4-3 成人式へ
「香子姉さん、今日午後から山河市文化ホールまで、乗せてもらえないかな」
朝食の席で、僕は姉にそうお願いした。香子姉さんは、今日お盆休みだった。いつもなら、急いで朝食を食べている時間だが、今日はのんびりしていた。
「いいよ。式は何時から?」
「午後二時からで、一時半まで集合なんだ。一時位に出発したらどうかな」
山河市文化ホールまでは、車で十五分。今日の成人式のために、スーツを買った。上下揃いで五万円支払った。就活にも使えるように、色は濃紺にした。ネクタイは、香子姉さんからプレゼントしてもらった。水色で柄の素敵なネクタイだった。成人式の祝いの品。母さんは靴を買ってくれた。父さんは手下げ鞄をくれた。
「中学校の卒業式以来の連中もいるな」
「久しぶりに会って、驚く人もいるかもね」
香子姉さんとそんな会話をしながら、僕は朝食を食べていた。ベーコンエッグを口に運ぶ。
「成人式を済ませたら、僕は大人の仲間入りかな?」
「年が満ちたらと思うかも知れないケド、周りの人に『大人だよ』って認めてもらう必要があるんじゃない?」
「僕は、『早く大人になりたい』って思っていた時期もあるけど、今だって『子どものままでいたい』と思う時だってあるんだ。不思議だね」
そう言うと、キッチンのコンロでベーコンを炒めていた母が、話に加わってきた。
「『一人前と認めてもらたい』と思ったら、もう大人よ。意識の問題ね」
僕は深く頷いた。
人生最後の子ども時代は、こうして過ぎていったのだった。
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