【テンプレ追放ざまぁ】堅実さが売りの俺が追放されたら勇者パーティにスカウトされた件~今更やりなおしたいと言ってももう遅い~

なつうめ

第1話 勇者行為

「あれ?これは良いマジックアイテムなんじゃないでしょうか?」

 全身を埃まみれにした金髪の少女が高価そうな宝石らしき物を見せびらかすように言ってくる。

 マジックアイテムに造詣の浅い自分は「あぁ」と気のない返事をすることしかできない。

 ここはこの地域の有力者の管理する倉庫。目の前の見栄えの良い剣などで武装した少女とその仲間たち───勇者パーティ───は、その倉庫に無断で押し入り物色───曰く『』───を行っていた。私もその一味として見られることだろう。

「こんな…こんなことが本当に許されるのか…?」

 どうしてこのような行為を行う一団の一味と相成ってしまったのか、気の遠くなる意識を繋ぎ止めながら私、バニシュ・テンプレートはこのような事態に至った経緯を思い返すことにした。


 ───元居たパーティを追放され───追放された経緯は省略するが───冒険者ギルド所属の主にソロで活動を行う冒険者として生計を立てていた自分に転機が訪れたのは追放から二年が経った頃だった。

 追放された、元のパーティに共に所属していた仲間であるヒィル・ベンストンが自分の下へ訪ねてきたのである。

『元のパーティが壊滅した』との凶報を携えて───


 ───そこからが怒涛の展開であったのだ。私は元のパーティに何があったのか、訪ねてきた彼女がどうしたいのかなど考えねばならぬことも、私が動転した気持ちを落ち着けるために必要な時間もいくらでも必要であったのに、『彼女』がやってきたのだ。『勇者』を自称する金髪の少女、アム・ヒロウである。


 曰く、彼女、アム・ヒロウは『勇者』であるという。

 曰く、ヒィルとは私が追放された後のパーティで共に旅をした仲であるという。

 曰く、ヒィルのパーティが壊滅したと聞いて駆けつけたのだという。

 曰く、一人で行く当てがないのなら共に行かないかと提案しに来たのだという。

 曰く、ヒィルの知り合いなら貴方も一緒にどうでしょうか?だそうだ。


 このような提案をしてきた自称勇者アムは長く美しい金髪をたなびかせた少女であった。年齢は恐らく十代の中頃…おそらくは前半であろうと思えた。

 勇者と言えば国中の方々を巡り、その地方の有力者に渡りをつけ、その地で起きている問題の解決と引き換えに金品を得ることを生業としている人間だ───と私は認識している───おおよそ、このような少女の生業になるはずもなく、せいぜい駆け出しの冒険者が勝手に自称しているだけだろうと当たりを付けたのだ。

 で、あれば先達の冒険者たる自分たちが見てみぬふりもできぬだろうと共にパーティに誘われたヒィルとアイコンタクトを取ろうとしたところ、彼女は二つ返事で快諾していた。

 例え自分と協調できなくともそうするという意思だろうか、これは、正直、意外だったのだが反対する理由はないので私も彼女のパーティに参加することを表明したのだった。


 ───思えば、これが間違いであったのかもしれない。

 彼女のパーティは私を入れて4人。

 自称勇者のアム・ヒロウ。長い金髪をなびかせた幼いとすら形容できる少女だ。

 元パーティメンバーであるヒィル・ベンストン、彼女は魔法を駆使して戦う冒険者だ。赤い髪が目立つ。

 肉体労働にはちょっとした自信のある自分ことバニシュ・テンプレート。剣や槍のほか投石やスリングを使う戦士だ。

 そして最後に『勇者の巫女』を自称する黒髪で眼鏡をかけた女、ユウア・スグラ。ヒィルとも面識があり、ヒィル曰く神殿より派遣されたの『勇者の巫女』であるらしい。

 つまりはアムとヒィル二人まとめてこの女に騙されたのでなければアム・ヒロウは本物の勇者である、ということになる。私はにわかには信じられなかったが確たる証拠もなく嫌疑を向ける愚を冒しはしなかった。

 一先ず様子を見、犯罪とおもしき行為を行うようであれば神殿に通報すれば───思えばこれも間違いであったのだ、翌日パーティ結成初日にどのような仕事を受けるのか話し合おうと思えば開口一番アムが宣言したのだ。

「今日はを行います!」

 と。

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