第136話 監視
夜が開けるまで監視を続け日が昇ってしばらく、小腹が空いたので一旦拠点に戻り適当に腹に詰め込む。
最後に冷えた水で流し込み一息着く。
「ふぅ……」
背もたれに丁度いい岩にもたれ掛かり岩の隙間から見える空を見上げた。
「天気……悪いな」
今にも雨が降り出しそうだ。
この岩場では雨露は凌げそうにない。困ったな……
「あ、そうか」
ふと思いついて体を起こして背もたれにしていた岩に手を触れる。
しっかりとイメージを込めた魔力を流し込み岩に浸透させていく。
ゴゴゴと鈍い音を立てて上の方の岩が動き天井に空いた穴が塞がっていく。
土属性攻撃魔法は使ったことは無かったけど火と風の合成魔法並に魔力を消費した。
「結構魔力使うなこれ……でもこれで雨が降っても大丈夫かな」
見上げて出来栄えを確認して満足する。
一応目立たないよう隠れてるつもりなんだからテント張るわけにもいかないからね。
食事と雨対策を終えて再び丘の上から魔王城を見下ろす。
「あそこに魔王とアイツら……勇者たちが居る……」
監視を再開してから何度目の呟きだろうか。
今すぐに突撃したい、乗り込んでその体にこの剣を突き立てたいという気持ちを何とか抑え込む。
昨夜アノニマスと戦ってから気持ちが昂っている。今すぐにでもコロシテヤリタイ……
「ダメだ、落ち着け……まだ早い」
言葉に出すことで自分を戒める。
スマホを取り出して時間を確認、左耳に付けているイヤホンに触れてウルトに通信を送る。
「ウルト、現状は? どこまで行ってる?」
『現在8階層のボスと戦闘中です。まだ最奥の悪魔までは辿り着いておりません』
「そうか、リンの様子は?」
『今は後衛の位置でボスに魔法攻撃を仕掛けています。新しい力に慣れるためボス戦での攻撃はリン様が全て行っています』
後衛の位置? ということはウルトを前衛にして戦ってるのか。
「分かった、引き続きよろしく頼む。くれぐれも気を付けてくれ」
『かしこまりました』
イヤホンの電源ボタンを一度押して通話を切る。
「ステータスオープン」
◇◆
名前……レオ・クリイド レベル97
職業……(本業)トラック運転手(副業)剣鬼
年齢……21
生命力……S 魔力……A+ 筋力………S 素早さ……A 耐久力……S 魔攻……B 魔防……A
スキル
(身体能力系)
【身体強化(特)】【タイタン】【疾風迅雷】【要塞】【瞬間加速・停止】【絶倫(強)】【生命力強化(大)】【俊敏】
(魔法系)
【魔法適正(聖属性を除く全て)】【魔力吸収】【トリプルマジック】【魔法威力上昇(極)】【合成魔法】【魔力極大ブースト】
(感覚系)
【気配察知(極)】【直感強化(特)】【知覚強化(大)】【魔力視】【弱点看破(特)】【見切り(特)】
(耐性)
【痛覚鈍化】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】【状態異常耐性(強)】【毒無効】
(特殊)
【トラック召喚】【トラック完全支配】【無限積載】【魔剣召喚】
【剣術(神)】【斧術(特)】【槍術(上)】
【魔力撃(極)】【天駆(上)】【アイテムボックス】【精神攻撃】【状態異常攻撃】【腐食攻撃】【毒攻撃】【闘気剣】【自己再生】【騎士の矜恃】【糸生成】【テイム(極)】【隠密】【衝撃緩和】【挑発】【攻撃反射】【捕食】【水中呼吸】【思考共有】【傲慢なる者の瞳】【闇視】
◇◆
「97か……」
思ったよりあがっている。
昨夜のアノニマスがいい経験値になってくれたのだろう。
今この瞬間に突入したとして勝利することは叶うだろうが一応念には念を……
リンも頑張っているようだし俺が先走る訳にもいかないだろう。
「あ、98に上がった」
リンたちの戦闘が終わったのだろう、開いたままのステータスのレベル表示が97から98にアップした。
あと1レベル……
さっき8階層のボス戦と言っていたし9階層の魔物とボスで上がるかな?
昼も過ぎたので拠点に戻り昼食、腹を満たして栄養を摂取するためだけの食事だ。
思い返せば因縁の日、ケイトを失ってから食事の味を感じることが出来なくなった。
それだけではなく睡眠もまともに取れない。
睡眠に関してはリンが隣に居てくれればなんとか寝れるのだが味覚はなんとも……
美味いと感じられる日は戻ってくるのだろうか?
「どうしてこうなったのだろうか……」
どこで間違えた?
いやそもそもこの世界に召喚された事が全ての始まりか……
召喚された日から今日までの出来事を思い返す。
サーシャが居て、リンが居て……ソフィアとアンナが居て、そしてケイトが居た。
楽しかった。
色んなことを知って、色んなことを教えて……
その全てを壊された。
サーシャは攫われケイトは死んだ。
何度思い返しても腸が煮えくり返る思いだ。
「必ず……殺す。でも簡単には殺さない……」
心に湧き上がる憎悪を押さえ付ける。
今じゃない。まだ早い。
焚き火を消して監視に戻る。
魔王城に動きは無い。
どうせなら残りの四天将も出てきてくれたらストレス解消に丁度いいのだがそんな都合よく出てこないだろう。
「早く……早く」
焦る気持ちは止めようにも止まらない。
1分でも1秒でも早く、アイツらに絶望を与えたい。
ウルトからの連絡が来るまで残り数時間、ひたすら自分を抑えることに注力することになった。
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