第184話 最終試練開始
完全に皇帝におすそ分けを持っていくことを忘れて興味津々にジェイドの冒険譚を聞いて自宅へと戻り貴族の務めを果たしてから数時間後、俺たちは自宅の庭に集まっていた。
「レオ様、お気をつけて」
「しっかりやって来なさい」
これから妻以外の別の女の為に命を賭けようとしているクソみたいな旦那を心配そうな目で見送るよめーず。その心境は如何程か。
「レオ殿、ご武運を」
「健闘を祈るッス!」
なんだかいたたまれない気持ちになってきた……
「レオ様、がんば」
「旦那様の無事の帰還をお待ちしております」
みんな不安そうな表情はしているが不満は無さそうな顔で成功を祈ってくれている。
罪悪感が……
「みんな、ありがとう。戻ったらそうだな……みんなのお願いを1つずつ聞くことにするよ」
「レオ様、そんな」
罪滅ぼしになるかは分からないけど、少しでも自分の罪悪感を薄めるために口にする。完全な自己満足だ。
「レオ、そういうのは不吉だからやめておいた方がいいわよ?」
「リンはなんでそういうこと言うかな?」
やばいな、これから最終試練だというのに緊張感が……
コホンと1つ咳払いをしてから俺は口を開く。
「結婚までしておいて、別の女の為に命を賭けようとしているクソ野郎なのは自覚してる。だけど俺はみんなだけじゃなくてケイトも欲しいんだ」
ヤバいな、口に出すとただのクズ発言じゃねぇか。
「レオ様、あたしはまだ結婚してない」
「イリアーナ、今はダメよ」
イリアーナが自分はまだ結婚していないと主張するが、それはリンに止められた。
「多分レオはこれから何かかっこいいこと言うから、黙って聞いていましょうね?」
「うん、分かった」
「おいこらやめろ」
なんだろう、これ以上話すと恥しかない気がしてきた。
よめーずもクスクス笑っている。
「あー……まぁ何があろうと戻ってくるから」
「あら? それでいいの?」
「もういいよ……」
締まらないなぁ……
『よろしいですか?』
「ああ、じゃあ試練を受ける場所まで連れて行ってくれ」
もうグダグダなので一刻も早く試練に臨みたい。
『連れていくも何も……リン様と共に私の観音扉を開いて頂ければそこが会場です』
「なにそれ? 移動しないの?」
しかもリンと一緒に?
『はい。7つの力を従えて異界の扉を開くことが条件です。ですので6つの力を持つマスターと残りの1つの力を持つリン様が一緒に異界の扉を開くことで試練に挑めます』
異界の扉って何よ。
「まぁ……分かったよ。リン」
「はいはい。こっち側を開ければいいのね?」
2人でウルトの観音扉の前に立つ。
やべ、ドキドキしてきた……
「レオ、今更緊張してきたの?」
「流石にね……」
「ならまた演説する?」
「さぁ行こうか!」
俺が扉を開くのに合わせてリンを観音扉を開く。
中には見慣れたウルトの荷台ではなく、白い通路が伸びていた。
『マスター、リン様、扉が閉じないようにしておいて下さい』
観音扉をしっかり開いて閉じないようフックで固定する。
「んじゃ行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
改めて自分の装備、明けの明星と聖剣をしっかりと確認してからステップに足をかけ白い通路へと足を踏み入れる。
さて、どんな試練が待っているのやら……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます