ガチャで手に入れた異世界召喚スキルを使って、美人で可愛い巨乳エルフや幼女精霊たちと一緒に無人島開拓スローライフを満喫します ~異世界召喚士の無人島開拓日誌~
鳴海衣織
1章 初めての異世界無人島生活
1.おかしな自販機
――夏が本格的に始まってから少し経った頃。
ブラックな上司のパワハラに耐え切れなくなって、俺は仕方なく会社を辞めてきた。
貯金ゼロ。
退職金ゼロ。
財布の中身三万円。
これであと一か月は過ごさないといけない。
一応給料は今月末に一回振り込まれるから、それまで凌げばなんとかなるけど、色んな支払いとかあるから正直、乗り越えられる気がしない……。
――終わってない?
俺は肩を落としながら、一人、とぼとぼ歩いていた。
今日は午前中だけ仕事して、午後から帰宅という状態だった。
有休の関係で最終日は半日だけ出社、という形になったのだ。
だからこうして、形だけ「お世話になりましたぁ」とか言って、午後の街中を歩いていたわけだけど――
なんだか人生すべてが終わったような、そんな気がした。
「はぁ……」
俺は何度目になるかわからない溜息を吐いたあと、前方を凝視した。
今いる場所は職場がある渋谷の道玄坂で、そこを下っている真っ最中だった。
そんなロケーションだったんだけど――
「うん?」
普段通る通勤路だったから、この辺の街並みは熟知していたはずなのに、前方右手側に見慣れない脇道があることに気が付いた。
――あんなところに道なんてあったか?
そう思いつつも、店舗と店舗の間にぽっかりと空いた、右側へと続く薄暗い通路のことが気になってしまい、吸い込まれるようにそこへと入って行った。
周囲を警戒しながら、慎重に歩いて行く。
その裏通りは本当に怪しい場所だった。昼間なのに真っ暗闇で、空気も淀んでいる。
左右に店はなく、どこまでもどこまでも道が続いている。
この先に何があるんだと思ったのと、こんなところに入り込んじゃってやばいんじゃないかという相反する思いが交錯したけど、それでも足は止まらなかった。
もしかしたら自暴自棄になっているのかもしれない。
「はは……」
俺は自虐的に笑いながらひたすら歩き続けた。
そして、どのぐらい歩いたのかわからないけど、突き当たりにおかしな店があることに気が付いた。
ぱっと見、たばこ屋にしか見えない。
けれど、店の中が真っ暗で中の様子を窺えないし、店員も見当たらない。
胡散臭く感じたけど、興味がわいたので店の前まで歩いた。
たばこ屋にはやはり店員はいなかった。
その代わり、本来店員がいる場所には台の上に乗せられた小型の自販機が置かれていた。
そこには、
『これであなたも億万長者。スタートボタンを押したその瞬間に抽選結果が出ます』
と書かれていた。
ある種の宝くじみたいなものか?
ていうか、これって最近
千円とか入れてガチャ回すと、大当たりだと和牛フィレ肉とか出る奴。
俺は胡散臭く思いながらも、一応、内容を確認してみた。
『一等、三億円』
『二等、一億円』
『三等、一千万円』
などとディスプレイ部分に書かれている。
その横には本数が書いてあって、残り当選本数も表示されていた。
それを見ると――
『一等は01/05』
『二等は03/10』
『三等は01/20』
とかだった。
他にも細かく賞がある。
洗濯機やテレビとか。
結構出てるんだなと思ったとき、一番下に特賞と書かれている小さな文字を発見した。
しかし、いくら当たるのかはノイズのせいで見えなかった。
どうしようか悩んだ。
普通に考えたら、当然、お金をほとんど持っていない俺みたいな貧乏人が手を出していい代物じゃない。
何しろ、一回の挑戦につき一万円も払わないといけないらしいからな。
だけど、目の前にある宝くじガチャが非常に魅力的なのも事実だった。
ざっと目を通してみたけど、普通の宝くじと違って、すべてが当たりくじとなっていたからだ。
新品家電やアクセサリ、時計など、売れば即、金になりそうだった。
しかも、一等の当たる確率が五百分の一。
う~ん。
どうする?
これ、絶対にやった方がいいよな?
スルかもしれないし、スラないかもしれない。
だけど、当たったら、三億だぞ!?
三億もあったら、明日の飯の心配なんて一切する必要がない。当分働かなくてもいいんだぞ?
毎日、大好きな小説や漫画を読み漁れるし、朝から晩までゲームし放題!
こんな魅力的な毎日は早々ないぞ?
頭の中でとんでもなく大勢の俺たちが脳内会議し出して、なんとなくだけど、ダメな方向に突き進んでいるような気がした。
が、結局、どうやら俺は誘惑に負けてしまったようだ。
ダメだダメだ、やってはダメだと思っていたのに、勝手に財布を漁り出す俺。
ま、まぁ、とりあえず一回ぐらいだったらなんとかなるだろう。
そんなことを言って、自分自身を誤魔化してみる。
ドキドキしながら一万円札を取り出してみたものの――
メチャクチャ手が震えてるんですけど!?
プルプルする右手を懸命に動かし、自販機に投入した。
まずは一回目――
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