第14話 酒飲みに合せた味付で、ビールが進む?!

 寝台車に戻って、早めに仕事を終わらせておこうと思ってぼちぼち書類を整理しておりました。そろそろ終らせられそうになった頃、後ろの方から徐々に車掌補が近づいて参りました。どうやら、寝台のセットが進んでいるようでして、これはもう早めに仕事を終らせようと何とか頑張りましてな、すぐ後ろまで車掌補が来た頃には何とか終わらせることができました。


 それから例によって先ほどお話した通り寝台のセットを目の前で見まして、ひとつみたら後はまた食堂車に舞い戻ろうと決めておりましたので、早速、川中さんや山藤君とともに、再び食堂車に参ることにいたしました。

 端の通路を通りながら、寝台のセットの状況を何度か見ることとなりましたが、どこもまあ順調にボタンでホイホイといった感じでしたね。隣の車両から先は、確かに電源エンジンの音がしないなと、それも十分体感できましたよ。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 それから食堂車に参りまして、山藤君も私も川中さんも、今度は酒を飲みながら何か一品料理をつまんでということになりましてね、今度は、単品のポークカツやビーフカツなどを適当につまみに頼みまして、それから、ビールを飲み始めました。

 そうそう、先程ステーキでビールを飲んでおられた山藤君が最初に言い出した言葉が、ふるっておった。


「締めのラーメンってのがありましょう。さすがに食堂車ではラーメンというのも難ですから、ポークカツは定食にしてくださいよ。ごはんとスープは、私が戴きますから。あと、ポークカツのほうは、少しは私もいただきますが、皆さんもどうぞ」


 すでに私と川中さんはカレーを食べており、さほど食べることもないので、つまみを適当につまみながら、一杯飲みました。そんなことにもなろうと思っておりましたので、川中さんがあらかじめ気を利かせて、取り皿を3枚頼んでくれていました。

 そこで山藤君、何を考えだしたのか、ビールを3本ほど頼んだ時点で、先に会計をしておいてくれとウエイトレスのおねえさんに告げられて、支払いを済まされてね。

 そういえば、さっきはステーキでビールを飲んでいて、同じようなことをしておられましたな。


 しばらく飲んでビールがなくなり始めて、今度はまた、ビール2本と単品のステーキを頼みました。これは、私が思い立ってのことでしてね。

 ビールがすぐに参りまして、その後、ステーキも参りましたよ。今回は、我々の状況を観てのことか、厨房の段階でポークカツやビーフカツのように、いくつかにカットしてくれていました。

 そこで、山藤君がおっしゃったことが振るっておいででした。


「食堂車で酒なんか飲んでおりますとね、こちらに合せて、多少なりとも味付けをそれに合せてくれるもののようですな。折角ですので、ひと切れ戴きます」

 そう言ってこちらのステーキをひと切れフォークでつまんでさらに、こんなこともおっしゃいましたな。

「いやいや、さっきと同じというか、それ以上に、ちょっと酒飲みに合せてくださっておるようで、何より何よりです」

 なんのこっちゃ?

「山藤君、その何ですか、酒飲みに合せてくださるというのは?」


 一杯飲みながらそんなことを言っておりますと、蝶ネクタイの食堂長が我々のテーブルに挨拶に来られました。食事時間帯でもあり、車内のテーブルは8割がた埋まっているような状況でしたけれど、ちょうど仕事の手が空いたあたりでした。

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