乞食

吉江 和樹

乞食

  僕は道に迷ってしまった。

  右へ進めばよいのか、それとも左へ進め     

  ばよいのか。


  助けを求めても誰も答えを教えては   

  くれない。


  当然だった、右へ進めば乞食にならざる  

  を得ず、左に進めば白痴にならざるを  

  得ない。


  そして立ち止まれば死なざるを     

  得ないのだ。


  自分のすべての過去が重くのしかかって  

  くるようだった。

  まるでもう一人の自分の様に。


  それは自分自身が自分自身を破滅に追い 

  込もうとしているようだった。


  今までの自分自身に対するこれからの  

  自分自身の懺悔だと言わんばかりに。

  それにしても、それはあまりに切ない 

  選択だった、


  乞食になるべきなのか、白痴になる 

  べきなのか、


  それとも立ち止まり死ねべきなのか。  

  誰も答えを知らない。

  しかし僕には立ち止まる勇気は

  なかった。


  つまり死ぬ勇気はなかった。


  乞食でもよかった、          

  白痴でもよかった、

  生きていたかった。

  すべてのプライドを捨てて

  這いつくばって、


  地べたを舐める様にでも生きて

  いたかった。


  だから僕は乞食を選んだ。乞食を選んで 

  生きて歩いた。

  街中を一人で、何時も孤独で、

  することもなくただ、

  さ迷い歩いた・・・。

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乞食 吉江 和樹 @YosieKazuki

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