第4話

 レウィシアは笑いながら、言った。


「あ、ごめんなさいね。私の婚約者は同い年なの。名前はチャールズと言って、先代のソアレ侯爵に剣術を指南していただいていたのよ」


「はあ」


「チャールズは騎士科だから。私はリーゼロッテと同じ、文官科なんだけど」


 レウィシアの説明によると、私がソアレ侯爵もといお祖父様の孫娘なのは騎士科では有名らしい。そして、孫娘が養女として引き取られたことには様々な憶測を呼んでしまったとか。と言っても、騎士科の中でだが。


「私も彼から聞いた時は驚いたわ」


「それはそうでしょうね」


「あ、もう入学式の時間だわ。行きましょう」


 カラーン、カラーンと鐘の音が鳴る。どうやら、入学式の時間を知らせているらしい。姉やレウィシアと三人で大講堂に急いだ。


 その後、入学式が始まった。二年や三年の生徒も皆が席についている。最初に学園長からの祝辞、次に生徒会長からの祝辞と続く。

 その次は、新入生代表の宣誓となった。誰がするのかと舞台を見上げる。綺麗な黄金の髪に透明感のある水色の瞳の超がつく美男子が壇上にいた。


(え、あれは。王太子殿下じゃない!?)


 それはそうだろう。王太子もとい、ライカ殿下のことを見間違えるはずもない。とはいえ、元騎士団長で先代のソアレ侯爵の養女になった私には殿下との縁談はついぞ来なかった。

 まあ、私も嫌がっていたし。こんな武芸ばかりの脳筋令嬢、向こうもお断りだろうな。複雑な心境になりながらも、殿下の宣誓を聞いていた。


 こうして入学式が終わり、皆が外に貼り出されているクラス構成表を見に行く。私も姉やレウィシアと一緒に大講堂を出た。

 そうしたら、三人組の男子生徒がやって来る。そのうちの一人が声を掛けてきた。 


「やあ、レヴィにリーゼじゃないか。久しぶりだな」


「あら、リチャード。お久しぶりね」


「リチャード、久しぶりね。ロバートやマーベルも」


 薄茶色の髪を短く切り揃え、榛色の瞳もキリッとした背の高い青年といった感じか。彼がレウィシアの婚約者のようだ。


「レヴィ、隣にいる子は見かけない顔だな。新入生か?」


「そうよ、リーゼロッテの妹さんなの」


「……リーゼロッテ姉様の妹でルイゼ・ソアレと言います」


「あ、君がソアレ先生の。初めまして、俺はリチャード・ウィンド。ウィンド伯爵家の次男坊だ」


「リチャードの左側にいるのがロバート・エヴァライト。エヴァライト侯爵家の長男よ。そして、リーゼロッテの婚約者。右側がマーベル・オーランド。オーランド公爵家の三男。ちなみに父君は宰相閣下ね」


 レウィシアが丁寧に説明してくれた。私は目の前の三人組に、カーテシーをする。


「改めて、初めまして。エヴァライト侯爵令息、オーランド公爵令息。私はルイゼ・ソアレ。ソアレ侯爵の義娘です」


「ああ、そんなに畏まらなくていいよ。僕の事はロバートと呼んでくれ。何なら、先輩と呼んでくれたら、嬉しいな」


「俺もマーベル先輩と呼んでくれて構わない。ルイゼ嬢」


 二人は割と、フランクな感じで言ってくれた。リチャードがレウィシアに近づくと、二人は連れ立って先に行ってしまう。

 ロバートも姉に近づいた。


「ロッテ、僕らも行こうか」


「えっ、さすがにルイゼが心配だわ。一人にはちょっとね」


「そうだな、じゃあ。ルイゼちゃんはリーゼと一緒に行ってくれ。俺はロバートと行くから」


 マーベルはそう言って、ロバートを引っ張る。ちなみに、マーベルはライカ殿下より濃いめの金髪に紫の瞳の美男だ。ロバートも灰銀の髪に琥珀の瞳の超がつく美男だが。二人はそそくさと行ってしまった。


「行きましょ、ルイゼ」


「はい、姉様」


 二人で連れ立って校舎に入った。


 

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