助っ人のユート~優しさ極振りなただの人間が異世界に行ったら~
ゆる弥
第1話 優しい少年が降り立った世界
そこは現代の日本。
塾を終えて疲れ果てた様子で街の中を歩く少年が一人。
今日も夜までの塾になっちゃった。
なんで宿題が減らないんだろうか。
松田さんが終わらなさそうだから手伝ったんだけど、なんでか僕の方が時間かかっちゃったんだよね。
フラフラと歩いていると誰かと肩がぶつかった。
「あっ、すみません!」
突如として浮遊感に襲われる。
頭をあげると目の前は真っ暗だった。
ここはどこだ?
キョロキョロと辺りを見渡すと急にお尻に衝撃が走った。
「いっっっ!」
お尻を抑えて悶える。
暫くして痛みが引くと周りが見え始めた。
周りは暗く。
目の前には草原が広がっている。
と思う。
あれ? ここ何処だろう?
遠くに街の明かりが見える。
それが頼りだ。
街灯がないから暗すぎる。
とりあえず街に向かって歩いていく。
それしかできなかった。
ひたすら歩くと街の前に人がたっているのが見えた。
こんな時間に立っている人なんているんだな。
もしかして見張り?
見張りなんて現代では、まずしない。
ということは江戸時代とかに戻ってしまった?
流行りのタイムリープか?
それなら、何かをきっかけに戻れるかもしれない。
「止まれ! なんだ貴様! 変な格好しおって!」
制服を知らない。
やっぱりタイムリープ?
「すみません。怪しいものではありません。ここは日本ですか?」
タイムリープならこれで、話が通じるはずだけど。いや、前はニッポンコクと言わないとダメかな?
「ここはゲサヨ街だ。ニホンとはなんだ?」
「えぇっと、国の名前なんですけど……」
「あぁ? なぁにを訳の分からねぇことを。この国はロベルタ王国だぞ?」
そんな国は聞いたことないよ。
タイムリープじゃない。
だとすると……異世界?
今流行りの。
知らない世界に行っちゃうやつ?
「なんだか知らねぇけどよぉ。ギルドカードとかねぇの? 冒険者ギルドとか商業ギルドとかの、身分を証明できるやつ」
「すみません……無いです」
「金は?」
「……無いです」
「うーん。困ったなぁ。身分証無いやつは銀貨一枚なんだが。…………仕方ねぇ、今回だけ通してやる。悪さするなよ? どっかのギルドでカード作れ。そしたら後は困らねぇ」
「はい。有難う御座います」
礼をして門を潜る。
中に入ると明るい街並みが広がっていた。
科学が進んでいる訳では無いんだろうけど、何かが進んでいるんだろうなぁ。
近くの街灯をよく見てみると光を放っている所に何か模様が描かれている。
「おい! そこの変な格好したあんた! 目がやられちまうよ!? なにやってんのさ!?」
「あぁ。この光がどうなっているのか気になりまして……」
「あんた、魔光を知らないような田舎から来たのかい?」
「えっとぉ……そうなんですよ。これ、魔光っていうんですか?」
「そうさね。魔石を使って光の魔法陣で光を出しているのさ」
「はぁぁ。勉強になりました。有難う御座います」
腰を曲げて礼をする。
すると、怪訝な顔で見てきた。
「あんたそんなにヘコヘコして大丈夫かい?」
「あっ、はい。そういう性格で。お礼をしたいんですが、何か手伝えることはありませんか?」
おばちゃんは少しだけ考えると。
荷物を差し出してきた。
「張り切って買い物したもんだから重くてね」
「はい! お持ちします!」
荷物を持って後をついていく。
「あんた、名前は?」
「
「あんた、ユート家っていう貴族だったのかい?」
「あっ、幸田が家名になります。優人が名です」
「コーダ家ねぇ。聞いたことないけど。だからその仕立ての良さそうな服を着ているんだねぇ」
この制服の仕立てがいい?
もしかして。
「これ、売れますかね?」
「服屋に売ったら金貨ものじゃないかい?」
「はぁ。金貨って……?」
「ホントに何も知らないんだねぇ? だいたいパンが鉄貨一枚くらいだよ。それが十枚で銅貨と交換、更に銅貨十枚で銀貨一枚と交換、銀貨十枚で金貨一枚さ。金貨一枚あれば、ひと月は食っていけるさね」
パンが百円で単位が上がるほどに硬貨が変わるんだ。で、金貨一枚は十万位ってことか。
なるほど。
おばちゃんが止まった。
「ここが服屋だよ。金が必要なんじゃないかと思ってね?」
「有難う御座います。ちょっと待ってて貰えますか?」
「いいよ」
服屋に入ると物珍しそうな目で見られ、売りたいというと感謝された。
売れた金額はなんと金貨二枚。
一枚は銀貨十枚に細かくしてもらった。
なんとか生きていけそうだ。
そのまま服屋でこの世界の一般的な服を買い、外に出た。
「おばちゃんお待たせしました」
「あらあら、一気に平民になっちまったね」
「いいんです。行きましょう」
そのままおばちゃんの家まで荷物を持って行った。
「有難うね。ユート」
「はい! また何かあったら言ってください!」
そう声をかけて立ち去った。
向かったのは門番の居た所。
「先程は有難う御座いました!」
「おっ? なんか普通になったな?」
「はい! 服を売ってお金にしました。これ、お支払いします」
銀貨一枚を差し出す。
首を傾げる門番。
「なんの金だ?」
「さっき見逃してもらった分の銀貨です。もしも、あなたが責められたら嫌ですから」
「普通は金出さねぇよ? せっかく見逃したのに」
「僕が嫌なんです」
少しジィっと僕の目を見ると銀貨を受け取った。
「真面目で優しいんだな。助かるぜ。俺も嘘をつかなくて済む。有難うよ」
宿で休み、その日はよく寝た。
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