CITRUS LOVER【BL】
蒼(あおい)
CITRUS LOVER
―季節、冬。
―雪斗、蒼汰、蒼汰の家。リビング。
蒼汰:…ゆき?
雪斗:…何?そうちゃん。
蒼汰:…何でこうなった?
雪斗:…何が?
蒼汰:ゆきが、俺の作ったチョコが食べたいって言うから、キッチンで作り始めたんだよな…?
雪斗:うん。そうだね。
蒼汰:……何で、今俺はリビングのソファーに押し倒されてんの?
雪斗:チョコも食べたいけど、今は…そうちゃんの事、食べたくなっちゃったから…つい?
蒼汰:つい?…じゃねーよ!…ったく、二十歳になってから、本当に変わったよな…ゆき。
雪斗:そう?
蒼汰:そうだよ。人はここまで変わるのかと、俺は今も動揺を隠せないでいる。
雪斗:大袈裟だなぁ。俺はいつも通りだよ?ただ、そうちゃんに対する想いが強いだけ。
蒼汰:その想いの表現の仕方が、なんつーか…凄いんだよぉ…。
雪斗:こんな俺は嫌い…?
蒼汰:…っ!いや、そういう訳じゃねーけど…。
雪斗:じゃあ、そうちゃんは、俺の事どう想ってるの?
蒼汰:………言わなきゃダメか?
雪斗:言ってくれないの…?
蒼汰:そ、そんな顔するなよ……。す…好き、だよ。俺も…ゆきの事…。
雪斗:ふふっ…俺も、そうちゃんの事大好きだよ…!
蒼汰:ぅわっ…!こ、こら…急に抱きつくな…!
蒼汰:(М)寒さが続く季節―。3年という時間をかけ、俺自身の中で色々と考え、整理して…今はゆきと付き合っている。…そう、恋人として。
蒼汰:(М)二十歳の誕生日を迎えたその日から、ゆきはそれまで以上に俺に対する想いをぶつけてくれている。
蒼汰:(М)これを、ゆきなりの甘え方と捉えるべきなのか、正直、悩ましい所ではあるが…俺に素直な感情を見せてくれているのは、嬉しいな…。
蒼汰:(М)ゆきが、俺にしか見せない姿を…独占している様な、そんな感じがして…。
雪斗:(М)3年。この時間が、とてつもなく長く感じた。生まれてきた時間の差は、どう足掻いても埋められない。
雪斗:(М)こんな気持ちを抱いたのも、きっと、そうちゃんだからなんだろうなぁ…と、いつも思う。
雪斗:(М)好きって想いが、相手に伝わるだけでも、凄く怯えていたのに。その想いが受け入れられるって、こんなにも嬉しくて、幸せな事なんだなぁ…。
雪斗:(М)この気持ちを、何かの形で、そうちゃんに返したいな…。
―雪斗、蒼汰、リビングに戻り作業を再開する。
雪斗:ほらほら、チョコ作り再開させないと…!
蒼汰:中断させたのはどこの誰だよ…。
雪斗:ふふっ…。それで?これから何を作るんだっけ?
蒼汰:チョコテリーヌを作ってく。出来たても、冷やしても勿論、美味しいんだけど、少し温めなおした方が、俺は好きなやつだな。
雪斗:へぇ~。お菓子作りって、やっぱり難しいの?
蒼汰:うーん、どうだろうな?普段から作ってれば、特に難しいと感じる事もないんだろうが、面倒くさいとはなるかもな。
雪斗:面倒くさい?何で?
蒼汰:普段の料理は、味の好みとかも人それぞれだろ?濃い目の味付けが好きだとか、あっさりした方が好きだとか。
雪斗:そうだね。俺とそうちゃんも、ちょっと味の好み違うしね。
蒼汰:だろ?料理は、その人に合わせて味付けが変えられる。なんなら、目分量でも料理は出来る。
雪斗:もともと薄味とかで作っておいて、後から調味料足して自分の好きな味にしたり?
蒼汰:そういう事も出来るな。ただ、お菓子作りはそうもいかん。分量を間違えると、上手く生地が膨らまなかったり、焦げたりする。
雪斗:あー…確かに。それは、面倒くさいってなるかも。凄い神経使いそう…。
蒼汰:まぁ、何でも回数重ねて慣れるしかないって事だな。
雪斗:…俺にも作れるかな?これ。
蒼汰:比較的、簡単な作業だし、ゆきにも出来るんじゃないか?
雪斗:そう、かな…?じゃあ、今日は先生の作り方を見て勉強しないとね!
蒼汰:先生って…誰かに教えられる程、器用じゃねーぞ?
雪斗:大丈夫、大丈夫。そこが、そうちゃんの良い所だから。
蒼汰:…褒められてんのか?それ?
雪斗:まぁまぁ…。(笑)
―間―
蒼汰:(咳払い)材料は、チョコレート、卵、砂糖、牛乳、インスタントコーヒーに、マーガリン。あと、ブランデーだな。
雪斗:マーガリン?バターじゃないんだ。
蒼汰:まぁな。チョコレートは、甘いのが得意じゃなかったら、ビターのやつにしたら良いし。
雪斗:なるほど。そこで少しは甘さの調整できるんだ。あと、ブランデーって…。
蒼汰:お酒だぞ。ゆきも成人してるし、そこは問題ないだろ?
雪斗:どんな味になるんだろう…?酔っぱらったりするのかなぁ?
蒼汰:香りづけ程度の量だしな。そこまで酔う感じにはならないと思うが……少し多めに入れとくか?
雪斗:わぁ~…悪い大人だぁ~…。
蒼汰:あはは!冗談だよ。でも、多少多くても大丈夫だと思うぞ?
雪斗:ふ~ん…そっか。
蒼汰:後はひたすら混ぜる作業だからな。少しずつ卵入れて混ぜてくから、中々に腕が疲れるんだよ。
蒼汰:混ぜ終わったら、型に流し込んで、オーブンは180℃で予熱して、天板にお湯張って40分焼く!それで完成!
雪斗:………。
蒼汰:…?ゆき?どうした?
雪斗:…え?何が?
蒼汰:いや、ぼーっとしてたぞ?大丈夫か?
雪斗:う、うん。大丈夫!ブランデーの香りで酔っちゃったかな?…なんて。
蒼汰:そこまでチョコには入れてな……あっ!ブランデーの蓋そのまんまだわ!オーブンの予熱で充満したのかなぁ?悪い。
雪斗:大丈夫だって。……あのさ、そうちゃん。これのレシピって、貰えないかな?
蒼汰:ん?チョコテリーヌのか?別に良いけど…珍しいな。ゆきが何かを作りたいだなんて。
雪斗:あ…いや、ほ…ほら!もう少ししたら、バレンタインだし…!ちょうどその日ぐらいに、母さんが一時期返って来るみたいでさ…。
蒼汰:おぉー!良いんじゃないか?サプライズか…。ゆきの母さんもきっと喜ぶな!!
雪斗:う、うん…。だ、だからこの事は誰にも言わないで欲しいんだ…。
蒼汰:分かった!内緒だな。頑張れよ…!
雪斗:ありがとう、そうちゃん。
雪斗:(М)母さんへのサプライズプレゼント。……これは、口実だ。本当は、俺が作ったチョコを、そうちゃんに食べて欲しい。
雪斗:(М)そうちゃんは、鈍感だけど、変な所で勘が鋭くなるから、慎重にならないと…。
雪斗:(М)うまく、出来るかな…?
―蒼汰の家―蒼汰、リビングでテレビを見ている。
―雪斗、大学から帰って来る。
雪斗:うぅ~寒い!まだまだ春は遠いね。
蒼汰:おかえり、ゆき。お疲れ様。
雪斗:ただいま。そうちゃん、何見てたの?
蒼汰:何か面白い番組やってねーかなーって思ってたけど…この時期だから、どこもバレンタイン特集だな。
雪斗:あぁーそうだね。大学の女子達も、最近その話題が多い気がする。
蒼汰:何だよ、ゆき。モテ発言かぁ?イケメンは大変だなぁ。
雪斗:そんなんじゃないって。まぁ、ちょっと声は掛けられたりはするけど…。
蒼汰:モテてんじゃん…。
雪斗:違うって。……何?どうしたの?
蒼汰:……別にぃ?
雪斗:もしかして………ヤキモチ?
蒼汰:そんなんじゃねーし…。
雪斗:えぇー…何それ。可愛いんですけど。
蒼汰:可愛い言うな…!
雪斗:心配しなくても、俺はそうちゃん一筋だよ。
―雪斗、ソファーに座っている蒼汰の後ろから、抱きつく。
蒼汰:…んっ………!!
雪斗:…?そうちゃん?どうしたの?
蒼汰:い…いや、その…ゆきの顎が……
雪斗:うん…?
蒼汰:さ…鎖骨に、当たってんだよ…。
雪斗:うん。後ろから抱きついてるからね。
蒼汰:……ダメなんだよ。
雪斗:何が…?
蒼汰:…鎖骨が。
―少しの間―
雪斗:…ふぅん?
蒼汰:…!何だよ?!その意味深な笑みは?!
雪斗:別に?そんな顔してないよ。
蒼汰:いいや!してた!悪い顔してた!
雪斗:それより、そうちゃん。俺、外から帰って来て、すげー寒かったんだよね。
蒼汰:だから、何だよ…?
雪斗:あっためて欲しいなぁ。…そうちゃんに。……ね?いいでしょ?
蒼汰:…?!さらっと凄い事言うなよな…。
―雪斗、蒼汰、寝室。ベッドの上。
蒼汰:…ゆき、お前、そこばっか触んな…。
雪斗:…ん?そこって、どこの事?
蒼汰:新しいオモチャ見つけたみたいな顔しやがって…。
雪斗:だって、弱いんでしょ?…ここ。
蒼汰:…んぁ、…ば、馬鹿…やめろっ…。
雪斗:そうちゃんって、鎖骨、ダメなんだね…。
―雪斗、蒼汰の鎖骨にキスをする。
蒼汰:………!?
雪斗:ふふっ…かわいい。
蒼汰:……かわいいって言うな。
雪斗:だって、本当の事だもん。しょうがないじゃん。
蒼汰:………。
雪斗:…?そうちゃん?
蒼汰:…俺だって、ゆきの事好きなんだぞ?
雪斗:うん?う、うん…。
蒼汰:あの時は、まだゆきの事、恋愛感情として見れてなかったけど。…今は、ちゃんと好きなんだからな…。
雪斗:うん……え、どうしたの?そうちゃん、急に…
蒼汰:俺がゆきの事どれくらい好きか、知ってもらう…!
雪斗:え?ちょ、ちょっと…ぅわっ…?!
―蒼汰、雪斗を押し倒す。
―蒼汰、雪斗にキスをする。
雪斗:…ん、……はぁ、そ、そうちゃ…んっ……。
蒼汰:……はぁ、はぁ。………雪斗。
雪斗:…!?
蒼汰:…好きだよ。雪斗。
雪斗:…それは、ズルくない?…今まで名前で呼んでくれた事なんて無かったのに…。
蒼汰:良いだろ?…それとも、今まで通りの呼び方の方が良かったか?
雪斗:…そういう訳じゃ、ない、けど…。
蒼汰:けど…?
雪斗:…そうちゃんって、そういう所、本当にズルイ。
蒼汰:俺の事、あんまり甘く見るなよな。…ふふっ。
―蒼汰、雪斗の腰を指でなぞる。
雪斗:…っあ、ちょっと…?!
蒼汰:…ん?何だ?…腰、もしかして、苦手なのか?
雪斗:…!?い、いやっ、そんなんじゃないし…!
蒼汰:ふぅん…?
―蒼汰、雪斗の腰にキスをする。
雪斗:……!!
蒼汰:俺以外に、その顔、絶対に見せるなよ…?
雪斗:…こんな事、そうちゃんとじゃないとしないよ……バカ。
蒼汰:(М)ちょっと、強引すぎたかな…?とも思ったけど、俺の本当の気持ちだ。
蒼汰:(М)恋愛感情として、ゆきの事を意識するようになってから、ちょっとした事にドキッとしたり、恥ずかしくなったり…。
蒼汰:(М)何か、形として…ゆきに好きって気持ちを伝えられないかな…。
―2月。とある日の朝。
―雪斗、蒼汰ともに通学・出勤の準備中。
蒼汰:ゆき、今日、大学何時からだ?
雪斗:今日は、一限からフルだよ。そうちゃんは?
蒼汰:俺は、いつも通り定時で……あ!あぁー…いや、今日は遅くなるかも。
雪斗:そう…?残業とか?
蒼汰:お、おう、まぁ…そんな感じ、かな?…うん。
雪斗:…?
蒼汰:…ほ、ほら!一限からなんだろ?…はいっ!ゆきの弁当。早くしないと遅刻するぞ。
雪斗:う、うん…。じゃあ、行ってくるね。
蒼汰:行ってらっしゃい。気をつけてな。
雪斗:そうちゃんも、気をつけて仕事行って来てね。
蒼汰:あぁ。
雪斗:(М)今日のそうちゃん、何か普段の感じじゃなかったなぁ…。あんなそうちゃん、初めて見たかも…。
雪斗:(М)急に動揺しだした…みたいな?………え?凄い気になるんだけど…。
雪斗:(М)っていうか、俺も、そうちゃんに内緒でチョコ作りの練習しなきゃ…!バレンタインまで、もう時間無いし…!
蒼汰:(М)あからさまに変な態度だったよなぁ、俺…。ゆきに不思議そうな顔で見られたし…。
蒼汰:(М)でも、これは、ゆきに内緒で考えてる事だから、変に口走らない様に気をつけないと…!
蒼汰:(М)職場の同僚に、それとなく相談してみるかな…。
―夕方。雪斗、帰宅途中。
―ショッピングモールで、バレンタイン用の材料等の買い物中。
雪斗:う~ん……。こういうのって、何をどう選んだら良いんだろう…?全部同じに見える…。
雪斗:女子は、こういうのも楽しみながら選んだり作ったりしてるんだろうなぁ…。まぁ、そうちゃんも凄いんだけど。
雪斗:…誰かの為に何かを作るって、あの頃以来かなぁ…。俺、凄い小さかったけど。
雪斗:あの時は、確か…クリスマス近かったんだっけ?…体験コーナーで、手作りのスノードーム作ったんだよなぁ。
雪斗:上手く出来なくて、半泣き状態の俺に、優しく笑いながら、そうちゃん手伝ってくれてたっけ…。
雪斗:完成したのを、お互いにプレゼントしてさ……ふふっ、懐かしいなぁ…。
―雪斗、ふと顔を見上げると、別のブースに蒼汰が居ることに気がつく。
雪斗:……ん?あれって…そうちゃん、だよね?今日、遅くなるって言ってなかったっけ?
雪斗:それに…一緒に居る男の人…誰だろう?凄い親しげに話してる…。
雪斗:…ううん!そうちゃんに限ってないない!ない…よね?
―同時刻。同じショッピングモール内にて。
―蒼汰、同僚と相談しながら何かを買おうとしている。
蒼汰:しょうがねーだろ?同じくらいの年齢で、相談できる相手がお前だったんだから。
蒼汰:…で、どう思うよ?無難に料理とか、バレンタインだし、チョコ作っても良いんだろうけどさ。俺的には、形として残したいわけ。
蒼汰:恋愛経験が一切無かった俺には、何かをプレゼントするっていうのは初めてなんだよ!……いや、一度だけ、あるか…。
蒼汰:…ん?あぁ、いや、何でもない。ちょっと昔の事思い出しただけだよ。
蒼汰:んで?お前の感想は?…正直に答えてくれ。プレゼントとして貰って、嬉しいものになるか……?
蒼汰:…あ?色?そうだなぁ…ゆ、…あいつに似合う色、かぁ……。
―2月14日。バレンタイン当日―
―蒼汰の家。リビングのソファーに雪斗が座っている。
―蒼汰、仕事から帰って来る。
蒼汰:ただいまー。はぁー疲れたぁ…。
雪斗:あ、そうちゃん。おかえり…。
蒼汰:あれ?ゆき?確か、今日ゆきの母さん帰って来る日じゃなかったっけ?…あ、もう渡してきたのか。
雪斗:ううん、渡してないよ。
蒼汰:え?だって、母さんが帰って来るからって、サプライズでチョコ作るって言ってなかったか?
雪斗:あぁ…あれね。嘘だよ…。母さんは、まだ仕事で出張中。
蒼汰:え…?じゃあ、誰に……。
雪斗:……そうちゃんに、だよ…。
蒼汰:…俺に?
雪斗:…でも、俺、今すごいモヤモヤしてるんだ。
蒼汰:モヤモヤ…?
―少しの間―
雪斗:少し前に、そうちゃん、ショッピングモールで、男の人と一緒に居たよね?
雪斗:残業で遅くなるって言ってたあの日…。
蒼汰:あ、あぁ…。あの日か。……もしかして、ゆきもあそこに行ってたのか?
雪斗:チョコの材料買いにね。…それで?あの人とはどういう関係なの?……まさか、
蒼汰:…?!ご、誤解すんなよ?!あいつはただの仕事の同僚だよ!俺の相談に乗ってもらってただけだって…!
雪斗:…本当に?それだけ?
蒼汰:本当だって。……はぁ。やっぱ俺に隠し事とか向いてねーわ…。
―蒼汰、雪斗へラッピングされた箱を手渡す。
雪斗:…?これ、何…?
蒼汰:バレンタインのプレゼントだよ。……気に入るかどうかは、分かんねーけど…。
雪斗:……。開けても、いい?
蒼汰:あぁ…。
―雪斗、プレゼントを開けてみる。
―箱の中に、黄色と黄緑色のストライプ柄のマフラーが入っている。
雪斗:これ…マフラー?そうちゃんが、俺の為に選んでくれたの?
蒼汰:そ、そうだよ…。気に入らなかった、か…?や、やっぱり、派手過ぎたか…?!
雪斗:…ううん!凄い、嬉しい…!ありがとう!そうちゃん…!
蒼汰:お、おう…。良かった喜んでもらえて。
雪斗:俺、変に勘違いしてたみたい…ごめんね。
蒼汰:良いよ。俺が勘違いさせるような事してたんだし…。俺の方こそ、黙ってて悪かったな。
雪斗:お、俺も……あ、あの、そうちゃんみたいに、上手くはないんだけど…。
―雪斗、持って来ていた手作りのチョコテリーヌを渡す。
蒼汰:…!チョコテリーヌ!…ゆきが作ったのか?!
雪斗:あ、当たり前でしょ?!そうちゃんの為に、バレない様に必死になって作ったんだから…!
蒼汰:すげぇ……すっげー嬉しいよ!!ありがとうな!ゆき!
雪斗:そんなに喜ぶこと?ちょっと大袈裟じゃない?
蒼汰:だってこれは、ゆきが俺の為に作ってくれたチョコだろ?どこの店に行っても売ってない、たった一つのチョコなんだから…!
雪斗:…ふふっ。だから、大袈裟だって…。
―雪斗、蒼汰、お互いに笑いあう。
雪斗:そうちゃん。
蒼汰:…ん?
雪斗:ハッピーバレンタイン。
蒼汰:…ハッピーバレンタイン。
―バレンタインの夜。蒼汰、雪斗、リビングにて。
―食後に、蒼汰がお酒を準備する。
雪斗:そうちゃん、どうしたの?このお酒…。
蒼汰:んー?ちょっと作ってみたいのがあってさ。買って来てたんだ。ゆきも酒飲める年齢だしな。
雪斗:何作るの?
蒼汰:俺と、ゆきの、誕生日カクテル。
雪斗:誕生日、カクテル…?そんなのがあるんだ…。知らなかった…。
蒼汰:俺もこの前、初めて知ったんだけどさ。調べてみたら、結構楽しかったぞ?
雪斗:へぇー。俺のカクテルって、何ていう名前なの?
蒼汰:『ファイナルアプローチ』っていうらしい。ベースが、ジンだから、結構強いかもな…。
―蒼汰、レシピを見ながら、ファイナルアプローチを作る。
蒼汰:これが、『ファイナルアプローチ』。
雪斗:うわぁ…綺麗な紫色…。
蒼汰:飲んでみるか?…無理はするなよ?
―雪斗、一口飲んでみる。
雪斗:…!…け、結構強いんだね。喉が熱い…。
蒼汰:最初はそうだろうな。ちょっとずつ慣れてくれば、美味しく感じてくるって。
雪斗:だといいけど…。そうちゃんのカクテルは?どんなの?
蒼汰:俺のは、ゆきより種類は少なめだな。『グリーンアップルロワイヤル』…だと。
―蒼汰、レシピを見ながら、グリーンアップルロワイヤルを作る。
蒼汰:リキュールとスパークリングワインだけなら、いつでも簡単に作れるな。
雪斗:そうちゃんのも、黄緑色で綺麗だ。カクテルって、家でも作れちゃうんだね。
蒼汰:凝りだすとキリがなさそうだけどな。これくらいなら、たまに作って飲むくらい良いだろ。
―蒼汰、一口飲んでみる。
蒼汰:…甘めだな。ゆきも一口、飲んでみるか?
雪斗:え?いいの?
蒼汰:?何が?
雪斗:……間接キスになるけど?
蒼汰:……!?べ、別にそういう意味で言ったんじゃねーよ…!
雪斗:照れなくてもいいのに。
蒼汰:照れてねーし…!
雪斗:…………あぁー、もう、我慢できない。
蒼汰:何が?!
雪斗:そうちゃん、いじめていい……?
蒼汰:……?!いいわけあるかー!
雪斗:(М)冷たい空気が、ツンと鼻を刺激する季節―
蒼汰:(М)街の至る所で、ふんわりと甘い香りが広がる中
雪斗:(М)俺達は、ちょっぴり爽やかで、ほんのり甘い世界に包まれる
蒼汰:(М)たまにほろ苦い時もあるけれど、その苦さすらも愛おしい…
雪斗:(М)初々しく、瑞々しさが、何処か甘酸っぱい…
蒼汰:(М)シトラスを感じさせるような…そんな、俺達の恋模様―
― fin. ―
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