異世界自衛隊モンスター討伐~害獣駆除任務ニ出動ス~
葛城マサカズ
第1話 戦闘開始(1)
「隊長、警戒部隊がバイコーンがが接近していると報せました」
仮眠をしていた大野淳一等陸尉は、副官の西田大介三等陸尉の報告で起こされた。
「来たか。戦闘配置だ」
ぼやける頭で大野は指示を出しながら起きあがる。
ここは陸上自衛隊の天幕の中だ。
格好は緑の戦闘服で、頭に略帽を被り指揮所の天幕へ入る。
無線やPCに向かい状況を報せ、各部隊への伝達をする隊員たち
地図を机に広げ、これから起こる状況を考えているであろう、作戦運用を担当する幕僚である吉川二等陸尉
ホワイトボードに集まった情報を確認している、情報担当の飯島二等陸尉
指揮所内を見回し、隊員達がいつもどおりに動いているか。
幕僚たちは何をしているかを見守る部隊副隊長であり、幕僚長を兼務する江守二等陸尉
ここだけ見ると、いつもの演習と変わらない光景だ。
「隊長入ります」
西田がそう言うや江守たち幕僚は大野に敬礼する。
「隊長、部隊は戦闘配置に就いています」
江守がまず報告した。
「目標であるバイコーンはCラインまで前進中です」
飯島がバイコーンの位置を報告する。
「隊長、特科は使わないんですね?」
吉川が尋ねる。
155ミリ榴弾砲を装備する特科は射撃させない事を吉川は再確認している。
「今回は使わない。見学者へ直に、倒すところを見せたいからな」
「分かりました」
大野の意向を聞いて吉川は納得する。
「Fラインで戦闘開始、MCVで攻撃せよ」
大野は次いで作戦の指示を出す。
自衛隊の陣地の目前までバイコーンを引き寄せ、MCVこと機動戦闘車で攻撃すると。
「見学者はどうしている?」
大野は尋ねる。
「見学席に森下三尉と一緒に居ます」
「準備完了だな」
飯島の返答に大野は作戦ができる状況が整った分かった。
「バイコーンはあと、どのぐらいでFラインに着く?」
大野は吉川へ尋ねる。
「あと二〇分です」
「見学者に挨拶して来る」
大野は戦闘開始までの少しの時間、大野は天幕を出て見学者へ挨拶に向かう。
天幕の外は奥に縦断する山脈が延び、木々が深く林立する森も山脈の麓で広がっている。
自衛隊の陣地はその森とは距離を離れた草原の中にある。
指揮所を中心に塹壕が囲う形で掘られ、塹壕の内側に天幕やコンテナが置かれ、宿営地も作られている。
宿営地であり、特科の155ミリ榴弾砲の射撃陣地も置かれている。
まさに砦と言える。
そんな自衛隊の砦は陣地に銃を持った隊員達が配置に就き、四方を警戒している。
見学席は砦の北側、山脈と森に面した方向にある。
駐屯地の記念式典で来賓席で雛壇の台を利用して、見学席が作られていた。
そこにはパイプ椅子に座る七人の見学者が居る。
三段の席で一番上はゆったりとしたチュニックとジャケットを来た老人が座り、右隣では従者らしい男が立っている。
二段目は牧師の格好をした二人の男が座っている。
一番下の三段目は三人のチュニクを着た簡素な格好の男達が座っている。
一段目の老人はこの地域を治める領主だ。
二段目はこの地域で布教活動を行う教会の司祭と修道士
三段目は自衛隊の作戦地域となる地域の村の村長達だ。
これが演習ではない、ましてやここが日本ではないと実感する。
どう見ても中世ヨーロッパの住人達が客人としてパイプ椅子に座っているのは何度も見ても違和感しかない。
「ソルマルク様、今日はよく来てくださいました」
大野はまず領主へ挨拶をする。
ソルマルクは不機嫌な顔で大野を見る。
「オーノとやら、この椅子はどうにかならんか?座り心地が悪いではないか」
ソルマルクは椅子の交換を求めた。やはり高貴なる人にはパイプ椅子は合わないようだ。
「分かりました。交換させますので」
大野は上官に言われる以上に腰を低くして答えた。
いくら、この国や地域の住民の為に自衛隊が来ているとはいえ、領主であるソルマルクの土地に砦を築いて戦闘をするのだ。
腰を低くせねばならない。
「あなた達が悪魔の使いであるとか、悪い噂があります。今日はそれを見定めさせて頂く」
司祭からは冷たく言われる。
二一世紀の日本から来た日本人は異質に見えるのは仕方がない。
だから悪魔であるとか、怪しまれるのも仕方がない。
その疑いを晴らすにしても、文化や価値観が違い過ぎる。時間がかかりそうだ。
大野は司祭と修道士へ、にこやかに敵意無しと言う姿勢を見せるしか無かった。
「本当に頼みます。モンスターには何度も村を荒らされているんだ」
村長達はモンスターに挑む自衛隊を歓迎していた。
昔からモンスターの存在は頭痛の種だった。
耕した畑と作物を荒らされ、家畜の牛や豚を食われ、家々を潰された。
領主は配下の騎士や、時に傭兵を雇いモンスターの駆除をしたものの成功する時は少ない。
だから住民代表である村長達は自衛隊に期待しているのだ。
「どうか御安心を、今からモンスターを退治してご覧に入れます」
大野が自信を持ってそう言うと、村長達から尊敬の眼差しを受けた。
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