ぶれいきんぐアクセル
@oganiinago
奇行その1
彼女がした第一の奇行は高校一年生の時、数学的な意味を持ったオブジェのてっぺんに登っていた。
文系の僕には、このオブジェの存在意義が皆目わからないけれど、そんなことは置いといて、彼女の行動には何か意味があるはずだと思った。まともな論理的思考能力を持っていたらわかるはずだ。目的もなくオブジェのてっぺんに登ったりなんてしないことは。ただ、人の思考をシミュレーションするのが趣味である、根暗界のスパコンたるこの僕でも彼女の行動原理だけは本当にわからなかった。だから、直接聞いてみたんだ。論理的でしょ?
「なあ、この前、あのオブジェのてっぺんに登ってたよな」
彼女は目頭をはげしくこすってから、うんとだけ言って頷いた。目頭をこすったせいで、まつげが抜けて涙袋についてしまっていたが、流石に初対面で指摘はできなかった。
「答えたくなかったらいいんだけどさ、なんで登ってたの?」
「……三日」
彼女はそう呟いて、棋士よろしく長考してから、言った。
「三日連続で、あの上に登りたいと思った。ふつう、思っても登らないでしょ?でもね、私、三日連続で思ったことは必ず実行するようにしているの」
「ふーん」
多分、彼女なりの人生経験を積んで、彼女なりの思考を重ねて導き出した、行動原理なんだろう。僕はどこか危なっかしいと思ったが、同時に彼女のことを見ていたいと思ってしまったのだ。
僕は、彼女の言葉を聞いて、正直かなり驚いていた。だって、公共のオブジェに登るような奴には、脳みそが青色だったり、神経が玉結びされているような輩しかいないと思っていたから。彼女の発言は、常識にとらわれない理性をまとっていた。
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