第16話
今日も大急ぎで、身支度を済ませた。
姉がエントランスホールにて待ち構えていた。
「……ルイゼ、準備はできた?」
「はい、ごめんなさい。待たせ てしまって」
「いいのよ、昨夜は私も無理をさせてしまったから。けど、課題は早めに終わったでしょう?」
「そうですね、ありがとうございます。姉上」
「ええ、どういたしまして。さ、行きましょう」
姉に言われて、エントランスホールを出る。馬車に向かった。
乗り込み、私は改めて忘れ物がないかをチェックする。一応はないようだ、ほっと息をついた。姉はそれを眺めながら、苦笑いする。
「やっぱり、心配性ね。ルイゼは」
「それでも気になる物は気になるんです」
「ふふっ、まあ。忘れ物がないに越した事はないわね」
私はそう言われて確かにと頷く。馬車はゆっくりと進むのだった。
学園に着くと、ロバートやレヴィ、リチャードの三人が出迎えてくれた。何故か、セシルもいる。
「……おや、君は。フローレンスさんかい?」
「はい、エヴァライト先輩、ウィンド先輩。それにエルグランド先輩」
「ああ、僕達の名前を覚えてくれているとは。凄いね、君は」
「まあ、ルイゼに関わる方々ですし」
「ふうん、そうか。ま、僕達の事はファーストネームでいいよ。苗字だとややこしいし」
「……わかりました」
セシルはそう言って頷いた。ロバートはニッと笑いながら、彼の耳元に顔を近づける。けど、何を言っているかまではわからない。声が小さ過ぎて聞こえなかった。
「では、ルイゼちゃん、リーゼ。フローレンスさんも」
「はい、ありがとうございました。ロバート先輩、レヴィ先輩、リチャード先輩」
ロバートは手をひらひらと振りながら、この場を去った。レヴィやリチャードも後に続く。私は姉やセシルと一緒に玄関に向かった。
姉と別れて、私はセシルと二人で教室に向かう。無言で歩きながら、なんとはなしに窓の空を眺めた。
「……どうかしましたか?」
「ん?セイラ、何でもないわ」
「顔色が悪いわ、大丈夫なの?」
大勢の生徒がいるので、セイラとして声をかけてくる。それは仕方ない。私はゆるゆると首を振りながら、答えた。
「大丈夫よ、ちょっと。姉上が一人で心配なだけよ」
「ああ、そうなのね。リーゼロッテ様、大丈夫かしら」
「まあ、すぐにロバート先輩が迎えに来ているでしょうけど」
そう言って、私は苦笑いする。セシルは何とも言えない表情になった。
「それはそうでしょうけど、ルイゼ。やはり、保健室に行った方がいいわよ」
「そうかしら」
「ええ、かなり顔色が悪いから」
仕方なく、頷いた。セシルの言う通りに保健室に行ったのだった。
保健室に行くと、運が良い事に先生がいた。
「……あら、あなた達は、
確か、一年のソアレさんとフローレンスさんね」
「はい、そうです。先生、ソアレさんが気分が悪いようなんです。休ませてもらえませんか?」
「それは大変ね、今はベッドも空いているから。使ってちょうだい」
先生はそう言って、快く奥のベッドまで案内してくれた。私はお礼を言って、セシルに肩を貸してもらいながら行く。
ベッドに腰掛けると、先生が近づいてきた。
「ソアレさん、悪いけど。軽く診察をするわね」
「……はい」
「うーん、目の下のクマが酷いわね」
先生は言いながら、目の下を引っ張って状態を見たり、脈を測ったりした後にベッドに横になるように告げる。
「担任の先生にはソアレさんの体調が悪くなったと伝えてくるわ、だからしばらくは休んでいなさい。お昼近くになっても回復しないようなら、早退できるようにしておくから」
「わかりました、ありがとうございます」
「ゆっくり休んでね」
先生はそう言って、保健室を出て行く。後には、セシルと私だけが残された。確かに体が思ったよりはダルい。仕方ないので、言われたように横になるのだった。
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