14.スキル検証〆(Mダウン)
くらっ……くらくら……バタン。
何が起こったのかわからず、俺の意識は霞に消えた。
それからどれくらい経ったのかわからないけど、目を覚ましたときには砂浜の上に寝かされていた。
すぐ近くには腰かけにしていた大岩があり、俺の真横にはエルフィーネがいた。
それらの状況から、俺はなんとなく自分が気絶したんだと理解した。
まったく。本当にクソみたいなスキルだな。この異世界召喚とかっていうおかしなスキル。
俺は、気絶する前までに行っていたことを思い出してみた。
◇◆◇
本当に、何回ぶっ倒れれば気が済むのかと思いたくなるぐらい毎度立ちくらみに襲われて、その度にひっくり返った。
本当にちょっと軽~い気持ちで始めたスキル検証のはずだったんだけど、気が付いたらとんでもないことになっていた。
まず言えることは都合五回召喚し、五回ともなにかしらの召喚には成功したということだった。
単純に運がよかっただけかもしれないけど、一応、召喚には成功した。
だけど、それと引き換えに二回ほど、目眩を起こして顔から砂浜にめり込むことになった。
それ以外の三回はエルフィーネが間一髪間に合って、彼女の柔らかい胸の中にすぽっと収まる形になった。
あれはあれで、なんとなく役得な気分を味わえたような気がしたから、ぶっ倒れてよかったなぁ、なんて思わないでもなかったけど、他の二回は本当に最悪だった。
だってあれ、メチャクチャ痛いし砂浜は熱いしで、顔がヒリヒリしてくる。
日焼けしたのかもしれないけど、とにかく二度と味わいたくない。
だけれど、その甲斐あってか、一応、スキル検証自体はいい感じに終わった。
この世界に来てから一回目のペットボトル召喚のあと、二回ほど地球上にある食べ物や飲み物を召喚しようとしたんだけど、なぜかうまくいかなかった。
無性にビールが飲みたくなったので、缶ビールを強く念じて召喚しようとしたんだけど、なんか知らんが、どかんっと、空からでっかい樽が降ってきたのだ。
あまりにも予想外な出来事に、驚愕しすぎて思わず後ろにひっくり返りそうになった。
だけど、砂浜にめり込んだ樽から妙に甘い香りがして来ていることに気が付き、興味がわいて鼻を近づけてみた。
そうしたら、なんだか懐かしい気分になった。
エルフィーネも俺と同じように顔を近づけてみて、美貌をほころばせていた。
「これ、果実酒じゃないですか? 故郷の村で毎年造っていたお酒によく似た匂いがします」
「へぇ、そうなんだ」
なんだかよくわからないけど、一応、酒の召喚には成功したようだった。ただし、ビールではなかった。
しかもこのお酒、どこの世界の誰が作ったものかまったくわからないという曰く付きのもの。
そのため、残念だったけど、飲むのは断念した。
だって、もし仮にこれを作っていたのがゴブリンとかオークだったらやばいっしょ。
ちゃんとしたワインになっていたらいいけど、それ以外のものだった気色悪いし、最悪、毒に侵されたりしたら目も当てられない。
そんなわけで残念だけど、後日、焼却することにした。
「じゃぁ、気を取り直して次――」
俺はそう自分に言い聞かせるように呟いてから、三回目の召喚をしたわけなんだけど――
今度はコンビニで売っているメロンパンを思い描いて召喚しようとしたら、こっちも召喚自体は成功したんだけど、なんか知らんけど、空からメロンそのものが降って来るという珍妙な出来事に見舞われた。
下が砂浜だったから、かろうじて木っ端微塵になることはなかったけど、ホント、意味がわからん。
目的のものが呼び出せないなら、そのまま失敗扱いになって、何も召喚できないとかじゃないのか?
それとも、今回みたいにそれに近いものが召喚されてしまうものなのだろうか。
もしそうだとしたら、とんでもなく怖いんだけど?
だって、メロンパンでメロンだぞ!?
あり得なくないか?
まぁ、まだ食べ物だったからよかったものの、これが変な化け物とかだったらやばすぎる。
俺は砂の上に落ちていたメロンもどきを拾って溜息をついた。
これが本当に食べられるものであるならば、貴重な食料になるから一応、保管しておこうと思い、エルフィーネに渡した。
そんな感じで地球上にあるものを最初のペットボトル以外に二回ほど召喚しようとしたけど、うまくいかなかったというわけだ。
試行回数たったの二回だったけど、二回とも失敗したことを考えるに、やっぱり最初の奴は何かバグみたいな現象が起こったんじゃないかと思われる。
本当なら召喚することはできない。
そういうことなのかもしれない。
勿論だけど、検証回数がたったの二回だけだったから、それだけで判断することはできないけどね。
だけど、その検証のためだけに危険を承知で、そのままチャレンジし続けることなんかできなかった。
だから今回は食料と水の確保を最優先したのだ。
そんなわけで、そのあと二回ほどぶっ続けで召喚し、一回目は水を召喚しようとして空から大量の水が降ってきて、危うくずぶ濡れになりかけた。
二回目は前回の反省を踏まえて、エルフィーネが暮らしていた世界で携帯用に使われていたという竹筒――水筒のようなものに入った飲み水を十本ほどイメージして、召喚したところで俺はいきなり気絶したのだった。
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