第50話 野盗?
ヒヒ〜ィン」
それからしばらく馬を走らせていると、前方を馬車が横切り、その後ろからは複数の馬に乗った人たちがついていっているのが見えたが、馬車の護衛にしてはおかしい。
馬車は闇雲にスピードを上げているように見えるし、護衛なら馬車の前方にもいるはずだが、後方のそれは護衛というよりも馬車を追っているように見える。
「ギルバート、あれって」
「おそらくあの馬車、追われていますな。あの追っている者達の身なりからして野盗の類かもしれません」
野党か。生まれて初めて見るけど、やっぱりこの時代野盗なんかいるのか。物騒極まりないけど、野が馬車を襲うという物語の中の出来事のような非現実的な光景に思考と動きが止まってしまう。
「ラティス様のご命令であれば向かいますが、いかがいたしますか?」
「あ、そうだな。助けにいこう」
「皆のものラティス様の命がくだった。いくぞ〜!」
俺の傍に二人を残して八騎が、先を行く馬車と野盗に向かって駆ける。
一応俺も追いかけるが、当然追いつく事は出来ず、ギルバート達とは距離が開いていく。
「グアッ、お前らなにもんだ! クソッ! 聞いてねえぞ!」
ギルバート達が、野盗の一団と交戦状態に入ったようで、一番後方につけていた男が斬り伏せられ馬から落ちる。
「なんでこんなところに護衛が残ってんだ! ロッド、確認したんだろうが!」
「ハイッ、もちろんです。護衛はさっき倒した四人だけのはず」
「ガハアッ! チクショ〜! こいつらなんなんだ!」
どうやら、野盗は馬車の護衛を倒してここまで追って来たらしいが、野盗とギルバート達では戦いになるはずもなく、あっという間に野盗を斬り伏せ、俺が追いついた時には全て終わっていた。
野盗とはいえ、こんなに簡単に命を失う。
やはりこの時代の命は軽い。
地面に転がる野盗の姿を見て再認識するが、それだけに馬車が野盗追い付かれる前でよかった。
「ラティス様、終わりました」
「さすがだな」
「この程度の野盗ものの数ではございません」
「それより、あの馬車まだ気づかず逃げてるみたいだから声をかけてあげようか」
馬車からは後方の状況を確認する事はできないのだろう。
野盗がいなくなっても馬車は蛇行しながらもまだ逃げていた。
「それでは私が」
ユンカーが馬を走らせて、馬車に声をかけるとようやく馬車はその場へと停止した。
馬車の方へと向かうと中からは二人の女性が周囲を窺いながら降りてきた。
先に降りてきた人は俺より少し年上に見え、おそらく後から降りてきた女性の世話係かなにかという雰囲気だ。後から降りてきた女性は俺と同じか少し年下に見えるが、綺麗にとかれた艶やかな淡い黄金色の長い髪と大きな青い瞳。
その姿を見て一瞬戸惑ってしまった。
今まで見たことないくらい綺麗というかかわいいが、その着ている服や雰囲気は明らかに庶民のそれではない。
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