第52話 英雄譚?

「ここが王都。さすがに人が多いな」


王都に来るのは元の時代を含めても初めてだが、とにかく家と人の数が多い。

案内されないとすぐに迷子になってしまいそうだ。

王都の着くと、まずヴィレンセ家の屋敷へアリューレ様を送り届けたが、とにかく大きい。レクスオールの屋敷とは比べ物にならない大きさだ。

ここが王都でなければ城と言われれば納得してしまいそうになる大きさだ。

俺達は一旦アリューレ様と別れ、ギルバートとユンカーの三人で王城へと向かった。

入り口の衛兵に家名と事情を話し取り次いでもらい、しばらく待たされたあと、王城内の一室へと案内された。


「ラティス・レクスオールと申します」

「これはこれは、若き英雄殿ですか。内務官のブルックです。この度の戦の英雄譚聞き及んでおりますぞ。このところ城内はラティス殿の話しで持ちきりです」


部屋で応対してくれたブルックさんが挨拶をするなり突然とんでもない事を言ってきた。

英雄譚!?

なんの事!?

しかも王城内で俺の噂で持ちきりってどういう事!?


「ブルック様、それはどういう……」

「両親の不慮の死により家督を継いだ若者が、数十倍の数を誇るリクエの軍を殲滅し、百計を用いベリンガムを無傷で落とし、更には寄親たるメルベール男爵の仇を討つ目覚ましい戦功。これを英雄譚と言わずしてなんと言いましょう。既に市中では吟遊詩人が歌を奏でているとも聞いておりますぞ。それに実際お会いしたら噂に違わぬ美丈夫。王宮としても盛大に叙爵パーティを考えておりますので楽しみにしておいてください」


英雄譚とか吟遊詩人の歌とかどうなってるんだ。

確かに言ってる内容は間違いではないが、それにしてもおかしい。

しかも王宮で盛大にパーティってどうなってるんだ。

貴族とはいえ最下級の準男爵になるだけなのに本当にどうなってるんだ。

もしかして誰かが叙爵されるたびにパーティが催されるのか?

いきなりすぎてなにがなんだかよくわからないまま話しは進んでいく。


「叙爵の日とパーティの日取りが決まり次第連絡させてもらいますが、ラティス殿は何処の宿に逗留予定ですか?」

「それがいろいろありましてヴィレンセ侯爵家にお世話になる事になっています」

「ヴィレンセ様のところですか? ラティス殿はヴィレンセ様の派閥でしたかな」

「いえ、実はここに来る前に………」


俺はブルック様にヴィレンセ家に逗留する事になった事の次第を話した。


「おお、なんと。英雄譚に新しいページが加わったのですね。ヴィレンセのアリューレ様は幼い時よりその美貌で有名なお方。そのお方の命を野盗から護るとは、さすがです。これはアリューレ様にもパーティに参加いただかなくてはなりません。早速王宮より使いを出しておきますので」


王宮の人はみんなこうなのかもしれないが、ブルック様はリアクションが大きいというかどこか劇を思わせる立ち居振る舞いで、免疫のないこちらは面食らってしまう。

その後少しお互いの話をして、この日は解放されたので、ヴィレンセ侯爵家へと向かう事にする。

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