天に舞う乙女

如月姫蝶

天に舞う乙女

「将来」と冗談めかして口にした途端に影が長く伸びゆく


君が投げたジージャン抱いた瞬間に それが無双の羽衣と知る


川遊び 母が仕掛ける無理心中 助けられるまで 儀式のように


ずぶ濡れの女は 助けし君のこと 面罵しながら安堵してゆく


川縁の街では容易く流されゆく なんでもかんでもよくあることと


君想う イマジナリーな装備なり エクスカリバー・羽衣・赤い靴


幼き日 双子が君を挟み撃ち 川原で川の字になるまで遊んだ


君にジャッジ委ねし姉妹の背比べは きのこたけのこ? どんぐりなのか?


この春も川原の桜が咲いたこと喜べるほど年老いてない


ホームレスの今年二つめの亡骸に「まだ少ないな」と微笑む古老


星巡る空へ伸身宙返り コペルニクス的交通事故よ


医者と死者は等しく白く装うも のたうち回る我は血の色


「生きてくれ」と ひしゃげた我に君は乞い 恋の麻酔がハートに染み入る


姉に授く 称号「ヤングケアラー」を 我が玉座は介護ベッドなるぞ


「東京へ一緒に」と君を口説く姉よ 壁に耳あり ベッドに我あり


医者になりみんなを助けたいんだと 我を見ながら姉を抱く君


信じたい 信じられない 狭間にて 鏡を割るごとく我をぶつ姉


生まるとは 堕つということ 魂が 死して天へと昇るのならば


究極の狡い女に我はなる 生きても死んでも誰かが喜ぶ


移ろう身なれど 願いはダイアモンド 夢幻泡影 無限抱擁

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天に舞う乙女 如月姫蝶 @k-kiss

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