SNOW DOME【BL】

蒼(あおい)

SNOW DOME

―季節、冬。

―蒼汰の家。インターホンが鳴り、雪斗が訪れる。




雪斗:こんにちは。

蒼汰:おう。久し振りだな、ゆき。

雪斗:そうですね。お久し振りです。また、しばらくお世話になります。

蒼汰:あぁ、それは全然構わないよ。自分の家だと思ってくれていいからさ。

雪斗:はい。ありがとうございます。



蒼汰(М):家が隣同士という事もあり、小さい頃から家族ぐるみで、ゆきとは、よく遊んでいた。

蒼汰(М):ゆきの両親は、仕事の関係で家を長期間空けてしまう事も多く、その間、俺の家で過ごす。という事がよくあった。

蒼汰(М):今回も、遠方への出張らしく、俺の家を訪れて来た。



蒼汰:しかし、お前の所の両親も大変だな。仕事とはいえ、出張とか単身赴任とか結構してるよな。

雪斗:そうですね。家族揃って会話したり、食事をするって事も、俺が高校に入ってから、更に減りましたし。

蒼汰:…ん?ゆき、お前、今いくつだ?

雪斗:17です。

蒼汰:あぁ~。もう、そんな歳かぁ~。そうだよなぁ、俺と…8つ違うんだったっけか。

雪斗:じゃあ…蒼汰さん、今25?

蒼汰:まだ、誕生日来てねーから24だけど。

雪斗:あ、そっか。蒼汰さんの誕生日、クリスマスですもんね。

蒼汰:そうなのよ。ガキの頃は、誕生日ケーキとクリスマスケーキを一緒にされて、駄々こねてた時期が、今は懐かしいよ。

雪斗:あははは。確かに。それは、悲しくなりますね。…今は、別々でケーキ買ってるんですか?

蒼汰:うーん…いや、1個だな。

雪斗:え?どうして?

蒼汰:一人の男が、2個もケーキ買って食うって、なんか悲しくない?それに、量的にもさすがにキツイわ。胸焼けする。

雪斗:胸焼けって…そのセリフ言うの、まだ早過ぎません?

蒼汰:覚えとけ、ゆき。二十歳(はたち)を過ぎると、一気に老けるぞ。色んなものが、あちこちと。

雪斗:(小声で)オッサンくさいな…。

蒼汰:むむっ!聞こえたぞ?!ゆきにだけは言われたくないな!なんか傷つく!!

雪斗:その言い方、子供っぽいですけど。(笑)

蒼汰:俺は!ゆきの前では、いつまでも格好良くて、頼りになるお兄さんでいたいの!!

雪斗:そんな事言われても…今の状況、俺には、大人の皮を被った子供に見えます。(笑)

蒼汰:何だよ!!いっちょ前に大人ぶりやがって!…こうなったら、ゆきの大人ベール剥がしてやる!このこのー!



―蒼汰、雪斗の頭をわしゃわしゃと撫で回す。



雪斗:え?!ちょっ…ちょっと!やめて下さいって!

蒼汰:大人ベールを脱ぐまで続けてやる。さぁ、観念して早く脱ぎなさーい!



―蒼汰、雪斗をくすぐり始める。



雪斗:ちょ…あはっ……それは、反則…!?あははは!あははは!やめ、やめて…!

蒼汰:嫌だね。やめない。

雪斗:も、もぅ…!!……やめてってば!…そうちゃん!!!………あ、

蒼汰:ふふっ。…やっと、ゆきらしくなった…かな?

雪斗:……この歳にもなって、そうちゃんって呼ぶの、恥ずかしいじゃん…。俺、高2だよ?!…そっちだって、呼ばれて恥ずかしくないの?

蒼汰:うーん…まぁ、照れくささはあるが、嬉しいよ?そう呼べるくらい、ゆきが俺に気を許してるんだなって感じがするからさ。

雪斗:………。

蒼汰:今は、俺とゆきだけなんだから。その時だけでも、そう呼んでくれよ。昔みたいに。…な?

雪斗:………。二人の時だけですよ…?

蒼汰:分かったよ。ったく、素直じゃねーな。

雪斗:余計なお世話です!






―数日後。夕方。

―蒼汰、雪斗、商店街。買い物中。






蒼汰:後は…卵と、ほうれん草と…なめ茸かな?

雪斗:今日の晩御飯のメニューは何です?

蒼汰:皆大好き!豚の角煮と、ほうれん草のなめ茸和え。

雪斗:豚のバラ肉と肩ロースのブロック肉、両方買ってましたけど?

蒼汰:俺の胃もたれが心配だから、角煮には両方入れる。

雪斗:いつも両方使ってるんですか?

蒼汰:いや、いつもは肩ロースだけだな。今回はゆきもいるし、食べ盛りな学生にはガッツリいきたいだろ?

雪斗:別に、気にしなくても良かったのに…。

蒼汰:俺がそうしたいから、それでいいんだよ。

雪斗:…ありがとうございます。

蒼汰:それと、角煮には煮卵がつきます。

雪斗:うわぁ…美味しそう。

蒼汰:美味いぞ。俺の得意料理だからな!

雪斗:蒼汰さんって、前から料理してましたっけ?

蒼汰:いや、料理するようになったのは、結構最近かな?前は、母さんが作ってるのを手伝うくらいだったから。

雪斗:そうなんだ。

蒼汰:そ。俺の両親、結構、楽天的っていうか、何でも自分でやってみないと気がすまない性格だっただろ?

雪斗:そうでしたね。

蒼汰:それ見て育ってるから、別に嫌いじゃないんだよね。

雪斗:男性で料理好きって、ポイント高いんじゃないですか?

蒼汰:…?何のポイントだよ?

雪斗:好感度。モテたんじゃないですか?

蒼汰:それでモテてたら苦労しねーよ。

雪斗:モテなかったんですか?

蒼汰:グサッと刺さるような言葉を、ストレートに言うんじゃないよ。…モテた事なんてねーよ。残念ながらな。

雪斗:そうなんだ…。

蒼汰:っていうか、何で戻ってんだよ。

雪斗:…?何がですか?

蒼汰:呼び方。それに、ちょいちょい敬語だし。

雪斗:二人の時だけって言ったでしょう?それに、ここ外ですよ?言えるわけないでしょう。あと、敬語は学校で癖ついちゃってるんで。慣れて下さい。

蒼汰:えぇー…ゆきと距離を感じる…。

雪斗:…蒼汰さん、時々子供っぽくなりますよね。可愛いですけど。

蒼汰:どこがだよ。

雪斗:そういう所。子供っぽいって言われて、ムスッとしちゃう所とか。

蒼汰:ムスッとなんかしてねーし。

雪斗:してますよ。(笑)



雪斗(М):物心ついた時からの付き合いで、本当の兄のように慕って、憧れていた。

雪斗(М):時々、子供っぽくなる所は昔も、今も変わらなくて。だからこそ、親しみやすかったのかもしれない。

雪斗(М):久し振りに会ったそうちゃんは、一段と大人の男性になっていて。

雪斗(М):…異性と付き合っていない事を知って、ホッとしてしまったのは、この関係がなくなってしまう…。

雪斗(М):そう思ったからなのかも、しれない…。






―蒼汰、雪斗、蒼汰の家。

―蒼汰、入浴中。雪斗、脱衣場にタオルを持って来る。






雪斗:そうちゃん、タオル、ここに置いとくよ。

蒼汰:おう。サンキュー。

雪斗:洗濯は?もう回した方がいい?

蒼汰:ん…?ゆき、もう風呂入ったっけ?

雪斗:いや、まだだけど…。

蒼汰:じゃあ、ゆきが入った後に回せばいいだろ。二度手間になるし。

雪斗:そ、そうだね。

蒼汰:…なんなら、一緒に入るか?

雪斗:…!?じょ、冗談やめてよ!もうそんな歳じゃないし!…いつの話してるんだよ?!

蒼汰:あはは!ごめんごめん。そんなに慌てんなよ。冗談だって。

雪斗:まったく……。



―蒼汰、浴室から出てくる。



蒼汰:もしかして、本気にしてた?

雪斗:ぅわあ!?

蒼汰:そんな驚くことないだろ。こっちがビビったわ。

雪斗:そうちゃんが、急に風呂から上がってくるからだろ?!もう…。

蒼汰:別に、男同士だし裸見ても特に何もないだろ?

雪斗:そ、そう、だけど…。

蒼汰:…?

雪斗:と…とにかく!早く体拭いて!風邪ひくよ!はい、タオル!



―雪斗、動揺しながら脱衣場から離れる。



蒼汰:あ、お、おい!ゆき!……どうしたんだ?あいつ?

雪斗:はぁ、はぁ、はぁ……。どうしたんだろう、俺。なんか変だ……。



蒼汰(М):この頃から、ゆきの様子がおかしくなり始めたように思えた。

蒼汰(М):普段と変わらない日を過ごしているはずなのに、どこか距離を感じるような、ぎこちないような…。

蒼汰(М):目が合ったかと思うと、気まずそうに視線が逸らされる…。

蒼汰(М):それが何日も続いていた。






―クリスマスイヴ。

―蒼汰の家。リビング。






蒼汰:はぁ~早いなぁ。明日、クリスマスかぁ。

雪斗:そうちゃんの誕生日の日でもあるけどね。

蒼汰:また、一つ歳とるのかぁ~…実感わかねーなぁ。

雪斗:今年はどうするの?ケーキ。

蒼汰:うーん、どうすっかな…。今年はゆきもいるし、2個買うか?

雪斗:いいよ別に気にしなくても。…あ、それか、普段より少し大きめのサイズ買うとか?

蒼汰:あ~それもアリか…そうするかな。



―少しの間―



雪斗:…そうちゃんはさ、何か欲しい物とかないの?

蒼汰:ん?なんだ急に。

雪斗:あ…いや、誕生日でもあるし、クリスマス…だからさ。何かないのかなぁって。

蒼汰:うーん…そう言われてもなぁ。急には出てこないって。

雪斗:そう……。

蒼汰:……ゆき、なんか最近、変じゃないか?

雪斗:…変って?

蒼汰:うまく言えねーんだけどさ、こう…前よりぎこちないというか、何か隠してるような…そんな感じがする。

雪斗:…き、気のせいじゃない?そうちゃん、最近、仕事忙しかったみたいだし、疲れてるんだよ。きっと。

蒼汰:にしても、なんとなく、ゆきと距離を感じるぞ?

雪斗:………。

蒼汰:…俺、ゆきに何かしたか?

雪斗:何もしてないよ。気のせいだって。

蒼汰:そうか?

雪斗:そうだよ。…ほら、そろそろ晩御飯の準備しなきゃ!

蒼汰:お、おう…。

雪斗:………。

蒼汰:……ゆき、

雪斗:お、俺…先に風呂に入ってくる!

蒼汰:あ、あぁ…。



雪斗(М):最近、思うように言葉が出せない。

雪斗(М):一緒に居て嬉しいはずなのに、胸の下あたりがギューっと締めつけられる様に苦しくなったり、

雪斗(М):急に泣きたくなるような感じがしたり…。

雪斗(М):そうちゃんに、『何か隠してる』って言われた時、正直、ドキッとした。

雪斗(М):俺の『何か』が、バレてしまったんじゃないかって…。





―クリスマス。

―蒼汰の家。リビング。






雪斗:そうちゃん、誕生日おめでとう!

蒼汰:ありがとう、ゆき。

雪斗:本当は、プレゼントも用意したかったのに、そうちゃん、結局なんだろうな?で、終わるんだもん。

蒼汰:そう言われてもさ、歳取ると物欲もなくなるもんよ?意外と。

雪斗:そういう考え方が、もう、おじいちゃんじゃん…。

蒼汰:ジジイ言うなよ!悲しくなる…!

雪斗:ふふっ、後ででもいいから、ちゃんと考えて。

蒼汰:分かったよ…。



―少しの間―



蒼汰:そういえばさ…

雪斗:…?

蒼汰:ゆきは、誕生日の日、何か貰ったのか?両親に。

雪斗:あぁ。…いや、貰ってないよ。その日、母さんも、父さんも仕事で、夜遅くに帰って来てたからさ。

蒼汰:え?って事は、誕生日らしい事してないって事?!

雪斗:そうなるね。まぁ、慣れちゃったし。別に気にしてないよ。

蒼汰:そういうのは、慣れちゃいかんだろ。我儘言ったり、甘えたりしないと。まだ学生なんだし。

雪斗:そんな事言われてもなぁ…。

蒼汰:………よし!決めた!

雪斗:何を?

蒼汰:俺が欲しいもの。いや、したい事かな?

雪斗:え?何?

蒼汰:ゆきが欲しいものを、俺がプレゼントする!

雪斗:はっ?!…え?!何でそうなるの?!おかしくない?!

蒼汰:俺がそうしたいから、それでいいの!欲しいものでも、ゆきが好きなものを言ってくれ。

雪斗:………。

蒼汰:甘えられる時に、ちゃんと甘えておけ。何でもしてやるから。

雪斗:………。

雪斗:本当に?本当に、何でもしてくれるの…?

蒼汰:あぁ。

雪斗:じゃあ、……が、欲しい……。

蒼汰:…ん?なんて?

雪斗:……そうちゃんが欲しい!

蒼汰:…?俺が、欲しい…?…どういう事だ?

雪斗:俺の恋人として、そうちゃんが欲しいの…!!

蒼汰:…は?……っん……!



―雪斗、蒼汰の身体を引き寄せ、キスをする。



蒼汰:……!?……んっ…ゆ、ゆき…?!

雪斗:…っはぁ、………こうなるって、分かってたんだけどな…。



―雪斗、少し涙を浮かべ、部屋から出ていく。



雪斗:……ごめんね、そうちゃん。

蒼汰:…っ、ゆき…!!






蒼汰(М):突然の事で、何が何だか分からなくなってしまっていた。

蒼汰(М):俺の事が欲しいと言い放った後、気づけば俺は、ゆきと唇を交わしていた。

蒼汰(М):つまりは、そういう事なんだろうな。……ゆきは、俺の事が好きだと。

蒼汰(М):お兄さんとか、友人としてではなく、……恋人として。

蒼汰(М):あれは、本気の眼だった。ゆきのあんな表情、今まで見た事がなかった。


蒼汰(М):部屋を出る前の、悲しげなゆきの顔が、頭から離れない…。

蒼汰(М):ゆきの心を、不意にも傷つけてしまったかのように感じて…。

蒼汰(М):あんな顔をさせてしまった、俺自身に、猛烈に腹が立った。


蒼汰(М):ゆきの本気に、俺も本気で返さなければ……!






雪斗(М):とうとう、やってしまった…と思った。

雪斗(М):いつか暴走してしまうんじゃないかと…ずっと隠さなければと、思っていたのに…。抑えきれなかった。

雪斗(М):甘えてもいいって言われても、その甘え方が、俺には分からない。

雪斗(М):本来、甘えるべき両親にすら、俺は甘えた事がない…。だから、感情のままに暴走して、あんな事をしてしまったのだろう。

雪斗(М):どんな顔をして、そうちゃんに会えばいいのか、もう、分からない…。

雪斗(М):俺はこの気持ちからも、この場からも、逃げるようにして、走った…。


雪斗(М):そして、隠れるように、俺の家へと駆け込んだ……。






―雪斗の家。

―雪斗の部屋に、明かりが付いている。

―蒼汰、家を出て、隣の雪斗の家に明かりが付いている事に気づく。






蒼汰:ゆき…何処に行った?

蒼汰:……ん?ゆきの家に明かり?部屋に居るのか…?



―少しの間―



―雪斗、部屋のベッドの上で、身体を抱え込むようにして俯いている。




雪斗:はぁ…どうしよう。もう、顔合わせられないよ…。

蒼汰:そんな事いうなよな。寂しくなるだろ。

雪斗:…?!そ、そうちゃん…!な…なんで、

蒼汰:いきなり出て行っちまったからな。そりゃ心配するだろ。まぁ、ゆきの家に居たから正直、ほっとしたけどな。

雪斗:………。

蒼汰:…隣、座ってもいいか?

雪斗:…うん。



―蒼汰、雪斗の隣に腰掛ける。



蒼汰:…さっきの、事…だけどさ。その…本音言えば、驚いた。

雪斗:ごめん…。

蒼汰:謝るなよ。ゆきは、本気……なんだろ?その、俺の事が欲しいって…恋愛感情としての、好き……なんだよな?

雪斗:……うん。…そう、だよ。

蒼汰:いつから?

雪斗:分かんない。気づいたら、そういう事を意識するようになっちゃってさ…。

蒼汰:うん。

雪斗:俺だって、最初は憧れとか、そういう感じからの好きなのかなって、思ってたんだよ…。でも…

蒼汰:…でも?

雪斗:でも…一緒に居て、嬉しいはずなのに、急に胸が苦しくなったり、他愛もない事を話して笑ったりして、嬉しいはずなのに、泣きたくなる様な感覚になったり…。

雪斗:俺が俺じゃなくなるみたいで、なんだか、怖くて…。でも、好きっていう感情だけがどんどん増えていって、抑えられなくなって……

雪斗:それで、気づいたら…そうちゃんに、キス…してた……。

蒼汰:そうか…。気づいてやれなくて、ごめんな。

雪斗:そうちゃんが謝る事じゃないよ。悪いのは、俺、だから…。



―少しの間―



蒼汰:…俺の話も、聞いてくれるか?

雪斗:そうちゃんの…?

蒼汰:話って言っても、大した事じゃないんだけどさ。

雪斗:…うん。

蒼汰:子供の頃から、家が隣同士っていうのもあって、昔から家族ぐるみで、近場のショッピングモールとか出掛けたり、親が仕事で居ない時は、よく二人で遊んでたよな。

雪斗:…うん。そうだね。

蒼汰:お互い一人っ子でさ。本当の兄弟だったら、こんな感じなのかなって、思った事もあったんだよ。

蒼汰:ゆきの事も、俺の弟…みたいな感じで、あの頃は一緒に過ごしてたんだ。

雪斗:そう、だったんだ…。

蒼汰:それが今じゃ、こんなに立派になってさ。…大人になったなぁって、しみじみ思ったわけよ。

雪斗:そんなこと、ないって…。

蒼汰:そんなゆきのさ……あんな真剣な顔、間近で初めて見て…ちょっと、考えさせられたっていうかさ。

蒼汰:俺も、ゆきに本気で返さないとな…って。

雪斗:………。

蒼汰:ゆきの事は、好きだ。けど、それは恋愛感情としての「好き」じゃない。そういう風には見てなかったからな。

雪斗:…うん。分かってる…。

蒼汰:だから、その……時間をくれないか?

雪斗:…?それって、どういう?

蒼汰:ゆきの気持ちを踏まえた上で、俺自身も気持ちの整理をしたい、というか…色々考える時間が欲しい。

蒼汰:恋愛として、ゆきに「好き」って、言えるかどうか。

雪斗:…俺と付き合ってくれるか、考えてくれる…って事?

蒼汰:…まぁ、そうだな。

雪斗:そうちゃんが考えてる間も、俺は好きって気持ちは変わらないし、そうちゃんに好きになって欲しくて、また…キスとか、するかもしれないよ?

蒼汰:うん。

雪斗:暴走して、それ以上の事…したく、なる…かも、しれないし……。

蒼汰:それを俺が許容できるかどうかだな。どうなるかも、うまく答えられねーや。

雪斗:………。

蒼汰:うーん……3年!

雪斗:…?3年?

蒼汰:3年経ったら、ゆきは二十歳(はたち)になるだろ?れっきとした、大人になるわけだ。

雪斗:うん。

蒼汰:それでも、ゆきの気持ちが変わらないなら……ちゃんと、付き合おう。

雪斗:……!本当?!

蒼汰:あぁ。…それに、

雪斗:…?

蒼汰:今の年齢で、それこそ、ゆきに手出しちまったら、捕まっちまうしな。俺。

雪斗:……あ、

蒼汰:ぷ…あっはははは!

雪斗:笑わないでよ!俺、いっぱいいっぱいだったんだから!

蒼汰:分かってるよ。

雪斗:もう…。

蒼汰:…でも、これくらいなら、許されるか……

雪斗:何が……んっ………



―蒼汰、雪斗にキスをする。



雪斗:…そうちゃ、ん……俺…

蒼汰:……そんな顔もするんだな。…かわいい。

雪斗:…!?か、かわいいって言われても、嬉しく、ないよ…。

蒼汰:ゆきの色んな初めての顔が見られそうだな。

雪斗:…!!でも、そうちゃんの初めてでもあるでしょ!?

蒼汰:そうなるな。こういう事、した事ねーもん。

雪斗:本当の初めては、俺が貰うからね…!!

蒼汰:…あ、俺、そっち?

雪斗:3年後、覚悟しておいてね……?

蒼汰:マジか……。






―3年後。

―季節、冬。雪斗の家。

―蒼汰、雪斗、雪斗の部屋にて。






蒼汰:3年とは言ったけどさ…

雪斗:…うん?何?

蒼汰:こんなすぐにしなくても…

雪斗:だって、もう俺、二十歳になったよ?

蒼汰:…うん。そうだな。今日で、二十歳だな。

雪斗:俺が、大人になったら、そうちゃんに何しても良いんでしょ?

蒼汰:そういう風には言ってねーぞ?!

雪斗:でも、そういう事でしょ?

蒼汰:いや…あのな?

雪斗:…俺、そうちゃんに好きって伝えるのがキスだけって…結構、我慢してたんだよ?

蒼汰:それは…

雪斗:それに、今日は、俺の誕生日でもあるんだし。

蒼汰:うぅ……

雪斗:誕生日の日くらい、我儘言ったり、甘えても、いいんでしょ…?

蒼汰:……っ、ゆき…大人になって、色気増してねーか…?

雪斗:好きな人を前にしてるんだから……興奮するのは当たり前でしょ?…やめろって言っても、今日は、抑えられないから……ね?

蒼汰:ゆきが、こわい…。

雪斗:ふふっ……そうちゃん。

蒼汰:…んぁ?

雪斗:好きだよ。

蒼汰:………。俺も、…ゆきが好きだよ。






蒼汰(М):ゆっくりと、静かに舞い落ちる雪の中

雪斗(М):ぎこちなく、少しずつ、想いも降りつのっていく

蒼汰(М):過去、現在、未来へと時を紡ぐように

雪斗(М):永遠の今を、透明なガラスに封じ込めて

蒼汰(М):お互いの色を重ね、輝かせていこう

雪斗(М):スノードームに、二人だけの想い出を―




― fin. ―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SNOW DOME【BL】 蒼(あおい) @aoi_voice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ