崔浩9 拓跋嗣の弱気
「
崔浩が回答する。
「陛下の春秋は未だお盛ん、聖業成り、御德にて災いさえ退けられれば、たちまちの内にその病も快癒なさりましょう。天道とは遥か彼方の話、時に現れ、時に消えをするものにございます。昔、
この国が立ち上がってのち、先帝陛下が後継体制を疎かとなされたことから、陛下の即位にあたっては、お国の危機とまで申すべき事態が生じました。ならばいまは、速やかに皇太子の詰める宮、
皇太子殿下には公卿や忠賢なるもののうち陛下が日々深く信任を置かれている方々をその師として、側近や信頼に値する近習のうちお国を支えるに相応しき覚悟を抱く方々をそのその御学友として充てられませ。その上で宮中にては万民を統御させ、外遊にては軍事を総督されられませ。かくて国政を統御し軍を統制するだけの器量を皇太子殿下が手中に収めること叶わば、国家運営は皇太子殿下の手中に収まりましょう。
かくの如く皇太子殿下の施政が研ぎ澄まされれば、陛下が国政に必要以上に思い煩わされることもございますまい。ご自身の静養に専念し、医者らとて陛下に薬湯を心置きなく勧めることができましょう。こうした措置の上、皇太子殿下が、国主足り得る才覚を見事お示しになったのであれば、民は国主に服しましょうし、まつろわぬ民とてうかつに逆らおうとは臆断しますまい。かくして大魏の威厳は、未来の災厄を抑え込むに至るのです。
以上を踏まえ、申し上げます。
いま、長皇子の
拓跋嗣はその発言を受け入れた。
太宗恒有微疾,怪異屢見,乃使中貴人密問於浩曰:「春秋:星孛北斗,七國之君皆將有咎。今茲日蝕於胃昂,盡光趙代之分野,朕疾彌年,療治無損,恐一旦奄忽,諸子並少,將如之何?其為我設圖後之計。」浩曰:「陛下春秋富盛,聖業方融,德以除災,幸就平愈。且天道懸遠,或消或應。昔宋景見災修德,熒惑退舍。願陛下遣諸憂虞,恬神保和,納御嘉福,無以闇昧之說,致損聖思。必不得已,請陳瞽言。自聖化龍興,不崇儲貳,是以永興之始,社禝幾危。今宜早建東宮,選公卿忠賢陛下素所委仗者使為師傅,左右信臣簡在聖心者以充賓友,入總萬機,出統戎政,監國撫軍,六柄在手。若此,則陛下可以優遊無為,頤神養壽,進御醫藥。萬歲之後,國有成主,民有所歸,則姦宄息望,旁無覬覦。此乃萬世之令典,塞禍之大備也。今長皇子燾,年漸一周,明叡溫和,眾情所繫,時登儲副,則天下幸甚。立子以長,禮之大經。若須並待成人而擇,倒錯天倫,則生履霜堅冰之禍。自古以來,載籍所記,興衰存亡,尠不由此。」太宗納之。
(魏書35-9)
『春秋左氏伝』文公十四年
秋。七月。……有星孛入于北斗。周內史叔服曰。不出七年。宋齊晉之君。皆將死亂。
『史記』巻八 宋微子世家
三十七年,楚惠王滅陳。熒惑守心。心,宋之分野也。景公憂之。司星子韋曰:「可移於相。」景公曰:「相,吾之股肱。」曰:「可移於民。」景公曰:「君者待民。」曰:「可移於歲。」景公曰:「歲饑民困,吾誰為君!」子韋曰:「天高聽卑。君有君人之言三, 熒惑宜有動。」於是候之,果徙三度。
なんでこんな記述一瞬で引っ張り出せんだこいつらとビビるしかない。いやまぁどうせ全文覚えてる上に、天文に関する記述を把握する優先度としてあげてたってことではあるんだろうけど。
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