第154話 御前会議(上)
「ではクリード侯爵、お願いします」
「はい。まずは自己紹介から……レオ・クリードと申します。此度の魔王討伐の戦果を挙げたことで侯爵位に叙されることと相成りました。礼儀作法には少々疎い粗忽物ですがどうぞよろしくお願いします」
サーシャに教えてもらった貴族の礼をして締めくくると、パラパラと拍手の音が聞こえてきたので頭をあげる。
「ではお話を……」
まずは勇者どもの裏切りによりサーシャが攫われたところから。
国王が魔族に脅されていた件は上手くぼかして迷宮で力を得てから魔王領へと向かった話をした。
「侯爵、迷宮を攻略すると力を得るというが、どのような力なのだね?」
「そうですね……」
国王から迷宮で得た力のことを聞かれたがなんと答えようか……
ここの迷宮で得た力は色欲、まさかエロい事をしたらスキルゲットとは言えない。
よめーずが居なければまぁ言ってもいいのだが流石に当事者であるリンたちの前で言うのは憚られる。
「簡単に言うととある条件を満たせば他者のスキルをコピー出来る能力ですかね」
なんとか誤魔化す。
詳しく知りたいなら後で教えるから今はスルーして欲しい。
「なるほど、それは強力な能力だな……ほかの迷宮では違う能力が得られるのかね? それと迷宮を攻略すれば誰でもその力を得ることが出来るのかね?」
質問を重ねられるが条件の話では無いので少し安心した。
「私が攻略したら迷宮は4つ、それぞれ違う能力を得ています。攻略出来れば能力は誰でも得ることは出来ると思います」
事実俺以外でもケイトとリンが得ているからね。
「ふむ……ちなみに他の迷宮の能力を教えてもらうことは?」
「構いません。1番初めに手に入れたのはエルヴニエス王国北部のリバーク迷宮です。そこでは強欲の剣……斬った相手のスキルを奪う剣を手に入れました」
「なんと……」
国王はじめ、多くの貴族が目を見開く。
今回は条件もぼかさずに伝えたし分かりやすかったしな……他の迷宮の話でもいちいち固まりそうだな、慣れて欲しい。
「その剣を見せてもらうことは可能かな? もしよかったら……」
国王は思い直したのかなんでもないと言葉を切った。
まぁ国に納めろと言われても不可能なんですけども。
「この剣に認められないと力を発揮しないようです。どうぞ」
強欲の剣を【無限積載】から取り出して国王の前に置く。
「認められるとは?」
「はい。この剣には意思のようなものがありそれに認められないと力を発揮しないそうです。剣として使えても能力強奪の力は発動しないものかと」
握って振ることは可能だからね。
試し斬りはしなかったから認められていない者が使った場合斬れるかどうかも怪しい。
「美しいな」
「そうですね。それに斬れ味、強度共にオリハルコンの剣を上回るそうです」
その言葉で再び会議室内にざわめきが起こった。
「それはなんとも凄まじいな」
「ええ。強欲の剣は神器級の武器です。実際私は魔王をこの剣で斬りました」
「魔王を倒せる武器が手に入る可能性もあるのか」
「そうですね……リバーク迷宮の最奥の大悪魔、マンモンに認められれば可能性はあるかと」
たどり着けるかどうかは別だけど。
けど確かルシフェルが最奥の大悪魔を倒せば元に戻るとかなんとか言ってたな?
ならマンモン復活した後なら高レベルパーティなら攻略出来るようになるのかな?
「分かった。続けてくれ」
それからグリエル迷宮、教国の迷宮、魔王領で発見した迷宮を攻略した話をした。
ルシフェルの話をすると会議室内に居た全員が興味深そうに耳を傾けているのが話しながらに分かった。
実際に神を知る存在がそこに居る、宗教色の強いアルマン教国の人間なら興味を惹かれるのも当然だろう。
ただあそこまでたどり着ける人間は……教国には居ないだろうな。
というかこの大陸中を見渡しても俺たち以外には存在しないかもしれない。
そこからはリンの話。
魔王領西端の迷宮には俺は行っていない。
なので実際に攻略したリンに話してもらうことにした。
どうやら魔王領西端の迷宮に出現した魔物はエレメンタル系の魔物だったらしく弱点属性がハッキリしていたので戦いやすかったとのこと。
流石に下層の魔物やボスには苦戦したそうだがお陰で魔法の技術を磨けたらしい。
最下層の大悪魔に関してはウルトで瞬殺、そこで魔力無限回復とも言える能力を得たと。
「話を聞いていた限りクリード侯爵の神器をリン殿が使っていたように聞こえたのだが?」
「はい。旦那様の神器には明確な意思がありますので旦那様があたしの指示に従うようにと命令していましたので」
旦那様……リンにそう言われるとなんか背筋が……
「確かお前たちの結婚式でも目立っておったな……しかし意思ある神器か……聞いたことが無いな、誰か聞いたことがある者はおるか?」
国王の問い掛けに誰も答えない。
誰も知らないのか……と思ったところで教皇が手を挙げ発言を求めた。
「教会には歴代の勇者たちの神器の情報がほぼ全て残っております。その中に意思ある神器と言うのは存在しませんな」
教皇の発言を聞いて俺も驚いた。
俺の神器、ウルトに意思があるのはガブリエルが宿っているからだろう。
導きの天使とも言うし歴代勇者の誰かの神器に宿っていたのだろうと思っていたんだけど、そうじゃないのか……
「うーむ、つまり前代未聞ということか」
「そういうことですな」
国王の呟きに教皇は肯定の意を示す。
「私の神器には導きの天使ガブリエルが宿っているそうです。なので神器自体が意思を持っているというよりガブリエルの意思ですね」
国王と教皇2人の視線が俺に向いたので知っていることを話した。
これ以上のことは知らない。
「ガブリエル……神の声を届ける天使では無いのか?」
「本人? 本天使? は導きの天使と名乗っていましたね」
あれ? ガブリエルじゃなくてそれ言ったのルシフェルだっけ?
……ルシフェルだった気がしてきた。まぁいいか。
「しかし神の声を届ける天使というのも間違ってはいないかと」
思い出すのは結婚式でのウルトだ。
明確に『神の言葉を伝えます』と言っていたからな。
「ふむ、興味はあるが……まずは話を続けてもらおうか」
「そうですね。その後は魔王城に踏み込んで3人の聖女を救出、それから裏切り者たちと戦闘し撃破、残っていた四天将を名乗る竜人も倒して魔王の待つ玉座の間へと踏み込みました」
魔王城内に入ってからのことは軽く流す。
勇者との戦闘は……ちょっとやり過ぎたような気もしなくは無いからあまり話すことでもないし。
四天将のこともべつにいいだろう。大事なのは魔王であって配下じゃないし。
「そして魔王との戦いですが……」
会議室内に居るほぼ全ての人が固唾を飲んで俺を見ている。
「3人の聖女による【聖浄化結界】を展開した結果魔王は立つことも出来ない程に弱体化しまして……あっさりと終わりました」
そう纏めると貴族たちはぽかんとしたように口を半開きに開けた。
誰もが激戦を予想していたのだろう。
実際の英雄譚のようなものを本人から聞けると楽しみにしていた人も居たのかもしれない。
だが、現実はこんなものである。
初手から立っていることも出来ないように弱体化させてあっさり終わらせたとか拍子抜けもいいところだよね。わかる。
「えっと……以上ですね」
全ての報告を終えて席に座ると会議室内はなんとも言えない雰囲気に包まれた。
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