4-6 20才の夜

「……もしもし。あ、テツローか」


 山田写真館のテツローから電話があったは、同窓会から、一週間程たった日の夜のことだった。

 電話の内容は、山田テツローの実家である『山田写真館』で、写真関係のアルバイトをしないか、というものだった。


「主にオペレーターだけど、撮影することもあるんだ」

「撮影なんてできるかな。独学でしているから自信はあまりないよ」

 僕は嬉しさ反面、未経験の仕事に対する不安も感じた。それでも、やはり魅力的な仕事だったのだ。

「大丈夫だよ。ちゃんと教えるから。それと撮影したネガのプリント・オペレーターもお願いしたいんだ」

「僕に、できるかな」

 不安と期待が入り混じった電話だった。



 結局、僕は「山田写真館」のバイトを引き受けることにした。



 経験とは不思議なものである。未経験への期待がそのまま不安になる。見通せない未来に、あてどない期待を寄せてしまう。僕は今、その海原の中にあり、小舟のように波に身を任せるしかなかった。それは二十の夜のことだった。



第4章 成人式の集合写真 (結)

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