第86話 追加依頼

 森の方へ移動しながらウルトの【万能感知】でソフィアを先に拾って勇者たちを迎えに行く。


 ソフィアから勇者たちの戦いぶりを聞くと思ったほどの苦戦はせずに無理せずじわじわとグレートビートルを追い詰め危なげなく討伐したそうだ。


 移動中にウチの仲間をナンパしていた軽い性格とは違い戦闘ではきちんと冷静に連携して戦うことが出来るようでなんだか感心してしまった。


『間もなく勇者たちが森から出てきます』


 言葉通りすぐに勇者たちが森から現れたので一応労いながらウルトに乗せる。


 俺たちが労ったのが心地よかったのかドヤ顔で戦闘の様子を語り始めたので労うんじゃなかったと若干後悔してしまった。


 ちなみにこの戦闘でレベルが40を超えたと自慢していたが俺のレベルは67、どんな反応を返していいのか分からなかったので爽やかな笑顔で凄いねと言ってあげたら満足していたので間違って無かったと思う。


 しかしやっぱりグレート系は経験値多いのな……


 勇者たちの自慢話を聞きながら街へと凱旋、途中現れたフライングビートルは漏れなくウルトで爆散させて少しでも数を減らしておく。


 街に戻りギルドマスタージェイクに報告すると貼り付けたような笑顔で勇者たちを賞賛していた。


「俺たちは疲れたから宿に戻って休むよ。明日には王都に帰還するから」


 勇者たちはそれだけ言い残して執務室を退室、俺たちとジェイクさんだけが残った。


「ふぅ……お疲れ様でした」

「ありがとうございます。戦闘よりも勇者たちの相手に疲れましたよ」


 俺が苦笑いしながら答えるとジェイクさんも引きつった笑いで返してくれた。


「でも勇者たちはもう帰るんですね」

「そのようですね……まだフライングビートルはかなりの数が残っているのですが……」


 ジェイクさんは疲れたようにため息を吐いた。


「俺たちは残って殲滅手伝いますよ。国の兵や冒険者も結構居るんですよね?」

「えぇそうですね、グレートビートル討伐の情報はすぐに広めますので彼らと共に殲滅をお願いします」


 元よりそのつもりだし頼まれなくてもやるよ。

 とはいえかなりの数をウルトが倒してるし残りもそう多くは無いと思うんだよね。


「それと可能であればでいいのですが……」

「なんですか?」


 ジェイクさんはすごく言いづらそうに俺に向けて言葉を発する。


「自由の翼のみなさんはリバークの迷宮を攻略したのですよね? それでリバーク迷宮は魔物は出現すれども弱体化、数も減ったとお伺いしたのですが」


 確かに攻略したしその情報も俺たちが伝えたことだけどその確認はしてないんだよね。


「確かに攻略しましたし、その話も俺たちがリバークのギルドマスターに伝えた話ですね。しかしそうなるとは聞いていますがそうなったかの確認は出来ていませんよ」


 報告してすぐにこっちに来たから攻略してから迷宮には入っていないことを伝えるとジェイクさんは頷いて話を続けた。


「それは構いません。そうなる可能性が高いだけでもお願いしたいのです。可能であればここの迷宮も攻略して貰えませんか? 報酬は……成功報酬として白金貨10枚でいかがでしょうか」


 ジェイクさんが言うには溢れ出てきたフライングビートルの討伐が完了すればグリエルの復興作業が開始される、そのため迷宮探索に向かう人手が減るので再び溢れ出しオーバーフローしてしまう可能性があるそうだ。


 俺たちに攻略して貰いその心配を無くしたいそうだ。

 それに白金貨10枚か……これから復興でお金が掛かるだろうに無理してないのかな?


「どうする?」

「私はいいと思いますよ。勇者様たちも王都に戻ると仰っておりましたし何より民の不安を解消するためです」

「あたしもいいと思うわよ。あわよくば強欲の剣みたいに新しい力が手に入るかもしれないしね」


 サーシャとリンは賛成、ソフィアとアンナ、ケイトも頷いているので問題は無い。


 まぁリバークのように最下層でまた数週間修行となると厳しいけど最悪お断りの上ウルトでドンで終わらせれば良いだろう。


 マンモンには世話になったからウルトでドンは心苦しかったからやらなかったけど会ってすぐなら心苦しいこともなく殺れるはずだ。


 修行さえ無ければ数日で攻略出来るだろうしね。


「分かりました。外に出ているフライングビートルの討伐、個人的な用事で申し訳ないですが人探しをしてからで良ければ」

「そんな、もちろん構いませんから」


 ジェイクさんからの許可も出たので差し当って今日はフライングビートルを倒しながら東のソトルを目指そうと思う。


 ジェイクさんと軽く打ち合わせをして出発、俺たちが積んでいる遺体は100体ほど広場に降ろしてまだ身内の見つかっていない先日並べた遺体を再び回収した。


 数日掛けて近辺の大きな街でこれを繰り返して全ての遺体を確認してもらう算段だ。


【無限積載】なら時間経過も無いので遺体をこれ以上痛めずに確認作業が行えるのでもし遺族の方が見つかっても腐った遺体とご対面なんてことにはならない。

 いい方法だと思う。


 街で行う作業を終え出発、街を出るまで街の人にお礼を言われながらの移動は面映ゆい気持ちになった。


 勇者たちと一緒に歩いた時とは大違いだったな……


「あたしのわがままに付き合ってくれてありがとうね」


 ウルトに乗り込み出発したところでリンが俺たちに向かって深く頭を下げお礼を述べてきた。


「いいよ気にしなくて。どうせカブトムシ倒して回らないといけないんだからついでだよついで」


 リンが気にしないようにできるだけ明るく答えておく。

 リンはそれを聞いて笑顔になったので間違ってなかったと確信できた。


「まずはグリエル周辺のカブトムシを片付けてそれからソトルに行こう」


 まずはやることをきっちりと、行程を確認し合って俺たちはガーシュを出発した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る