第11話
私は放課後を迎えていた。
教室を出て、カバンを持ちながら停車場に急ぐ。そうしていたら、後ろから声を掛けられた。
「あの、ソアレ様!」
「……あ、フローレンスさん?」
呼び止めた声の主はセイラだ。私は不思議に思いながら、足を止める。昼休みにも同じような展開になっていたかしらね。
「ソアレ様、明日も学園にいらっしゃいますよね?」
「ええ、そのつもりですけど」
「なら、私。お菓子と一緒にお弁当を作ってきますね!」
「お弁当を?」
「はい、いきなり呼び止めてすみません。私はこれで失礼します!」
セイラはそれだけを言うと行ってしまう。昼休みのことを気にしているようだ。そんなに感謝されるようなことはやっていないのだが。私はほうと息をつく。夕焼け空を眺めながらも、急いだ。
馬車に乗った。姉のリーゼロッテやロバートも一緒だ。
「ルイゼ、今日もお疲れ様ね」
「はい、姉上もです」
「ふふっ、それはそうと。あのフローレンスさんと仲良くなったみたいね」
姉はにっこりと嬉しそうに笑う。ロバートは意外そうに眉を上げた。
「えっ、ルイゼちゃん。いつの間に?!」
「いえ、ちょっと。今日のお昼休みに色々とありまして」
「ふうん、ちょっと。訊かせてくれないかな?」
私は頷くと、お昼休みにあったことの一部始終を説明した。すると、姉は憤慨し、ロバートは難しい表情になる。
「……何ということを下級生の子にするのかしらね、恥という物を知らないのかしら?!」
「うーむ、なかなかにやるな。その女子生徒のリボンの色はわかるかい?」
「確か、藍色だったと思います」
私が答えると、姉とロバートは息を呑んだ。
「……まさか」
「成程、やはりね」
二人の反応に私は首を傾げた。
「……あの?」
「ルイゼ、よくぞ言ってくれたわ。私ね、以前から。フローレンスさんを嫌っていた女子生徒には心当たりがあったの。今日に行動に移すとは思っていなかったけど」
「そうなんですね」
「うん、私の方から学園長に報告しておくわ。これでも、生徒会役員だしね」
「お願いします」
私が言うと、姉は「任せて」と笑った。ロバートもニヤリと笑う。
「その女子生徒の名前は知っているよ、アリシェル・ミラーといったはずだ。ルイゼちゃんのクラスに同じ家名の子がいただろう?」
「……いました、確か。イヴァンジェリン・ミラーさんでしたか」
「そう、その子だよ。アリシェルさんはイヴァンジェリンさんの姉だったはずだ」
私は驚きを隠せない。まさか、あのミラーさんの姉だったとは。
「ミラーさん姉妹は二人とも、公爵令嬢だ。家格は僕達より上ではあるからね。なかなかに太刀打ちし難い相手ではある」
「そうですね」
「けど、セイラさんは王家に連なる血筋で保護されている。さすがに今回のことで陛下も何らかの判断をくだすと思うよ」
私は確かにと思った。ロバートの言う通りだ。三人でその後も話し合った。
私は邸に帰ると、すぐに義父でもあるお祖父様に報告をするために自室に行った。寝室に籠もり、手紙をしたためる。
<お祖父様へ
お元気でしょうか?
いきなり、手紙を書いたらお祖父様は驚くかもしれませんね。
実は今日に学園にて、不祥事がありました。
私と同じクラスの女子生徒であるセイラ・フローレンスさんが上級生に、二階の窓からバケツに入った水をいきなり掛けられたのです。
どうやら、フローレンスさんはその上級生に以前から嫌がらせを受けているようでした。
水を掛けた後、上級生はすぐに立ち去ってしまいましたが。
私はすぐに駆け寄り、フローズンさんに魔術で濡れてしまった衣服などを乾かしてあげました。
清浄の魔術も重ねがけしたら、当人はいたく感謝されましたけど。
放課後の下校時に姉上や婚約者に当たるロバート先輩にそのことを報告し、説明もしました。
姉上やロバート先輩が言うには、フローレンスさんを以前から嫌っていた上級生の女子生徒がいたとか。
名前はこの手紙では省略させていただきます。
たぶん、姉上からお祖父様にも報告はあるでしょうから。
それでは失礼します。
敬愛するお祖父様へ
ルイゼより>
だいぶ、長々と書いてしまった。私は苦笑いしながらも、ツェリを呼んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます