寓話

@yuzu_dora

北風と太陽

晴天

男女数人でバーベキューをしている。


美智と女、バーベキューコンロの前で肉の皿を譲り合っている。

真司、トングを持ったままヘラヘラしている。

二人の真ん中の辺りでウロウロする真司。


酒を片手にその様子を眺めている女①と女②。

皆が半袖の中、一人だけ長袖に帽子の女①。


女①

「北風と太陽って話あるじゃん。」

女②

「え?うん。」

女①

「私が旅人だったら、もっと良い終わり方出来ると思うんだよね。」

女②

「何で?」

女①

「太陽の方が敵だから。」

女②

「太陽光ダメだもんね。」

女①

「太陽の暖かさで服を脱がすって話だけど、私はどんなに暑くても脱げない。

逆に北風の方が有難いよ。」

女②

「でもさ、寒くて脱げないんじゃない?」

女①

「そう。だから、私が旅人ならどっちも脱がせられないの。」

女②

「バッドエンド!」


女②、笑う。


女①

「元々、北風が仕掛けた勝負に太陽が乗って、太陽は優しいから勝つって話じゃん。」

女②

「何でも敵対視して弾くより、包み込んでしまいなさいって話だもんね。」

女①

「でもさ、よくよく考えると太陽も強かなんだよね。旅人にとっては全然優しくない。そもそも勝負してる時点で性格悪い。」

女②

「手厳しいな。」

女①

「私なら、そんな太陽の強かさをブロック出来るのよ!」

女②

「今んとこ、バッドエンドだけどね。」

女①

「まぁ、両人脱がせられないって事で、どうにか脱がせようと知恵を絞るワケ。」

女②

「ほうほう。」

女①

「んで、こいつは暑さ寒さが極端なのがダメだって気付くの。」

女②

「んで?」

女①

「じゃあ、合わせたら丁度良くね?って協力すんの。」

女②

「おぉ。」

女①

「春一番みたいな丁度良く生温〜い風が吹いて来て、私は気持ち良くなる。太陽が北風の雲で隠れるから、風を感じたいって脱ぐって寸法よ。」

女②

「教訓は?」

女①

「プライドをぶつけ合うより協力しよう。」

女②

「確かに良いかも。」


美智と女、まだ譲り合っている。

お互いに引き攣った笑顔。

美智、真司を小突く。

ただただヘラヘラする真司。


女①

「いつまで北風と太陽やってるんだろう。あいつら。」

女②

「美智も物好きよね。」

女①

「真司ってドMなのかな。」

女②

「あ、それあるかも。」


女①と女②、酒をあおる。


(終わり) 



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