第22話 馬市

 商業ギルドで馬市の開催が明日の西門だと聞いた俺は冒険者ギルドにより、何か鉄級の依頼で簡単なものはないかと見て回った。

 めぼしい依頼は無くなっていたが、新しい常設依頼に鉄級以上と書かれた物はないかと探すと、気になる依頼が新しい常設依頼であった。

 何故、新しいのか分かるかというと、紙が貼られてからそんなに経っていない様に依頼版に貼られた依頼書には穴が無かったからだ。

 通常、常設依頼でも間違えて剥がして受付カウンターに持って行く人が現れるので、古い物程前に貼った時の穴が残っているのだ。


『増えた狼の間引き。

 規定の数に達するまで増えた狼を間引きして下さい。

 報酬は1匹銀貨5枚

 規定外

                    鉄級~ 』


この規定外って何だ?

俺は分からなかったので受付カウンターで聞いてみる事にした。

相変わらずおっさんばかりである。


「常設依頼の増えた狼の間引きの件で質問があるのだが、規定外って何だ?」

「ああ!規定外って言うのはですね、通常は1匹でも2匹でも依頼達成には1件として扱われるんですが、規定外だと1匹で1件2匹だと2件という風に扱われるんです。

 通常、狼は群れをなしていますから報酬の割が渋いのでそのような処置で依頼の危険度と報酬の釣り合いを取っているんです。

あ!狼は狩るので取れるのは毛皮だけと思われがちですが、スラムでの肉の供給に一役買っているので出来れば血抜きをして頂ければ幸いです」

「なるほど。ありがとう」


 1匹1件となれば割に合わない依頼でも話は別だ!俺は今、鉄級で6件依頼を成功させているから極楽鳥を除いて4匹狩れば良いのだろう。

 4匹ならロープがあれば両手で持ち運べるだろうし、何とかいけるか?

 そう思い、俺は西門に向かって行った。

 西門でいつもの手続きをして外に出るといつもの光景じゃ無く、街道脇の至る所に馬がいて人も大勢いた。

 明日の馬市に出る人達だなと思い、街道を通って馬がいない所まで行く。


 馬と人が居なくなれば小マップで狼の成獣4匹の群れで検索したら森にいるとの事だったのでオートナビゲーションに沿って追跡する。

 暫く行くと、狼の姿が遠目に見えたのでここからは気配を消して風下から行動する。

 後5mと言う所で風向きが変わって此方が風上になったので狼に気付かれた!

 逃げ出すなよと思い走り出す。狼も迎撃準備を整えながら此方に向かって吠えてくる。

 跳びかかってきた1頭の狼の首を切り、呆然としていた2頭目の狼の頸動脈を切る。3頭目と4頭目は逃げようとしたが、俺が行き先に先回りしていたので逃げられない事で決心したのか同時に跳びかかってくる。

 跳びかかってくれた方が首を切りやすいので3頭目と4頭目の首をほぼ同時に切る。


 これで4頭の狼の依頼が完了となるだろうと思いつつ、4頭同時に水操作ウォーター・フリーリィで血抜きをする。

 そして血抜きが終わったら2頭ずつ縄でくくり、肩に担いで冒険者ギルドを目指して持って行く。

 西門に着くと狼の匂いがしたのか多少馬が暴れていたが、気にせずいつも通りの手続きをして冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドに着き、買い取り所に向かう。その際、大きなざわめきが聞こえたが無視する。

 買い取り所では職員があんぐりと口を開けて見ていた。買い取り所に狼たちを置くと落ちそうになるので床に置き査定を頼む事になった。


「お前さん、よく4匹も持ってこれたな。普通は1匹だけで他は諦めるか後で取りに行くかしている者なんだが・・・・・・凄いな」

「ロープで2匹でくくれば何とか持ってこれると思ったんでね。実際、持ってこれたし。それより査定は?」

「おお!すまん。査定だが血抜きもされていて極上品だが、狼は血抜きをして状態が良くなってもスラムの人間が食べるから残念ながら買い取り価格に変動しないんだよ。だから、1匹銀貨5枚なので4匹で合計銀貨20枚になる。それで良いかい?」

「しょうが無いか、じゃあそれで。規定外だから4匹で依頼達成4つになるんだよな?」

「知ってやがったか!これが依頼達成のプレートだ!」

 そう言って4つの鉄のプレートを渡してきた。

 それを持って、受付に行き手続きをして貰うと受付人が記帳を始めた。


「おめでとうございます!今回で銅級に上がりました。冒険者プレートを交換するのでお待ち下さい」


 そういって魔道具で銅のプレートに必要事項を刻み込んでいる。しばらくして、銅のプレートになって冒険者プレートが帰って来た。


 これで冒険者のランク上げも終わりだなと思い、しばし感傷にふけった。

 ちなみに冒険者ギルドから出てすぐダニが着いていたらいやなのでクリーンの魔法で綺麗になった。

 島の館でいつもの訓練と練習をした後風呂に入った。衣服はクリーンで綺麗にして宿屋へテレポートした。

 宿に戻り、肉の晩御飯を食べて部屋に行き鍵を掛けて寝間着に着替えて明日の馬市に備えて目覚まし時計を掛けて寝る。


 目覚まし時計の音で目が覚めた。歯と顔を洗い、普段着に着替えて朝食を食べに食堂に行く。

 朝食を食べて、商業ギルドへ行く。


「おはよう御座います。今日の馬市に参加したいのですが如何すれば良いですか?」

「おはよう御座います。馬市ですが、仕切りは私たち商業ギルドがやっていますが主催は領主様なので参加費など入りません。購入する売買契約の時に職員を間に挟んでくれさえすれば大丈夫です。

 これから私も馬市に職員として行くので御一緒しませんか?」

「是非ともお願い致します!」


 そうして、俺は商業ギルドの職員と一緒に馬市に向かう事になった。

 職員さんと話しながら西門を出て、馬市の会場に着く。

 馬市は昨日よりも馬が多く、1000頭程居るのでは無いかと思われる規模だった。

 暫く待つと領主が出てきて何かを言って開催を告げた。

 さて、どの馬からと思い、重種馬を中心に行く事にした。


馬をと色々な性格や能力のある馬が居るのが分かった。

例えば・・・・・・


『雄 性格:怠け者。 賢さは普通、力、早さとも能力は高いが性格が邪魔をして能力を発揮出来ないタイプ。種牡馬としてもそれほど良い馬では無い』

『雌 性格:生真面目。 あまり賢くは無く早さはあるが力強さに欠ける。母体としての能力は普通』

『雄 性格:お調子者 賢いがその賢さの方向性が間違って進んでいる馬。力、早さ共に抜きん出ているが、お調子者の性格で失敗する事が多々あり。種牡馬としては良馬』


・・・・・・等々色々と出てくるのだ。

 美しい重種馬をも駄馬だったり、逆にこの馬はなぁという馬が能力が素晴らしかったりした。


 色々とが、気に入る様な馬は見当たらなかった。朝の8時から昼の3時迄しか開催していないので、今の午後2時というのは不味い状況である!

 そんな中、馬体は普通だが毛に艶が無く汚れているのが芦毛だから余計に目立つ馬がいた。誰も話しかけず、馬の売主の女性は他にも十数頭連れていてこの馬が唯一売れていないのか”この馬いかがですか”と声を張り上げている。

その馬をみる。


『雌 性格:真面目 シャグネル種 この会場に居る馬の中でも特に秀でており賢く、力強く、足が速い。軍馬としての訓練も受けており、爆発音などでも驚かない、母体としての能力は今世紀有数の1頭である。子孫に能力を強化して受け継がせる可能性が高い馬である。 3歳牝馬』


・・・・・・思わず2度見をしてしまった程良い馬だ。交渉するべく売主の女性に話しかける。


「すみません。この馬はどういった馬なのでしょうか?」

「え!この馬の事が聞きたいの?他の馬じゃ無く?」

「ええ。一応どのような馬か聞いておきたいと思いまして」

「この馬は3歳牝馬です。妹が魔法使いでいつも魔法の練習で爆発させていたので爆発音では驚いたりしませんので軍馬としての訓練を一通りしています。もちろん荷馬車を引く馬としての訓練もしています。今、みすぼらしいのはここに来る3日前に雨が降り、雨宿りが出来ずに強硬手段で移動してきた為、他の馬を先に洗って汚れこの子の汚れ等を落とす時間が無くなったからです。

 性格は素直なよい子で力もスピードもあります。値段の方は銀貨5枚でいかがでしょうか?」

「何故、銀貨5枚なんだい?」

「実はこの馬、本当なら生まれるはずじゃ無くて母馬が発情した時に何処かの馬に種付けされて生まれた馬なので種族が分からないのです。私はシャグネル種だと思うのですが下手したら混血の可能性もあるからです。

 ご存じかもしれませんが、混血は嫌われているので・・・・・・」

「そうか、まぁ、混血でもしっかり働いてくれれば良いか。銀貨5枚で購入しよう!」

「ありがとうございます!とってもよい子ですのでかわいがって下さい!」


 その後に商業ギルドの職員を呼んで売買契約を交わす証明人になって貰い支払額の銀貨5枚を渡すと記録を付けられて芦毛の牝馬は俺の物となった。



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