悪魔の契約

@yuzu_dora

悪魔と青年

青年の部屋

窓の外から悪魔が現れる。

少しだけ驚く青年。

味気ない反応に驚く悪魔。


悪魔

「お前の寿命を半分頂く。その代わり、望みを一つ叶えてやろう。」

青年

「えっ!?まだ悪魔に取られるくらいあるの!?」

悪魔

「……え?」

青年

「半分じゃなくて3分の2取ったら望みの濃さが強くなるとか無いの?」

悪魔

「半分でも3分の2でも同じだ。」

青年

「後どんくらい生きるのかなぁ……。」

悪魔

「ふんっ。それは教えられないよ。」

青年

「ふぅん。」

悪魔

「……。」

青年

「じゃあ、寿命3分の2使う!豪邸建てられるくらい稼ぐ画家になりたい!」

悪魔

「……お前、話聞いてたか?」

青年

「うん。」


青年、満面の笑み。

悪魔、戸惑う。


青年

「叶うのは約束されてるけど、いつ叶うかは分かんないんでしょ?」

悪魔

「……まぁ。」

青年

「しかも、豪邸建てた途端に落ちぶれるかもしんない。」

悪魔

「無いとは言い切れんな。」

青年

「だったら3分の2あげる。」

悪魔

「半分の方が得だろ?」

青年

「いや、いつ叶うか分かんないから。直ぐ叶えば良いんだろうけど。」

悪魔

「……。」

青年

「直ぐ叶ったとしても落ちぶれるかもだし。」

悪魔

「……。」

青年

「今までの人生が地獄だからさ……。生き地獄が一番辛いって。」

悪魔

「そんな事無いと思うけども。」

青年

「このままだと『あーあ。やっと解放!』で終わる人生なんだ。」

悪魔

「……そんなに辛いのか?」

青年

「……。」

悪魔

「生きてみたら案外……」

青年

「まだ死にたくないよ!で終われる人生、めっちゃ良いじゃん?」

悪魔

「やり切ろうぜ。」

青年

「一生懸命生きてるさ。どうせ生き地獄ならそうやって死にたい。」

悪魔

「だけどよ、半分なら生きられても3分の2も取ったら叶う前に死ぬって事も……」

青年

「無いでしょ。契約成立しないもん。悪魔界にも詐欺があるの?」

悪魔

「……無いけど。」

青年

「まぁ、満足が一番だけどね。」

悪魔

「じゃあ、やっぱり半分……」

青年

「半分だと最後の方に叶った場合、『あーあ。』で終わっちゃうもん。

『まぁ、こんだけ渡したからなぁ。』ってなれば納得出来る。」

悪魔

「出来るかなぁ。望みが叶ったんだぜ、もっと噛み締めたいだろ?」

青年

「僕、そんなに生きたくないんだ。死ぬ勇気が無いだけ。失敗した時の追加される地獄が怖いだけ。」

悪魔

「……。」

青年

「長くしゃぶるより、噛み締めて噛み締めて思いっ切り中に入れたいのさ。」

悪魔

「……。」

青年

「これで半分よりも近い未来に成功が約束されるんだから、生きる気力も湧くってもんよ。」

悪魔

「……分かったよ。」

青年

「ありがとう!」


悪魔、青年に儀式を施す。

青年、嬉しそうに去る。

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