ケットシー転生!

kuro

オープニング~始まりの転生~

「……ああ、これは死んだな」

 そう、僕は端的につぶやいた。身体からは決してすくなくない血が流れ、腕も足もひしゃげて折れてしまっている。まあ、言ってしまえばかなり重傷じゅうしょうだった。

 恐らく、胸の骨も折れてはいに刺さっている筈。さっきから呼吸が苦しくて仕方がないからだ。うん、そろそろ意識がうすれてきた。そうか、僕の人生ももう此処までという事か。何とも呆気あっけないなぁ。

 近くに居る人が、僕を抱えて何かをさけんでいる。けど、もう何を言っているのかすら分からない。何も、聞こえない。何て言っているんだ?視界しかいがぼやけて男か女かすらよく分からないほどだった。

 それにしても、まさか酔っ払いの運転する暴走車にねられて死亡するなんて何とも締まらないな。まあ、それが僕の結末という事で受け入れるしかないんだが。

 もう、此処までかな。そう思い、僕はそのまま身体から力をいた。全く、本当に僕の人生って奴は何が起きるのか分からないな。

 苦笑しようとして、出来なかった。もう、自分の表情筋すら自由じゆうにならなくなってきたようだ。本当に、ままならないな。

 けど、悪くない人生じんせいだった。そう、心から思う。

 決して思い通りにならない人生だったけど。苦労もしたしつらい事も色々とあったけどそれでも、楽しかった事だけは本当だったから。

 だから、まあ悪くない人生だったと思う。

 そう思い、僕は人生にまくを下ろした。

 ・・・ ・・・ ・・・

 そして、現在?

「で、気付けば僕は猫獣人ねこじゅうじんのケットシーにまれ変わっていたという訳かにゃ」

 自分で言って、中々笑えてくる。随分ずいぶんとまあ、ファンシーな。

 酔っ払いの暴走車にねられてそのまま異世界転生するなんて、そんなラノベみたいな展開、そうそうにある物ではないだろう。まあ、実際じっさいにあったのだから受け入れるしかないのだけど。

 まあ、別に自分の前世ぜんせに然程未練があった訳でもないし。今世こんせは今世として自由気ままに生きさせてもらうとしますか。

 そう思い、僕は笑った。ちなみに、今の僕はかぎ尻尾がチャームポイントの三毛猫獣人だったりする。自分でも言うのもなんだけど、中々かわいい見た目だ。

 どうも、この世界は猫獣人とかが普通にらしているようなファンタジーな世界らしいしな。そう思えば、中々面白くなってきたと思う。うん、猫獣人になったならやはり猫として自由に生きるのも有意義ゆういぎというモノだろう。

「と、言う訳で僕は今世は自由気ままにフリーダムに生きさせてもらいますにゃ」

 そう言って、僕ことダムは故郷こきょうであるケットシーの里をはなれて旅に出た。

 さて、この世界は一体どんな世界かな。今からワクワクドキドキしてきた。

 さあ、たのしもう。

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