第181話 迷宮の天敵
5階層からは4階層までに出現したレッサーエレメンタルより一回りほど大きいエレメンタルが出現するようになり、落とす属性魔石も一回り大きくなっていた。
「このサイズの属性魔石ですと、1つ大銀貨1枚が相場ですね」
「高くない? 魔石って安いイメージだったけど」
オークやハイオークの魔石が確か大石貨1枚とかだったような……
「属性魔石と言うだけで価値は大きく上がりますので。それにレッサーではないエレメンタルの魔石なんて、年に数個程しか市場に出回りませんし」
「そんなに少ないの?」
ソフィアはパラパラとページを捲りながら頷く。
「レッサーエレメンタルであれば冒険者ランクでいうとシルバー相当らしいのですが、通常のエレメンタルだと一気にプラチナランク相当となるそうです」
「へぇ、そんなに強いの?」
さっき見たアースエレメンタルという茶色い人型の影はそこまで強いように見えなかったけどな。
「強敵と言うより難敵ですね。エレメンタル系の魔物には物理攻撃が一切通用しません。有効な攻撃は弱点属性の魔法攻撃ですが、普通の魔法使いは適性を1つか2つしか持っていないので」
それ以外のエレメンタルに有効打を与えるのは難しいのか。
「あとは【魔力撃】ですが、エレメンタルの魔法攻撃を回避しながら接近するのは難しいですね。レオ殿ならば容易いことでしょうが」
まぁ……うん。
でもソフィアにも簡単な事だと思うけどね。
「【魔力撃】が有効なら【飛翔閃】とかも有効なんじゃないの?」
「あまり離れた位置からだと、エレメンタルの魔法で撃ち落とされますね」
なるほど、弱点属性での魔法攻撃ならエレメンタルの魔法も打ち消せるけど純粋な無属性魔力を放つ【飛翔閃】は弱点属性とか関係無いから撃ち落とせてしまうのか……
「確かにめんどくさい魔物だね」
「なのでエレメンタル系の魔物の落とす属性魔石は高価なのです」
理解した。
これってもしかして俺たちが攻略した後はエレメンタルが簡単に狩れるようになるんじゃ……
もしそうなったら属性魔石の価値も下がるのかな?
そんなどうでもいいことを考えたり、よめーずとお茶を飲みながら談笑しているうちに気付けば9階層、この階層の魔物は気配は感じるのだが姿が見えない。
「透明?」
『いえ、闇に溶け込んでいるという感じです』
ウルトによると出現する魔物はダークエレメンタル。
真っ黒で俊敏、その上ヘッドライトに照らされるのが嫌なのか照らされるとすぐに物陰に隠れてしまうらしい。
試しにヘッドライトをオフにして走ってみる。
例え何も見えなくてもウルトには【万能感知】があるので何も問題は無い。
『撃破しました』
テーブルの上に現れる拳大の真っ黒な魔石。これがダークエレメンタルの魔石らしい。
「黒くて硬くて大きい」
イリアーナが興味を示して魔石を指先でコツコツ叩いている。
「これは……この本にも乗っていませんね」
この迷宮に入ってずっと読んでいた本のページを捲り魔石の記載を探していたソフィアは本を閉じてそう言った。
そのまま数匹ダークエレメンタルを討伐して魔石を確保、ボス部屋へと進む。
この迷宮は1〜4階層がレッサーエレメンタル、5〜8階層が通常のエレメンタル。
そして9階層にダークエレメンタルという配置らしい。
9階層のボスはダークエレメンタルに加えて各属性のエレメンタルが多数、部屋を埋め尽くすほどに存在している。
「不気味ですね」
「そうだね、かなりアレな光景だ」
エレメンタルは発光する人型の魔物、1匹ならなんとも思わないがそれが大量に集まると大変に不気味だし
寄り添ってきたサーシャをそっと抱き寄せる。
「旦那様、わたくしも……」
「レオ様、あいつら気持ち悪い」
右腕でサーシャを抱いていたので左腕にベラが、後ろからイリアーナが腰に抱き着いてきた。
「おや? 前が空いてるッスね」
座って茶菓子をバクバク食べていたアンナも立ち上がり俺の胸目掛けて体当たりを仕掛けてくる。
あれは抱き着いてきたのでは無い、体当たりだ。
「全く……アンナまで……」
「緊張感が無いわねぇ……」
こちらに寄ってきていないソフィアとリンがしみじみと呟く。
まぁ緊張感と言われても、戦うのはウルトだし、【魔力霧散】を持っているのでエレメンタルからすれば天敵もいい所だ。
どんな攻撃も全て無効化してしまう。
さらにエレメンタル自体魔力の塊のような魔物なので近寄られたら【魔力霧散】の効果でエレメンタルも霧散してしまう。
正直戦いとは言えない。移動するだけで勝手に消えていっているのだ。
なのでこのボス戦もウルトは部屋の隅々まで残さず移動するだけ。
ただそれだけで全てのエレメンタルは霧散してしまった。
大量の属性魔石を【無限積載】で一気に回収、なんの苦もなく迷宮の最奥へと足を踏み入れる。
いや、昨日もなんの苦労もしてないな……
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