社会性の破壊力と限界 後半

第51話 社会性の話に戻そう

 諸般の事情で日程は1日遅れ、2023年7月2日日曜日の朝。

 まだ、夜は開けていない。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「米河君、起きられたか」

「は、はい。昨日は夕方から酒を飲んで寝ておりました」

「かなりお疲れの模様じゃな。簡単に打合せで終わろう」

「わかりました。では、風の子学園の件はいったん保留としまして、社会性の話に戻せればと」

「よろしい。これまで社会性の即効性と効能性をかなり述べてきたと思われるが、君はその社会性だけですべて解決メデタシメデタシとなるとお思いか?」

「いえ、それは早計が過ぎるというものです。それこそ、私の簡単に孕んでオロすネエチャンとにいちゃんのヘチマの論理と一緒でして、社会性の暴走は、非常に危険ですね。今そのお話が出て思いましたが、その行き過ぎを抑えるもののひとつが、人間性ではないかと」

「あくまでも、ひとつ、という理解で、よろしいか?」

「はい。社会性に対してまた別の社会性で抑えることもありですが、根本的な部分においてはやはり、人間性というものこそが、重要ではないかと」

「君にしては、いささかバランスのよさげな回答ですな」

「私は、そんな、極論を述べて突っ走る人間のように?」

「悪いが、そういう印象は無きにしも非ずですぞ」


「さて、本日はプリキュア前にひと暴れされるか?」

「いや、やめときます」

「よろしい。では、もう一日延期としますか」

「それでお願いします」

「その前に一つ、確認したい。社会性につき、君は即効性のあるものであると述べられたが、人間性というのは、その点についてどのように考えておいでかと」

 森川氏は、このことだけは確認して帰る必要を感じていたようである。

 米河氏が、答える。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 はい。人間性というものは、社会性のように即効性のあるものではありません。

 ですから、どうしてもあいまいなもののように見えます。

 現実、社会性のような可視性はと言われますと、ちょっとそちらも心もとないかもしれませんよ。かくのごとく、この人間性とは、即効性に欠けるだけでなく、いささか見えにくいものでさえもあります。

 しかし、これはある意味、その人にとってボディーブローのように少しずつ効いてくるものでありまして、気が付いた時には、アッという効果が出てくる。もしくは、いざという時にこそ、それがどこかで形を変えて現れてくる。

 そんな感じのものということで、御理解いただければと。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「なるほど、今すぐに言葉では表せぬが、そのようなものであるとすれば、表面をごまかすための言葉にもなりえないではないということじゃな」

「はいそうです。その故、私が社会性というものを強調・重視してきたという側面もありますね。大槻さんも、そのような傾向がおありだったように思われます」

「なるほどな。そう来ましたか。君の今の弁をじゃな、大槻君が若い頃に聞かされておったら、私も、もう少し彼に対して良い指導ができたかもわからんな」

「はあ? そんな大それたものでしょうか、私の弁は?」

「ああ、十分その要素を感じられる。ますます、楽しみになって参った。まさに、相手に不足はないのう。わしも、がんヴぁるわい」

「喜んで、受けて立たせていただきます」


 この日の打合せは、これで終わった。

 まだ世はそれほど明けていない。

 米河氏は改めて寝直し、夜明けを待った。

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