崔浩10 命燾為國副主

拓跋嗣たくばつし崔浩さいこうよりの提言を受け入れたことを、拓跋珪たくばつけいを始めとした北魏の宗祖らが祀られている霊廟に報告。このとき崔浩さいこうしその報告を務めさせた。こうして拓跋燾たくばつとう國副主こくふくしゅに任じられ、正殿せいでんにて政務を執ることとなった。


拓跋燾の執務を補佐するのは、以下の六名である。

左輔さほ東廂とうしょうより西向きで執務。

司徒しと長孫嵩ちょうそんすう山陽公さんようこう奚斤けいきん北新公ほくしんこう安同あんどう

右弼うひつ西廂せいしょうより東向きに執務。

崔浩、太尉たいい穆觀ぼくかん散騎常侍さんきじょうじ丘堆きゅうすい

この七名で、百僚を統べることとなった。


拓跋嗣は西宮さいぐうに退き、時折密かに執務の様子を伺い、その決裁の滞りなきさまを見ては満足そうにうなずき、側仕えに言う。

「長孫嵩は四人の王に仕え続けた宿德の臣。その功績は社禝にも刻まれている。奚斤の鋭き機転は、遠近にもとどろき渡るところ。安同は世情に明るく、練熟の判断であらゆる事態に対応が叶う。穆觀は政の要点を的確に捉え、我が意図や意向も熟知している。崔浩の博聞強識ぶり、そしてその精勤ぶりは天人に見えたかのようである。丘堆は……あー、まあ、慎ましくて良いな! ともあれこの六人が燾を支え助けてくれているのであれば、我やそなたらは自由に四方を飛び回ること叶い、逆らうものを討ち、従わんとするものを手懐け、かくて天下に志を得られような」


ときに羣臣が拓跋嗣に対し、彼らの決裁についての疑義を奏上することがあった。すると拓跋嗣は言う。

「知らん。それを決めるのはお前たちの国主だ」




於是使浩奉策告宗廟,命世祖為國副主,居正殿臨朝。司徒長孫嵩、山陽公奚斤、北新公安同為左輔,坐東廂西面;浩與太尉穆觀、散騎常侍丘堆為右弼,坐西廂東面。百僚總己以聽焉。太宗避居西宮,時隱而窺之,聽其決斷,大悅,謂左右侍臣曰:「長孫嵩宿德舊臣,歷事四世,功存社禝;奚斤辯捷智謀,名聞遐邇;安同曉解俗情,明練於事;穆觀達於政要,識吾旨趣;崔浩博聞強識,精於天人之會;丘堆雖無大用,然在公專謹。以此六人輔相,吾與汝曹遊行四境,伐叛柔服,可得志於天下矣。」羣臣時奏所疑,太宗曰:「此非我所知,當決之汝曹國主也。」


(魏書35-10)





この段階のこの体制って、結局はまだまだ軍事こそが国の重大ごとであり、皇帝は武威の象徴たらねばならない、ということなのでしょうね。まぁ確かにまだまだ周辺には敵が多く、そうそう皇帝を文の方面に預けきれる局面でもなく。こうした対応は、つくづく南朝諸国家と北魏とがまったく違う次元に統治の基礎を置いていると分かり、良いです。


拓跋燾のスタンスは、まだこっち側ですよね。それが拓跋宏たくばつこう元宏げんこうで大きく変わる。過渡期に立つ二人の皇帝はどんな感じだったんでしょう。まぁ、そのうち調べてみましょう。そのうち。

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