第46回 みんながいる
鎮圧はすぐに終わった。
当然コロロは逮捕されたが、
「コロロ!!」
「た、ただいまユーナ」
数日後には釈放され、家に帰された。
「もう、なにやってるのよ!! 心配したんだから!!」
「ごめん……」
コロロに課された罰は、少しの賠償金のみ。
あまりにも甘すぎる。別に不満なわけではないし、身内贔屓だが、これで済んでよかったとホッとしている。
リューナもコロロを抱きしめる。
「おかえり、コロロ」
「うむ、リューナも、ごめん」
「ケイミスさんは?」
「わからないのだ。どこかへ……」
ユーナが間に入る。
「あんなやつすぐに逮捕されるよ。もう気にしなくていいよ!!」
「……うん」
どこか納得していない、微妙な顔。
コロロにとってケイミスは、お父さんの忠臣。大事な人なのだ。
できれば平和的に解決したいと願っているはずだ。
ノレミュが耳打ちをしてきた。
「シーナはなんて?」
「ケイミスに強要されただけだから、実質無罪だと」
事実そうなのだから、間違ってはいない。
コロロが自分の頭であんなことを思いつくわけがない。
ケイミスの言葉を信じて、担ぎ上げられただけだ。
人を集めて街を占拠こそしたものの、あくまでコロロはみんなの「代表」を務めたのみ。
実際、コロロを含めた逮捕者への取り調べで、彼女はまったく指示を出していないことが判明している。
実質的なリーダーは、ケイミスなのだ。
「他の、逮捕された反乱者たちは、どうなったんですの?」
「奴隷労働者として金の採掘をさせる、らしい」
「まぁ、そうですわよね。下手に処刑すれば余計に反感を買う。市民たちも恐れる。ここは墜ちた身分を受け入れさせ、罰を与えるしかありませんわよね」
「コロロを許すなら、筋を通して他の人も許すべき、だしね」
なんにせよ、事件は一旦落ち着いた。
とはいえ、一旦だ。
他人のスキルをコピーする『
あんなものを放置するわけにはいかない。あらゆる手段を用いて、ケイミスは殺す。
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夜、私はライナの部屋でケイミスとの戦いを振り返っていた。
おそらくいま現在、彼がコピーして使用できるスキルは三つ。
それ以上あるのなら、あのとき発動していたはずだ。
未だ謎が多いスキル。油断はできない。
弱点があるとすれば、重い代償のせいで長時間戦えないこと。
それに、時間操作だけなら私の方が上手く扱えること。
オムニス・ネゴを利用しての戦闘は、中々テクニックが必要なのだ。
何をするつもりで、どれくらい時間を飛ばすのか、飛んだあとどんな状況になっているのか、きちんと把握していないとならないから。
しかしそれだけ上回っていても……。
「新しい戦い方が必要になるかな」
せっかく平和になったのに。
ふと、机の引き出しからライナの日記を取り出す。
読み返す、ライナが生きていた頃を。
あの頃に戻りたい。
「トイレ」
立ち上がり部屋から出ると、ユーナとコロロの寝室から話し声が聞こえてきた。
まだ起きていたのか。
「本当にすまない、ユーナ」
「もういいよ。こうして無事に戻ってきてくれたんだから」
「でも、私、パパ上様のために頑張りたかったのだ」
「わかってる。けどコロロは、クロロスルさんじゃない」
「うん。私、どうすればいいのだろう。お家を復興したい。けど、乱暴なやり方はしたくない。頭を使うのも、苦手だ」
「だからみんながいるんじゃん。リューナに、アオコに、ノレミュに、シーナお姉様もいる。難しいことは、きっと相談に乗ってくれる」
そうだ。コロロはひとりじゃない。
救いの手ならいくらでも差し出して貰えるんだ。
「それに、私も……私も頭は悪いけど、コロロが辛いとき、ぎゅっと抱きしめてあげられる」
「ユーナ……」
「ずっと一緒にいよう。それで、もう少しいろんなこと勉強したら、子供も、作ろう」
「……うん。ありがとうユーナ。大好きだ」
これ以上の盗み聞きはよくないな。
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翌日、議会でシーナが告げる。
「今回反乱に参加した者たち、コロロ以外は死刑にする」
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