神夢の手招く方へ

ウェスたん

第1話 プロローグ

 希望は人々を狂わせる。戦争に勝利した者たちはどんなに狂っていただろう。

だから希望は戦争を止めなかった。多くの人が

死んだ。

こんな僕を愛してくれた妻、ユカコ。

訓練から帰ってくるとすぐに飛び付いてくる

唯一の娘、エリ。 


みんな死んだ。


でも僕も殺した。

 僕の殺した人が誰かの最愛の人だったとしても、罪悪感は生まれなかった。

だから家族が死んでも、悲しみや絶望という感情は生まれなかった。

 絶望は人々に選択をさせる。このまま諦めるか、救済を待つか。

僕は諦めようとした。

 自分の死に場所はアパートにした。屋上へ上る階段はそのまま天国への階段だと思うと清々しかった。

屋上から下を眺める。恐怖はない。失うものは後はこの命しかなかった。


飛び降りた。

 爽やかになめらかな空気が横を通り抜ける。風になった気分だ。そして僕はユカコとエリに逢えることを期待しながら目を閉じた。

 

期待は驚きと絶望に変わることを知らぬまま。

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