほど、冒険に行けねぇから絵本で我慢してたと……」
「我慢じゃないな絵本は面白いし、たくさんのことをオレに教えてくれるんだ」
「そうか。どんなことを教わったんだ?」
「これを読めば、きっとわかる」
鞄から一冊の愛読書を取り出して見せてあげる。
「レじぇンドおーブ・スラいムぅ?」
「オレが子供の頃に160回も読み返した。一番、愛読してた絵本だ」
「ふーん。けど、こういうのあまり親しみないから、わからんな……」
「じゃあ試しに読んでみてくれ……絵本は誰が読んでもわかるように工夫されてるからさ」
「はぁ? でもこれ子供が読むものじゃぁ……」
「読んでやってチュウ」「今日子供に勧めてたのに読んでくれなかったんだチー」「可哀想チャア」
「お前たち、情に訴えかけるのはやめよう……絵本はそこまでして読ませるものじゃないんだ」
「わかったわかった、貸しな読んでやるよ」
「えっ! いや、別に無理に読まなくてもいいんだ……子供の読み物だってのは本当だしさ……」
「いや、気が変わったんだ。お前は色んな事に挑戦してたしな。オレもそれに習わないとなにも変わらないだろう、せっかくだロードの見た世界ってやつ読ませてもらう」
(…………)言葉にならない感動を感じた。
「わかった、読み終わったら感想聞かせてくれ」
「おう」
ルロウの目の前に絵本を置いておく。
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