貧乳金髪縦ロールで年上負け癖ツンツンお嬢様が嫌いな奴っておる?

HIkosiki with ふたつぅ。

第1話

「勝ちましたわ~!!!」


 ホイッスルが鳴ると同時に、会場全体の歓声の中でも一際目立つ美しく力強い勝利の雄叫び?が響き渡った。


『おいおい、次の競技で白組追い越せるんじゃね?』


『マジ?!次って騎馬戦だよな!勝ったらもうほぼ優勝じゃん!!』


 学年別の綱引き競技の勝敗が決し、最後の3年生同士の戦いで赤組が勝利した事で赤い鉢巻を身に着けた若人達が活気づく。


「まあ、綱引きはほぼ勝ちを確定していました。何故ならあの触手先輩がいますからね!」


 周りの興奮に少し影響された速い口調で、赤組の観戦席で隣同士である男子生徒が本日初めて声を発した。


「お、おうん。でも白組の方も、もじゃ先輩の魔術で綱から根を這わせて固定する作戦は最強だとは思ったけどね」


「私も一瞬そう思いましたが、まあ所詮は高等学校レベルですし固定するまでの速度が遅すぎます。そもそもですね……」


 こちらを話し相手だと定めたのか、少し興奮気味の男子生徒はこちらに振り向いて術式の特性についての熱弁を振るう。


 会場では、綱引きをしたとは思えない程抉れたグラウンドの整備を係りの教員が行いつつ、次の競技の段取りが各所で行われていた。


 正直、高校生にもなって綱引きごときで大盛り上がりするか?と思ったが、実際行われている競技を見ると、自称冷静沈着な私でも今まで話すことが無かった男子生徒と自然?に話せるぐらいには興奮していた。


 だって、綱引きなのに手ではなく、魔法や術式で綱を引っ張り合えって最初聞いたとき「そんなの無理じゃん?」てなったけど、1年生同士で練習した時にグダグダで「やっぱ無理じゃん?」ってなったけど、2年生の先輩達の練習を見て「ナニコレ現代アートですか?」ってなったけど、3年生となると格が違った。


「でも、2年と3年でこんなにも違うんだね。3年生の練習見れてなかったから迫力が凄いって思った」


「それはもう3年生ともなれば昇級や士官も目の前にありますし、1年生からの研鑽が凝縮されている訳ですから、この位はしてもらわないと逆に不安になります。特に私が」


「あっはは。そうだね!」


 一応、場が盛り下がらないように大げさに笑った。これ位の気を遣う程度にはこの男子生徒には良い印象を持っている自分に気がついた。


「そろそろ行かないっと!」


 息を吐くと同時に立ち上がる。なぜなら次の騎馬戦の出場選手の一人だからだ。


「騎馬戦出るんですね…。ケガしないように頑張って下さい。なんといっても騎馬戦は全学年合同なんですから」


「うん!頑張るぞ!先生に防御術式張ってもらえるから大きな怪我はしないと思う。絶対勝ってくるから!」


 自分を奮い立たせる為に、少し大げさな振る舞いをする。実際、自分の術式を思う存分出力させる事が出来るこの機会を入学当初から夢見ていた身としては、正に興奮冷めやらぬ出来事がこれから起こるのである。


 簡単な会話で気持ちをリラックス出来た事に気分を良くし、集合場所に向けて歩き出そうと右足の踵が上がる。


「じゃあね」と左手をひらひらとさせて優雅に去ろうとした矢先、男子生徒からあっさりとした思いがけない返答が返ってきた。


「勝てるわけないよ」


 それはもうあっさりと。まるで既に過去の出来事かのような言い草だった。


「何故なら、赤組には負け癖女王がいるからね」


 一瞬、脳ミソが”ピクリ”となったが、まるで聞こえなかったかのように優雅さを保ったまま集合場所へと足を運んだ。

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