第3話:大和思案(仮題)

 2600年11月、軍艦武蔵も進水して大和同様に内々の間とはいえ記念行事が行われている最中のことである。

「……タラント空襲、か」

「姉様?」

「どっかの莫迦が活気づかねばいいが……」

「戦争になると?」

「……それは、ルーズベルトが死なない限り戦争にはなるでしょう。それよりも、タラントにてイタリアの戦艦がイギリス海軍航空隊によって何隻か撃破されたそうです」

「あはは、イタリアは相変わらずだなあ」

「笑い事じゃありません、このことを間違った戦訓として記憶した莫迦が妙な気を起こさないうちに、なんとかしなければ……」

「間違った戦訓とは?」

「……いずれ、話します。それに……」

「それに?」

「……………………」

「大和姉?」

「……陸奥、くれぐれも失火には注意して下さいね?」

「……姉様は過保護だなあ……」

 軍艦大和に宿った謎の人物は、外見こそ何処に出ても愛されるであろう美少女であったが、その中身はある種の阿修羅であった。何せ、後に北アメリカ大陸の沿岸部の地形を変えるほどの大破壊をもたらすのである、その艦艇の戦魂がなわけが、なかった。

「ところで大和姉は、もうとの挨拶は済ませました?」

「……パスをつなげられる人数は限られますからね、まだ様子見とさせて頂いております」

「はあ……、何にせよ、早めにお願いしますね?」

「ええ、大丈夫ですから」

 彼女が後にパスをつなげた相手は、宮里でもなければ高柳でもなかったのだが、それを知る者は、彼女自身を含めてこの場には居なかった……。

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