第10話 クエスト その4 仲間がいる
グルッヘに感謝を伝えた後、教会を後にした俺は、ギルドへ報告に向かいながら、さてどうしたものかと考えていた。
幸いなことに、なっちゃんが転んだ拍子にシカの角が折れたらしく、なっちゃんはその角の一部をしっかりと回収していた。
これを提出すれば、恐らく、シカ退治のクエストは一応成功になるだろう。
まあ、仮にシカが無事だったとしても、そこまで地面に打ち付けられたのであれば、シカだって二度とあの農場に近づこうとは思うまい。
「人生で大切なことは、いつもゲームがおしえてくれるのである」
ふんすと得意げななっちゃん。
実際の所、角を持ってきたのは偉い。あんな目にあって、無報酬どころか前金を取り上げられでもしたらたまらないからな。
「あに」
なっちゃんが頭を突き出してくる。
「はいはい。えらいえらい」
なでなでなでなで。
「……くへへ」
ぐいぐいとオレの手に頭を押し付けてくるなっちゃん。もう良い年だというのに、この辺りは小さなころから変わらない。
……別に嫌なわけではないが。
しかし。だ。
「仲間が要るな」
仮に元の世界へ戻る事を考える場合、この大陸をある程度調べる必要がある。であれば、冒険者としての方が大陸を調べて回る上でも都合が良いだろう。
その為にも、もう一人、出来れば二人ぐらいは仲間が欲しい。この世界に詳しく、かつオレ達と大陸を回っても良いという仲間が。
毎回グルッヘに半殺しリザレクションされるわけにもいかないしな。
「ええ~~……」
手の平の下から不満の声があがる。
「わたし基本的にソロ専なんだけどー……」
なっちゃん友達居なかったもんね……。
「ね、あにと二人で良くない? わたしすごくつよいみたいだし。ね? ねねねのね?」
もちろん、この世界で生きていくにはなっちゃんにある程度――。いや、かなり頼る必要が出てくるだろう。それは、今回の件でも身をもって理解した。
だが、キングオブ人見知りのなっちゃんの事を考慮したとしても、やはり二人だけではすぐに手詰まりになるだろう。
何より、オレ達はこのスラン大陸の事を知らなすぎるのだ。
「なっちゃんも、もう少しオレ以外の人に馴れなさい。グルッヘとオレが話してる時も、全然会話に入ってこないし」
「むりむりかたつむりー。あにを背負ってあそこに運んだだけで立派ご立派だと思うー」
それについてはありがとう。オレ以外の人を頼れたのは確かに偉い。普段のなっちゃんと比べると、本当に良くやってくれた。
「それに、もう一つ。ここで生きていく上で確認しておかないといけない事がある。まあ、それはパスタさんに今回の件をチラつかせて、少し付き合ってもらおう」
「え、鬼畜あにじゃん? くへへ。パスタさん脅迫してあんな事こんな事しようぜぇぇぇ……」
舌なめずりしない。
言い方が悪かった。
パスタさんからのシカ退治(実際はマッシカーンというモンスターだった)の情報が不足だったせいで、半死になったオレの話をしつつ、少し協力してもらいたいことがあるのだ。
……どういい繕ってもイメージ悪いな?
まあ、そんな事しなくてもパスタさんなら協力してくれそうだが。
そうこうしているうちに、ギルドが見えてきた。
――まるで氷山の様に青白い氷漬けにされたギルドの建物が。
……なっちゃんに半壊させられたことといい、あのギルド悪いものでも憑いてるんじゃないか?
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