第63話 男爵?
今回の件は今後王室の隙を晒す事にも繋がるので、表立って公表されることは無いそうだが、国王陛下は俺にいたく感謝しているらしく真の忠義を持つ者だと絶賛していたらしい。
これについてはかなり疑問が湧いてしまう。
たしかに俺はあの場で咄嗟にアリューレを庇った。
あの時はまさか身体を入れ替えた瞬間に刺されるとは夢にも思わなかったけれど。
だけど陛下については、逃げるよう誘導はしたが、俺がした事といえばそれだけな気がする。
いや、よくよく思い出してみれば王様にタックルをかました気がするし逆に不敬罪にとられても仕方がない状況に陥りかけた。
それがなぜ真の忠義を持つ者という事になっているのか理解が難しい。
このことを深掘りしても藪蛇でいいことはなにもない気がするし、意識が戻ったとはいえ瀕死の重傷には変わりがないので触れないでおこう。
それに痛みがひどく起き上がる事もままならないのでベッドで身動きを取らず、ひたすら寝ていると眠りを邪魔する音がした。
『コンコン』
「は〜い」
「陛下がお越しになりました」
「え!? 陛下ですか!?」
慌てて身体を起こそうとするが痛みで動けない。
「よい、よい、そのまま寝ておいてくれ」
「はっ」
「気がついたと聞いてな。いてもたってもいられずに来させてもらったぞ」
「はっ」
「身体はどうだ。少しは良いのか?」
「はっ」
「此度の事このリチャード、感謝しておる。他の誰も動く事ができなかったあの場で、その方だけが、身を挺して我を護ってくれた。本当ならすぐにでも男爵位を授けたい所だが、此度の事は表にはできないのでな。だが、近いうちに必ず報いるぞ」
「いえ、そのようなお気遣いは不要です。私が勝手にやった事ですから」
「その方どこまでも忠を尽くすのだな。その方がそういうのであればそういう事にしておこう。だが、我は覚えておくからな」
「はっ」
「身体に障ってもいかんな。では、またな。そういえばフェルナンドの娘が泣いて心配しておったぞ。身体が癒えたら会いに行ってやるがよい」
「はっ」
そういうと陛下は部屋を出ていった。
びっくりした〜。
傷を負った状態で国王陛下の相手は荷が重すぎる。
それにしても男爵位って、俺今日準男爵になったばかりなのに、同じ日に陞爵するとか聞いた事がない。いやあれから五日経ってるのか。
いずれにしてもレクスオール戦記でも男爵位に陞爵したのはこのタイミングではなかったはずだ。
そしてこの事に思いが及んだ瞬間俺はとんでもない事に気がついてしまった。
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