幼馴染と一緒に温泉に入って、また好きになる

二髪ハル

第1話

「あぁ〜あったまる!」

 高校卒業してずっと社会人として働いていた小太郎だがなぜか昼間の時間帯。風呂つき個室の温泉に浸かっていた。

 温泉に浸かっている。それはいい。

 それはいいんだけど……。

「なんで俺と日和が一緒に風呂入っているんだよ」

 そう、異性の幼馴染で同じ社会人の日和と一緒に入っていた。

「なんでって? お風呂とか温泉に入ったらリラックス出来るから入っているのに決まっているじゃん」

 日和というと俺のことは男としてみていなく普通に肩まで浸かって温まっていた。

「それでも一緒に入るとは思わなかった」

「それは確かに」

 日和はゆったりとした声で笑っていた。

 数週間前のことだ日和と久しぶりに会って色々と話をしたら個人で入れる露天風呂に連れてかれて今、一緒に入っている。

「でも少しは気持ち的にゆっくり出来るんじゃない?」

 日和が笑顔で微笑んでいた。

「それで、なんで一緒に風呂なんて入ろうと思ったんだ?」

「もちろん小太郎のちんこ見るため!」

 日和が人差し指を立てて左右に揺らしていた。

「……冗談はいいから」

 冗談だと思ったのは小学校の頃は手とか繋いで帰っていたけど。中学校に上がってからはスキンシップもお互い軽く肩を叩いて呼び止めるぐらいだった。

 恋愛対象より親友な感覚だったから、俺の裸が見たいというなんて今更ないと思った。

「はい。ごめんなさい半分冗談です……」

 半分は本当なのかよ。……恥ずかしいじゃないか。

「んー。……まあ、どこか観光するとかでも良かったんだけど。気持ち的に温まれる場所でお互いのんびりと裸で語り合うのも良いかなって。……ゆっくり出来るでしょ?」

「……」

 日和と遊んだ日のことを頭に過った。

 日和と遊んだ時にお酒を飲んで愚痴をこぼしてしまった。

 元カノの暴言とか色々なことで別れたこと。会社で前の上司から暴言を吐かれて色々と疲れてしまったこと。

 日和も同じように同じ元カレから色々あったと、聞いたのを思い出した。

「……そうだな」

 日和も同じでこうして誘ってきたんだから。こっちが恥ずかしがってたら失礼か……。

 俺は力を抜いてただ温泉で浸かることをした。異性としての日和じゃなく。ただ純粋に親友が誘ってくれたんだからそれに甘えよう。

「……」

 改めて思うけどいい湯だなと感じる。

「ありがとうな温泉。誘ってくれて」

「うい!」

 日和は軽く身体を伸ばしていた。

「んんっ~! やっぱり小太郎とゆったりする方が居心地がいい」

 居心地がいいと言ってくれて嬉しくなってしまう。

「俺も同じだな。今の空間が好き」

 そう、今の空間が安心する。日和には悪いけど昔を思い出してしまうが気持ちなんて最悪だった。当時付き合っていた彼女は普段から攻撃的な言動が多く気持ちが疲れてしまい3ヶ月で別れを告げた。

「……ふぅ」

 けど、日和をみている昔と今とで、のんびりしている姿を見てみると、日和が小さい頃で過ごした日々が色々と思い出していく。

 一緒に風呂入ってお風呂のお湯で遊んで親に怒られたとかかくれんぼしていていつの間にか鬼ごっこになり泥んこになりながら走り回ったとか、ご飯一緒に食べているところが可愛かったり。

 そんな日和の笑っていた顔が今と同じ表情だとこっちまで嬉しい気持ちになる。

「……」

「……」

 日和が何度も見てきては視線を逸らしているから少し恥ずかしい。

「あの日和さん。こっちを何度も見てくるけどなんかあるのか?」

「え? ……いや、その。小太郎と手、繋ぎたいなって思っているんだけど小太郎はその私と手を繋ぐのはいや?」

「――っ!」

 いや? って言われながら首を傾けながら聞かされたら少しだけドキっとしてしまった。……でも良いかこうやって誘ってくれたんだし。

「……良いけど」

「良いの!?」

 日和が驚いていた。

「そこまで驚くことないだろ」

「えっ……。いや、断られると思ってた。強引に風呂まで入ったのに手とか繋ぎたいなって思ってしまったけど……」

 日和が自分から差し出してきた手を引っ込めてしまった。

 ……なるほどね。元カノに対して俺が色々と不満をぶつけてしまったから日和が女性だからトラウマを引き起こしてないかと心配になってしまったのか。

 日和の方を見てみるとさっきまで笑っていたのが少し反省したみたいで落ち込んでしまっていた。

「……俺は日和から手を握ってくれると言われて嬉しかったけど」

「――っ! ……本当?」

 日和はこっちの方を見て顔を覗かしてきた。

「本当。だから、はい」

「っ! ……はい」

 俺が手を差し出すと日和が握り返してきた。

「小学校以来だね」

「そうだな。一緒に帰っていた日が懐かしい」

「うん……」

 日和がこっちに肩を当ててきた。

「懐かしい……」

 そしてまた嬉しそうに笑っていた。

「……ねぇ、少しのぼせてきたなーと気持ちでご相談があるんだけど」

「なに?」

「このあと体とか洗いたいなーと思うんだけど。このまま私と恋人にならない?」

「…………。――ふぁ!?」

 恋人!?

 まさか恋人にならないかと言われ思わず声が裏がってしまった。

「……それで小太郎が嫌だったらいいんだけど。今晩、私と恋人として過ごしたい……。小太郎のこと好きって気持ちが溢れているんだけど小太郎は私と恋人になるのは嫌?」

「ちょっと待ってくれ……ふぇ、え?」

 俺のこと好き?

 さっき言った言葉を繰り返すが好きって言葉が凄く耳に残っていた。

 ……俺のこと好きだった!?

「……」

 頭の中が真っ白になっていく。

「ちょっと待ってくれ日和は俺のこと好きなのか?」

「好きに、決まっているよ。こうやってお風呂に入れて。手とか繋げて、好きで。好きかなと思ったらやっぱり大好きだったんだなって。……大好きだよ小太郎」

「――っ!」

 好きと言われた瞬間。鼓動が馬鹿みたいに五月蝿くなっているのがわかった。

「……」

 頭の中なんて真っ白になっていた。でも日和に好きと言われて頬がニヤけてしまう。

「……好きか」

「……」

 日和が目を逸らしながら少し俺の手を握ってきた。

「……返事を聞かせて欲しいです」

 日和の少し裏返った声でどんどんと掠れて聞こえてきた。多分不安なんだなと感じるほどの手が伝わってくる。返事はオッケーだ。

「……良いよ。恋人としてお願いします」

「――っ! いいの私と恋人で!?」

 日和がまた驚いてこっちの方を振り向いていた。

「当たり前だろ。恋人だったら、さっき日和がやろうと提案したこともこうやってお風呂に入ったことも小さい頃子供の頃のこともこの先も全部思い出として話せるんだろ」

「思い出……うん。そうだね」

「それと好きだって言われたら日和のこと好きだったなって。だから恋人でいようかなって」

「……ありがとう」

「うん……」

「……」

 日和の方を向くと小さくこっちを見ながら頷いていて。見るたびにやっぱり好きだとわかった。

 湯が出ている音が耳に響いていた。

「じゃあ色々と買い足すか……」

 外に出ようとした瞬間。繋いでいた軽く手を引っ張ってきた。

「エッチの前に待って小太郎!!」

「ん?」

 日和の方を向くと下の方を向いていて、反対の手でお湯を左右に揺らしていた。

「……本当に私たち恋人になったんだよね」

「恋人、ですね」

 日和と恋人とはまだ慣れないが。恋人と言うとと少しニヤけてしまい。気持ち的に嬉しかった。

「小太郎が嫌じゃあなかったら私のことを後ろから抱きしめて、くれませんか?」

「……え?」

 日和が顔を上げると耳まで真っ赤になっていた。

「一緒に入ったのは小さい頃に小太郎と一緒に入って後ろから抱きしめてくれたのが好きで。もう一回嬉しかったのを体験したかったから、です。恋人になったら出来るかなって……だめ?」

「――っ!」

 首を傾げられるながら聞かれると嬉しくなってしまう。

「いいよ」

「――っ! ありがとうお願いします」

 再び湯に浸かり日和が俺の前にしゃがみ込んできた。

「じゃあお願いします」

「わかった…」

 俺は日和のお腹の方に手を当てて滑らないようにしっかりと抑えた。

 柔らかい……。

 水の中に餅を触っているかのような感覚で好きだった。

「小太郎……心臓が鳴っぱなしで落ち付かないから支えて欲しい」

「……わかった」

 お腹から片方日和の胸を優しく当てた。

「……」

「……」

 自分の鼓動とは別に微かに日和の心音が伝わってくる。

「やっぱり嬉しい。こうやってくれたの好きで安心出来る」

「日和って結構甘えん坊?」

「そうだね。小太郎に対して沢山甘える方かも。それと同じように小太郎のこと甘えさせるの好きだから甘えさせてね」

 膝枕とかしてくれるとかかな……。

「色々とお願いします」

「はい……」

 ……日和を抱きしめてる数十分。心臓がバックンバックン鳴り響いていた。

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