第142話 協力

「という訳で協力して欲しい」


 王国と帝国の聖女に【聖浄化結界】の展開をお願いして頭を下げる。

 あっさりと了承して貰えたのでついでとばかりに【聖女の祈り】の使用を禁止するようお願いしたら戸惑いながらも了承してくれた。


 どうやらヒソヒソしていたのはどちらが【聖浄化結界】を使いどちらが【聖女の祈り】を使うかの相談をしていたらしい。


 面白いのはどちらも自分が【聖女の祈り】を使うと主張していた点だろう。

 サーシャの言っていた通り聖女は【聖女の祈り】を使ってナンボということだろう。


 3人の合意が得られたので先に進もう。


 あと残っていて強敵になりうるのは四天将の最後の一人くらいだろう。

 道中の敵はウルトに任せて先を目指すことを優先する。


「魔王の位置も特定出来てるのか?」

『もちろんです。この城の最上階に一際大きな反応があります。その途中にそこそこ大きい反応が1つ、おそらく四天将の生き残りかと』

「そうか……」


 ここは通さぬ! みたいな感じで出てくるのかな。


「ウルト、外の音声を拾うようにしておいて。最後の四天将がどんな口上を述べるのか少し気になる」

『かしこまりました、お耳汚しになりかねませんので直前までは聞こえないようにしておきます』


 ホント気の利くトラックだよ。


 勇者たちの相手をした広間を抜けさらに奥へと侵攻していく。

 道中たくさんの魔物や魔族が行く手を阻もうと襲いかかってくるがウルトはそれらを歯牙にもかけず全てを粉砕して進む。


「す、すごい……」

「なにこれ……」


 ウルト初乗車の聖女2人はあまりの光景に驚いている。

 無理もない……普通の人間には絶対勝てなさそうな魔物や強大な力を感じさせるような魔族が目を剥いて襲いかかってくる光景だけでも恐怖でどうにかなりそうなのにそれらをなんの問題も感じさせずにはじき返すウルトを見て驚かない方がおかしいのだから。


「そういえば【聖浄化結界】の効果ってレベル関係あるの?」

「詳しくは分かりませんがおそらくあるかと……レベルが上がるにつれて聖女の力が増しているような気がするので」


 無関係では無さそうか……


「サーシャはレベルいくつだっけ? あとそっちの2人もレベル教えてくれる?」

「私は53ですね。以前グリエルでの事が終わってから確認してそれから上がっていませんね」


 サーシャはレベル53か、2人はどうだろう?


「あたしはレベル42です」

「私は……すみません、レベル27です……」


 王国の聖女、名前は確か……忘れたな、まぁいいか、王国の聖女はレベル42、帝国の聖女はレベル27か……低いな。


 王国の聖女はそこそこだし気にしなくてもいいか、サーシャが頼りだな。


「分かった。まぁ大丈夫だとは思うからよろしく」

「「「はい!」」」


 とてもいい声で元気よく揃えて返事してくれるのはなんか微笑ましいんだけどその背後でスプラッターな光景が繰り広げられているので台無しである。


「ねぇウルト、後ろの扉開けてもらえるかしら?」

『リン様どうされましたか?』

「後ろからも来てるからちょっと吹き飛ばそうかと思って」


 邪魔になるでしょ? と杖をクルクルと手で弄びながら軽く言う。


『かしこまりました……どうぞ』


 観音扉が開いて射線が通る。


 リンは炎、雷、氷の3つの属性の極大魔法を発動、後ろから迫ってきていた魔物たちを一掃する。


「すごい威力ですね……リンさん魔力は大丈夫なのですか?」

「言ってなかったかしら? あたしも暴食の力を手に入れたから魔力切れとは無縁になったのよ」


 袖を捲って腕輪を見せる。

 そこには黒光りする宝玉が1つ付いていた。


「クリード様の腕輪の宝玉とは色違いですね」

「クリードの腕輪には憤怒と色欲、傲慢の3つの宝玉が付いてるから数は違うのよ?」

「3つも!? 前に見た時は1つでしたが……」


 色欲と傲慢はサーシャが攫われたあとだから見たことないのも当然だな。


「サーシャが攫われたあと力を求めてね……確実に助けるためにも力が必要だと思ったんだ」


 鎧と作業服を【無限積載】に積み込んでシャツの袖を捲ってサーシャに見せる。


 憤怒の赤、色欲の紫、傲慢の金色、3つの宝玉が嵌った腕輪を見てサーシャは感心しているようだ。


「傲慢……色欲?」

「何の話でしょうか……」


 またも聖女2人がヒソヒソし始めた。


「迷宮を攻略したら手に入る力だよ。これらの力があったからサーシャを、キミたちを助けることが出来たんだよ」


 一応共に魔王と戦う仲間でもあるわけだから軽く説明しておく。


「迷宮を……」

「攻略?」


 迷宮攻略出来たことに驚いているようだがそこまでは説明しなくてもいいだろう。

 面倒だし納得させる必要も感じない。


 それからも魔物を撥ね飛ばし、魔族を轢き殺し、扉をぶち破り進んでいく。


 横道や後ろから追いかけてくる魔族や魔物はリンの魔法で焼き付くし吹き飛ばし貫いて撃破、挟撃を受けないよう対処しておく。

 されたところで問題は無いだろうけど実際されたら面倒そうだし非常に有難い。


 いくつかの階段を駆け上がりいくつ目かの扉をぶち破る直前に停止。突然外部の音声が聞こえるようになった。

 この扉の向こうに四天将の最後の1体が居るのだろう。


『マスター、この扉の向こうです』

「よし、突入」

『かしこまりました』


 凄まじい音を立てながらウルトは扉を破壊、中に踏み込んだ。

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