第125話 ソイソス防衛戦

「おはようクリードさん」

「おはようディム、体調はどう?」

「問題無い。クリードさんのおかげだ」


 ディムは自分の胸元を叩きながら不敵に笑う。


「それは良かった。それでなんだけど」


 ディムたちの前に装備一式を並べる。


「使ってくれ」

「クリードさんこれは……」


 俺が並べたのはもちろん迷宮で手に入れた武具。全てに魔法が込められている。


「状況が状況だしね、少しでも生き残れる確率を高めておきたい」


 口には出さないがディムたちにまで死なれてしまうと俺は立ち直れないと思う。


「しかし……」

「ありがとうございますクリードさん」


 戸惑うディムに代わりロディが前に出て装備を受け取ってくれた。


「ロディ……」

「ディム、貴方鎧無いでしょう? この装備を受け取らないと戦場に出ることは許しませんよ」

「ぐ……」


 鎧が無い? あぁ、あれだけの大怪我をしたんだから鎧は壊れていても何も不思議じゃないか。


「わかった……有難く受け取らせてもらう」

「初めからそうしてくれ……じゃあ説明するけど……」


 ディムに渡すのは剣と鎧、兜だ。

【身体強化】が自動で発動する剣に【体力持続回復(小)】のの効果が付与された鎧、【知覚強化】が自動発動する兜だ。


 多分これ一式で白金貨くらいにはなると思う。


 クレイには【衝撃緩和】が付与された盾、【耐久力上昇】が付与された鎧、【痛覚鈍化】が付与された兜の防具一式。


 こちらも白金貨くらいにはなるだろう。


 最後にロディには【魔法威力上昇】効果のある杖と【魔力吸収】効果のあるローブ。


 これで魔力回復速度を上げながら威力の上がった魔法を連発出来るだろう。

 お値段的には大金貨2〜3枚くらいかな?


 3人がしっかり身に付けたのを見届けてから出発、まずはギルドマスターカートさんの所へ行かなければならない。


「おはようございます」

「おはようクリードくん、リンさん。ディムたちとは会えたかね?」

「ええ。しっかり話も出来ました」

「それは良かった。では壁に行こうかの」


 俺たちが壁の上に登って様子を伺うと、そこにはウルトと睨み合うように大量の魔物が再び出現していた。


『おはようございますマスター。昨夜から再び魔物が集まり始めました。襲ってこないので様子を見ておりましたが殲滅しますか?』

「おはようウルト。そうだな……強い反応はあるか?」


 幹部を倒す約束をしているからね、他の有象無象と一緒にウルトで撥ね飛ばしてしまったのでは分からなくなってしまう。


『数体の魔族は感知しておりますが特別大きな反応はありません。ですが後方より飛行しながら近付いてくる反応が多数。その中に一際大きな反応がありますね』

「そうか……」


 空飛ぶ魔物か。

 そこにボスクラスの魔族が居る……ならそれが幹部かな?


「そういうことですのでギルドマスター、地上の魔物は殲滅しますね」

「……任せてしまってもいいのかの?」

「構いませんよ。ウルト」

『オーケーマイマスター。殲滅を開始します』


 おそらく昨夜から全く動いていなかったウルトが動き出したことに壁の上の兵士や冒険者がざわつき始める。


 そんな喧騒の中昨日ウルトが魔物どもを蹴散らしていく姿を見た者たちが歓声を上げて見送っている。


 時を同じくして門が開き兵士や冒険者たちが各々配置に着く。

 守備陣形だ。


 魔物の数が多く幅広く展開しているためウルトだけで全てを討ち取ることは出来ずそれなりの数の魔物が壁に近付いてくるが待ち受けていた兵士や冒険者に次々倒されていく。


 壁の上からも矢や魔法が飛び近付いて来る魔物の数を減らす。

 これなら大丈夫かな?


「空からも来るぞ!」

「魔法使いは空の魔物に攻撃を!」


 そんな時ウルトが感知していた飛行する魔物の群れが接近、前もって伝えておいたこともあり慌てずに対応していく。


「さて……俺も出ますかね」

「気を付けなさいよ。落ちて怪我するとかカッコ悪いわよ」


 かっこいい悪いの心配か……

 まぁ俺が負けることは心配してないってことだろうね。


 壁からの魔法攻撃をリンに任せて宙を蹴って空へと舞い上がる。


 先頭を飛んでいる魔物、飛龍の背に乗り首を落として撃墜。


 戦っている兵士や冒険者の上に魔物を落とすわけにも行かないので結構離れた距離まで【天駆(上)】で走ってきたけど割とギリギリだった。

 危うく交戦する前に堕ちるとこだった……


 飛龍の背中、さらに空気を蹴って次の魔物へと飛び移っていく。


「多いな……」


 数匹の飛龍や怪鳥を倒したが次から次へと際限なく魔物は現れる。


 一度飛龍の背に乗って首を落とさず腰を落として空を埋め尽くす勢いの魔物に視線を向ける。


「【天翔閃】!」


 上下左右あらゆる方向に向けて剣閃を放ち一気に数を減らしにかかる。

 飛翔する斬撃に首や胴を斬られ絶命する魔物や羽にダメージを受けて墜落していく魔物を大量生産してまた空を駆ける。


 戦った感じ【天翔閃】ではオーバーキルになることが分かってきたので【飛翔閃】を乱打、魔力消費を抑えつつ上空の魔物を蹴散らしていく。


『マスター、大きな反応が接近中です』

「俺も感じてる。そっちはどうだ? 大丈夫か?」

『問題ありません。接近してくる空の魔物も全てリン様が撃ち落としています』


 さすがはリンだな、安心して任せられる。


「さて……」


 雑魚の掃討はあらかた完了。


 適当な魔物の背に乗りながら俺は一際大きな気配を放つ魔物、ドラゴンへと視線を向けた。

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